ASP、SaaSの導入とSLAについて

ASP、SaaSの導入とSLAについて

質問

 最近、インターネット経由で、顧客管理ソフトや給料計算ソフト、日程管理ソフトを導入することができると聞いたので検討しているのですが、導入に際してはSLAに気をつけた方が良いと聞きました。
 そもそもSLA(=Service Level Agreement)とは何のことでしょうか。
 また、SLAと法律の関係について教えてください。

 

 

回答

1.SLAとは何か?
 最近、ASP(application service provider)やSaaS(Software as a service)と呼ばれるサービス提供方法が普及してきています。ちょっと前までは、電気屋さん等でパッケージのソフトウエアを購入し、自分のパソコンにインストールすることで、ソフトウエアを自らのパソコン上で起動させて利用していました。

ところが、上記ASP・SaaSは、業者が管理しているサーバーへのアクセスし、インターネットを通じて利用するというものであり、いわば業者の管理下にあるソフトウエアを遠隔操作しているだけに過ぎません。

この様な関係から、利用者は業者よりサービスの提供を受けているという関係に立つわけですが、どのようなサービスの提供を受けることができるのか、その際の条件は何かという「約束事」が重大な関心事項となります。
 この約束事をSLAとイメージすればよいと思います。

ちなみに、独立行政法人情報処理推進機構によると、SLAとは、「ITサービスの提供者と委託者の間で、ITサービスの契約を締結する際に、提供するサービスの範囲・内容及び前提となる諸事情を踏まえた上で、サービスの品質に対する要求水準を規定すると共に規定した内容が適正に実現されるための運営ルールを両者の合意として明文化したもの」と定義づけられています。

 

 
2.SLAの具体的内容は?
 では、SLAとして定められる内容には何があるのでしょうか。代表的には次のようなものと考えられます。 

① ユーザーの通信環境やハードウエアのスペック等の前提条件(ユーザー側のPCに問題がある場合、サービスを受けることができないので、この点は十分確認する必要があるでしょう)
 
② サービス提供時間や稼働率(保守管理作業のため、24時間365日用いることは通常不可能です。そのため業務に支障を来すような使用不可条件がないかチェックする必要があります)
 
③ 障害が発生した場合の復旧時間や対応(業者側としてはなかなか確たるものを記載しづらいところではありますが、おおよその目安や目標は記載しておきたいところです)
 
④ サービスに対する応答時間(例えば給料計算ソフトにおいて、給料額を打ち込んでから源泉や社会保険料の控除等の計算結果が出るまでの応答時間を見ることで、当該サービスの性能が分かります)
 
⑤ サポート体制(操作が分からない場合の質問への応答体制やトラブルが生じた場合など、ユーザー側にとっていは大きな関心事項でしょう)
 
⑥ データ管理の有無(ASP・SaaSの場合、データ管理やバックアップは利用者側の負担となっていることが多いと思いますが、汎用的なソフトウエアでバックアップできない場合、どの様にユーザー側でバックアップすればよいのか確認する必要があります)
 
⑦ セキュリティ(セキュリティ対策のためVPNが使用不可となっていたりする等がありますので、セキュリティ対策の内容を見ることももちろんですが、セキュリティ対策を高じた結果、ユーザー側の使用に制限が出ないかチェックすることも必要です)
 

 

3.SLAと法律上の関係
 上記で述べた通り、SLAとは、要はサービス提供の際の「約束事」を定めたものですので、法律上は契約内容の一部となります。 

 従って、SLAとして記載した事項を実施できないのであれば、業者側は契約違反として法律上の責任を負うことになります。
 ただ、業者側としても、例えばインターネットの接続環境等でデータが飛んでしまったという場合など、業者側の事情とは関係のない理由での責任を負わされるのは御免被りたいという場合もあり得るでしょう。 

 そこで、契約内容とするのではなく、「努力目標(典型的な記載の仕方としては『…と努めるものとする』と記載します)」として規定し、責任回避を行ってくる場合があります。この様な努力目標としての規定なると、SLA記載事項に違反する=法律上の責任(債務不履行責任)が発生するという関係が直ちには成立しないのが原則です。 

 しかしながら、不当な責任回避に過ぎないのであれば消費者契約法に基づく無効主張を、誤認を生じさせるようなものであれば錯誤や景品表示法上の優良誤認等の主張が可能な場合もあり得ますので、この点は留意すべきでしょう。
 

 

4.その他
 なお、厳密には、SaaSとASPは「似て非なるもの」とされています。
 もっとも、本件では、インターネットを通じてサービスの提供を受けるという共通点があることから一括りにし、サービス提供を受ける際の約束(合意)事項であるSLAに焦点を当てていますので、上記のような解説になっていることをご了承願います。
 なお、SaaSを提供する業者向けのガイドラインとして、経済産業省が次のようなガイドラインを公表していますので、あわせてご参照ください。 

SaaS向けSLAガイドライン 

 

 

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。