【事例1 完全歩合給(出来高給)と残業代】

相談企業の業種・規模

業種:運送業

規模:30名以下

 

相談経緯・依頼前の状況

当社は、運送業務に従事するドライバーに対し、完全歩合給(出来高給)の賃金体系を用いている。

先日当社を退職した従業員(ドライバー)より、残業代の支払いを求める弁護士名義の内容証明郵便が送付されてきた。未払い賃金があるのであれば支払いに応じるつもりだが、元従業員の請求額は、完全歩合給(出来高給)を否定した上で算定されているため、当該請求に応じるつもりはない。

今後の対応をお願いしたい。

 

解決までの流れ

ご相談者様に対しては、元従業員からの通知書、就業規則、賃金規程、労働条件通知書(労働契約書)、賃金台帳、デジタルタコグラフ、その他賃金算定に際して用いる資料一式をご準備いただくようお願いした上で、第1回目の法律相談に臨みました。

第1回目の法律相談において、就業規則、賃金規程及び労働契約書を確認したところ、完全歩合給(出来高給)にて賃金を支給する旨明記されていました。ただ、法的解釈論として、この記載だけで必要十分と言えるのかははっきり断定しきれないところがありました。そこで、今後の方針として、①元従業員に対し、完全歩合給(出来高給)を否定した上で算出された請求には応じられないこと、改めて弁護士において算出した金額であれば支払いに応じることができることを明記した回答書を送付する、②おそらくは労働審判等の法的手続きを取ってくるはずなので、裁判所で完全歩合給(出来高給)の賃金体系が有効であることを確認してもらう、ということをご提示し、ご相談者様のご了解を得ました。

そこで、弁護士において再計算した未払い賃金額を記載した回答書を送付すると共に、ご相談者様が認めている未払い賃金を先に支払う手続きを行いました。

その後、元従業員より何らの反応がなく、数ヶ月経過した時点で、労働審判の申立てが行われた旨の裁判所からの通知がありました。

予想通りの展開となったため、事前に調査していた裁判例などを引用しつつ、ご相談者様が運用する完全歩合給(出来高給)は有効な賃金体系であることを指摘した書面を裁判所に提出した上で、労働審判手続きに臨みました。

双方の主張は対立しましたが、結果的には、ご相談者様の完全歩合給(出来高給)を当然に無効と判断することはできないという裁判官の心証が示されました。この心証を踏まえて協議を進めたところ、元従業員の要求額の10分の1以下の金額を支払うことで和解解決となり、弁護士による作業は完了となりました。

 

解決のポイント

完全歩合給(出来高給)を労働契約に用いることは当然に無効であるといったネット記事等を見かけますが、これは誤りと断言できます。しかし、完全歩合給(出来高給)が有効な賃金制度であると言い切るためには、労働基準法等の法律には書いていない要件を充足する必要があります。

本件事例の場合、この要件を満たすのかやや疑義があったものの、徹底的な調査によりご相談者様にとって都合の良い裁判例を見つけたこと、及び実際の運用方法を可視化した資料を作成し、恣意的な賃金算定を行っていないことを裁判官に提示できたことが、ご相談者様において有利な解決を導くポイントとなりました。また、完全歩合給(出来高給)が有効と判断されたことで、他ドライバーに対する残業代問題が拡散することを防止することができました。

 

解決までに要した時間

約9ヶ月(第1回目の法律相談から、労働審判での和解解決まで)

 

当事務所ならではのサービス

当事務所は、使用者側(会社、企業、事業者サイド)で残業代問題などの労働問題を取り扱うことが多く、本件事例のような完全歩合給(出来高給)以外にも、固定残業代や変形労働時間制など争いが生じやすい類型について、複数の取扱い実績を有しています。

実際の紛争事例を扱うことで得られた知見とノウハウを最大限活用し、ご相談者様にとってよりリスクの少ない解決策のご提案を行っています。残業代問題についてお悩みの経営者の方は、是非当事務所までご相談ください。

 


※上記はあくまでも一例です。案件ごとにより手順や結果が変わることもありますので、この点はご容赦願います。

ご相談メニュー

当事務所で対応させていただける、リーガルサービスメニューの一部をご紹介させていただきます。どんなに些細なご相談でも、お気軽にご相談ください。
  • 利用規約に関する相談メニュー
  • 契約書に関する相談メニュー
  • 債権回収に関する相談メニュー
  • フランチャイズに関する相談メニュー
  • ITに関する相談メニュー
  • 労務に関する相談メニュー
  • リスク管理・危機管理に関する相談メニュー
  • 事業承継・M&Aに関する相談メニュー
  • 顧問契約について

業種別の法務サービスメニュー

当事務所が契約をさせていただいている顧問先の業種は多岐に渡っており、日々様々な業種の法務問題に取り組んでおります。こちらに記載のない業種のご相談についても積極的にお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
  • IT企業(インターネット通販)
  • IT企業(WEB制作、システム・プログラム開発)
  • 医療・介護事業
  • 飲食
  • サービス
  • 製造