検収完了後にシステム不具合が発覚した場合のベンダの責任、ユーザの対処法について  

【ご相談内容】

外部業者にシステム開発を依頼し、納品が行われ、テスト運用したところ、特に問題が無かったので検収合格通知書を当該業者に発行しました。

ところが、検収合格通知書発行後、システムが時々フリーズし入力ができなくなったり、画面遷移が異常に遅延したりする等の不具合が発生するようになりました。

これらの不具合の原因調査と修正を当該業者に要請しているのですが、当該業者は「検収に合格した以上、責任は無い」として、一切要請に応じてくれません。

何か対処法はないでしょうか。

 

【回答】

本件については、外部業者と締結した契約書の内容を検討する必要があります。

したがって、契約書の内容如何によっては、検討するべき事項が異なってくることになりますが、本記事では、多くの契約書で定められていることが多い、検収完了後に問題となる契約不適合責任について解説を行います。

なお、検収という言葉は法令用語ではないことから、以下の【解説】では、まず検収の意義と効果を整理した上で、契約不適合責任の内容、及び契約不適合の具体例と判断基準に関するポイントをまとめていきます。

本記事を読むことで、システム開発における検収の重要性、検収後の責任追及の在り方についてご理解いただけるかと思います。

なお、本記事では、システム開発契約の法的性質につき、請負契約を前提にしていること予めご承知おきください。

 

【解説】

1.検収とは

(1)意義

「検収」という用語は、システム制作に限らず、モノ作りに関する契約書を取扱ったことがある方であれば1度は耳にしたことがある用語ではないかと思われます。

しかし、検収という法令用語は存在しません。

検収の意義・内容は、当事者間で定めることになります。この点、契約書で見かける検収に関する条項としては次のようなものがあります。

 

【条項例】

第×条(検収)

1 委託者は、受託者による納入物の納入後、当該納入物の検収を行う。

2 委託者は、当該納入物に問題が無い場合、受託者にその旨を通知する。また委託者は、納入物に問題がある場合、受託者に対し具体的な理由を明示の上、修正又は追完を求め、受託者は、協議のうえ定めた期限内に無償で修正して委託者に納入する。

3 前項に定める通知がなされない場合であっても、納入後×日を経過したときは、当該納入物は本条所定の検収に合格したものとみなす。

 

上記条項例では、検収=納入物の受入検査という意味で用いられていますが、契約書によっては、検収=受入検査合格という意味で用いられていることもありますので、注意が必要です。

 

(2)効果

検収によりどのような効果が生じるのかについても、契約書の定め方によります。

ただ、一般的には、次のような効果を定めることが多いように思います。

 

①報酬請求権行使の前提条件をクリアーしたこと

検収完了の効果を「仕事の完成」(民法第632条)と同視するものです。例えば、「委託者は、検収完了後、1ヶ月以内にシステム代金を支払う」といった契約条項が典型的なものとなります。

ところで、請負契約における「仕事の完成」とは、伝統的に次のように解釈されています。

 

【東京地方裁判所平成14年4月22日判決】

請負人が仕事を完成させたか否かについては、仕事が当初の請負契約で予定していた最後の工程まで終えているか否かを基準として判断すべきであり、注文者は、請負人が仕事の最後の工程まで終え目的物を引き渡したときには、単に、仕事の目的物に瑕疵があるというだけの理由で請負代金の支払を拒むことはできないものと解するのが相当である。

 

多くの裁判例は、上記の通り、最後の工程まで終えたといえるのかという形式面を重視して判断していますが、納入物のクオリティがあまりにも低い場合は、実質的には最後の工程まで終わったとはいえないと評価し、判断する裁判例も存在します。

 

【東京地方裁判所平成26年11月6日判決】

本件システムが完成したというためには本件要件定義書の要件を充足する必要があるところ、原告は、再三にわたり、別紙2に対応する本件要件定義書の要件に即した具体的な認否をするよう求められたにもかかわらず、本件ソフトウェアは、サーバ側のWebサービスとの通信や帳票出力の機能が作成、テスト途上であったものの、入力しデータベースに登録変更する基本的な動作は要件を満たしていたなどと概括的な主張するに止まり、結局、被告が主張する別紙2に対応する具体的な認否をせず、どの要件を充足したのか明らかにしない。

以上によれば、本件システムがほぼ完成したということはできず、…請負代金の全額を請求する原告の主張は、その前提を欠くことになるから、認めることはできない。

 

なお、上記平成26年の裁判例の対象となったシステムの具体的状況は分かりませんが、おそらくは杜撰なシステムだったと推測され相当レアなケースではないかと思われます。

 

ところで、伝統的な解釈論を前提にした場合、本来であれば、最後の工程完了(仕事の完成)⇒検収(検査)⇒合否…という流れになり、法律上、検収合格と報酬請求は連動していないことになります。このため、契約書で検収完了=仕事の完成と定め、検収完了と報酬請求を連動させることは、受託者に不利に作用することになります。例えば、最後の工程まで終了させたにもかかわらず、委託者がいつまで経っても検収しない場合、報酬請求ができないという事態に陥るからです。

受託者の立場として、このような問題を回避したいのであれば、受託者としては、上記条項例に定めた第3項のようなみなし合格に関する規定を置くことが必須となります。

なお、みなし合格に関する規定を置かなかった場合、受託者は一切の報酬請求ができないのかという問題が生じますが、この点については、委託者の検収協力義務違反を指摘するなどして救済している裁判例が存在します。ただ、当然のことながらケースバイケースの判断となりますので、やはりみなし合格の規定を置くことが望ましいことに変わりはありません。

 

②委託者は受託者の業務遂行に対する契約違反を指摘できなくなること

上記①と同じく、検収完了の効果を「仕事の完成」(民法第632条)と同視するものです。例えば、「検収の合格をもって、委託者の検収は完了したものとし、受託者の完成義務は履行されたものとして取り扱う。」といった契約条項が典型的なものとなります。

「仕事が完成」した以上、受託者は契約通りの業務を遂行したものと評価されますので、契約違反は存在せず、委託者は、受託者の業務遂行を債務不履行とする各種請求(追完、解除、損害賠償など)を行うことができなくなります。また、委託者都合による中途解約(民法第641条)も認められないことになります。

この観点からすると、検収に関する条項は、権利行使制限を受ける委託者にとって利害が大きいことになります。

なお、受託者の業務遂行により生じた“結果”に問題があった場合の権利行使については、次の③で解説します。

 

③検収完了後に見つかった不具合については契約不適合責任で処理すること(民法第562条以下)

検収完了の効果を「引渡し」(民法第562条から第564条)と同視するものです。例えば、「検収完了後×ヶ月以内に発見された不具合であって、当該不具合があることを知った日より×日以内に、具体的な不具合内容を通知した場合、委託者は、追完請求のみ行うことができる。」といった契約条項が典型的なものとなります。

すなわち、上記②で記載した通り、検収完了後にバグ等の不具合が発見されたとしても、最後の工程まで業務が完了している場合は「完成」(民法第632条)として扱われる以上、委託者は受託者に対し、受託者の業務遂行に問題があったとして契約違反を主張することができません。

しかし、委託者において一切の権利行使ができないことは不都合です。

そこで、民法は、受託者の業務遂行により生じた“結果”に問題があった場合、別途責任追及ができるとしました。すなわち「引渡し後」にバグ等の不具合が発見された場合は、別途契約不適合責任を追及できると定めています。

もっとも、無体物の場合、何をもって「引渡し」とするのか不明確ですが、次のような裁判例が存在します。

 

【東京地方裁判所平成26年12月24日判決】

本件(システム)を…サーバにアップロードし、×年×月×日、…××事務所において、(被告関係者である)××らに対し、同システムにアクセスするためのURL及びユーザID、パスワードを通知したことが認められる。

…原告は、被告に対し、(システム)開発契約に基づく債務の本旨に従った内容で、本件(システム)を納品したと認めるのが相当である。

 

上記はあくまでも一例にすぎず、ケースバイケースの判断になるものと思われます。争いを避けるためには、契約書で「引渡し」の定義を設けておくことが望ましいといえます。

なお、民法上は、「仕事の完成」と「引渡し」という別用語を用いている以上、両用語をまとめて検収(完了)という言葉に置き換えて契約書に定めてよいのか、実は検討を要する事項となります。

 

(3)小括

上記までで解説した通り、「検収」は法的根拠のある用語ではなく、契約書にどのように定めるのかによって、その意義・効果が異なるものとなります。

また、検収と似て非なる法的概念である、「仕事の完成」、「引渡し」との関係性についても整理を図る必要があります。

 

2.契約不適合責任とは

上記1.(2)③で記載した通り、検収完了後にバグ等の不具合が見つかったとしても、多くの場合、検収完了後は受託者による業務遂行に問題があったことを理由とする責任追及をすることができません。

業務遂行により生じた“結果”に対し、契約不適合責任のみ追及できることになります。

 

(1)意義・効果

契約不適合とは、引渡された目的物に不具合(=契約内容に適合しない状態)があることをいいます。

この契約不適合があった場合、民法は、次のような救済手段を設けています(なお、契約不適合責任は、売買の規定に置かれ、売買以外の有償契約は準用するという体裁を取っています。ここでは分かりやすさを重視し、売主を受託者、買主を委託者に置換しています)

 

【民法第562条:追完請求権】

1 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、委託者は、受託者に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、受託者は、委託者に不相当な負担を課するものでないときは、委託者が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

2 前項の不適合が委託者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、委託者は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

 

【民法第563条:代金減額請求】

1 前条第1項本文に規定する場合において、委託者が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、委託者は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、委託者は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

①履行の追完が不能であるとき。

②受託者が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。

③契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、受託者が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。

④前3号に掲げる場合のほか、委託者が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。

3 第1項の不適合が委託者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、委託者は、前2項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

 

【民法第564条:損害賠償及び解除】

前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。

 

ところで、契約不適合責任として、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び解除権行使が認められるのであれば、検収完了により、受託者の業務遂行に問題があったことを理由とする責任追及に制限が生じるとしても、結局のところは委託者にとって不利益が生じないのではないかという疑問が生まれるかもしれません。

たしかに、総論としては、検収完了前後において、委託者が権利行使できる内容に大きな差異は生じません。

しかし、裁判実務を念頭に置いた場合、

・検収完了前であれば、受託者において自らの業務遂行に問題が無いことを主張立証する必要があるという点で委託者に有利に作用する

・検収完了後の契約不適合責任の場合、不具合(不適合)があることを、委託者が主張立証する必要がある点で委託者に不利に作用する

という相違点が生じます。

また、現場実務の観点として

・検収段階に至ると、最後の工程を終えており「仕事の完成」と評価される場合が多いところ、委託者が契約不適合責任を行使する場面では、逆に受託者が報酬支払請求権を行使してくることも想定され、よりトラブルが深刻化する

といったこともあります。

したがって、契約不適合責任を追及する場合、委託者は、受託者の動向を考慮しつつ今後の見通しを立て、より慎重に権利行使しなければならないことになります。

 

(2)契約不適合責任と解除

上記(1)で、契約不適合責任の内容として、解除権行使が可能であることを記載しました。

しかし、不具合があるから直ちに解除できるわけではないことに注意が必要です。

すなわち、催告解除であれば、「催告期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微ではない」こと、無催告解除であれば、「催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかである」ことという要件を充足する必要があります。

これらの要件を検討する上で、次の裁判例が参考になります。

 

【東京地方裁判所平成9年2月18日判決】

バグといえども、システムの機能に軽微とはいえない支障を生じさせる上、遅滞なく補修することができないものであり、又はその数が著しく多く、しかも順次発現してシステムの稼働に支障が生じるような場合には、プログラムに欠陥(瑕疵)があるものといわなければならない。

 

上記裁判例にいう「システムの機能に軽微とはいえない支障を生じさせる上、遅滞なく補修することができないもの」とは、無催告解除の要件である「催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかである」の一例と考えられます。

一方、上記裁判例にいう「その数が著しく多く、しかも順次発現してシステムの稼働に支障が生じるような場合」とは、催告解除の要件である「催告期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微ではない」の一例と考えられます。

逆に言えば、バグ等の不具合が、上記裁判例のような段階にまで至らない場合、少なくとも解除権行使は難しいと考えたほうがよさそうです(追完請求を行うのが本筋になると考えられます)。

 

(3)契約不適合責任と期間制限

契約不適合責任を追及する場合、次のような期間制限があります。

 

【民法第637条】

1 …注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

(第2項省略)

 

この内容は受託者にとっては非常に不利なものとなります。

なぜなら、検収が完了し一定期間経過後、不具合が発現し、これを委託者が認識した場合、この認識した時から1年以内に受託者へ通知さえすれば、契約不適合責任の追及を受けてしまうからです。

この点を考慮して、多くの契約書では、例えば…

「検収完了後×ヶ月以内に発見された不具合であって、当該不具合があることを知った日より×日以内に、具体的な不具合内容を通知した場合、委託者は、追完請求を行うことができる。」

といった民法第637条第1項を修正する条項を定めています。

受託者としては、民法以上の権利行使に関する期間制限規定を設ける必要が無いか検討すると共に、一方で委託者としては、一定の権利行使に関する期間制限を設けることはやむを得ないとしても、不当に短期に設定されていないか、権利行使条件が厳格になっていないか等をチェックすることがポイントとなります。

 

(4)契約不適合責任と権利行使の制限

委託者にとっては、検収完了後でも契約不適合責任を追及できるという点で保護が図られているのですが、一定の場面ではこの保護から外されることがあります。

 

【民法第636条】

請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

 

システム開発の場合、委託者が材料を提供することはあまり考えられないことから、委託者の指図が原因となってシステムに不具合が生じた場合、委託者は契約不適合責任を追及することができない、とイメージすればよいかと思います。

ただ、システム開発の場合、委託者より様々な要望事項が出てくるのは当然のことであり、この要望事項を「指図」と捉えることは不合理と考えられます。また、受託者はプロジェクトマネジメント義務を負担している以上、委託者の要望事項を整理しつつ、委託者より誤った指摘等があった場合は専門家として正していく必要があります。

これらの点を考慮すると、システム開発契約の場合において、民法第636条が適用される場面は相当限定されるのではないかと考えられます。

3.契約不適合の内容・判断基準

契約不適合責任を追及する場合、何が「契約不適合」に該当するのか検討する必要があるところ、一般常識の意味での不具合と、契約不適合に該当する不具合とでは大きな乖離があります。例えば、次のような裁判例があります。

 

【東京地方裁判所平成14年4月22日判決】

情報処理システムの開発に当たっては、作成したプログラムに不具合が生じることは不可避であり、プログラムに関する不具合は、納品及び検収等の過程における補修が当然に予定されているものというべきである。このような情報処理システム開発の特殊性に照らすと、システム開発の途中で発生したシステムの不具合はシステムの瑕疵には当たらず、システムの納品及び検収後についても、注文者から不具合が発生したとの指摘を受けた後、請負人が遅滞なく補修を終えるか、注文者と協議した上で相当な代替措置を講じたと認められるときは、システムの瑕疵には当たらないものと解するのが相当である。

 

要は、検収完了後に不具合が見つかったとしても、受託者において遅滞なく補修できる場合や代替措置を講じることができる場合は、そもそも「不具合」には該当しないとしています。

これは、システム開発トラブルにおいて非常に特徴的な考え方となります。

上記を念頭に置きつつ、具体例を以下検討していきます。

 

(1)バグ

上記の平成14年裁判例を踏まえると、バグがあれば当然に「契約不適合」に該当すると判断されるわけではありません。

一方、上記2.(2)に記載した平成9年判決にある、「システムの機能に軽微とはいえない支障を生じさせる上、遅滞なく補修することができないものであり、又はその数が著しく多く、しかも順次発現してシステムの稼働に支障が生じるような場合」は「契約不適合」に該当する典型例と言えます。

結局のところは、受託者においてバグ対策をスムーズに講じることができるのかが、契約不適合該当性の判断基準になるものと思われます。

 

(2)処理速度

システムの処理速度について何らかの合意が行われている場合やSLA等で保証されている場合、その合意・保証に違反するか否かで判断すれば足ります。

しかし、システムの処理速度について、何らかの合意や保証が行われていることは稀と思われます。

この場合、形式的な判断基準が無いため、現状の処理速度の場合、受託者はどの程度業務に支障が出るのか、その支障の大小によって判断するほかないと考えられます。

 

(3)脆弱性

コンピュータウィルスに感染した、不正アクセス攻撃を受けたという結果のみで、「契約不適合」と判断されるわけではありません。未知のコンピュータウィルスが日々生み出され、不正アクセス手段も日進月歩で構築されており、そのすべてを排除することは現実的に不可能だからです。

したがって、契約締結時点において、①当事者間でセキュリティ対策について合意があるのであれば、その合意に従って判断すること、②合意が無いのであれば、少なくともシステム業界に携わる者であれば認識できた、又はIPA等の信頼性の高い機関を通じて広く周知されていたセキュリティリスクについて対策を講じていなかった場合は、受託者の専門家としての資質を問われ、「契約不適合」と判断される可能性が高いと考えられます。

 

(4)安定性

システムの特性として、バグ等の不具合が発生することは不可避的であるとしても、それでもなお一定範囲内で稼働し続けるのであれば、システムの安定性が維持されており、「契約不適合」には該当しないと考えられます。

結局のところ、“一定範囲”とはどの程度のことを指すのか、ケースバイケースで探求するほかないのですが、受託者の業務に与える影響度の大小によって判断するほかないと考えられます

 

(5)利用者の使い勝手・現場ニーズとの不一致

例えば、ユーザインターフェースにつき、委託者より使いづらいというクレームがあったとしても、システムそれ自体が稼働しているのであれば、「契約不適合」には該当しないものと考えられます。

なぜなら、“使い勝手”や“現場ニーズ”という指摘自体が非常に主観的なものであること、予めユーザの声を拾い上げて受託者に伝えるのが委託者の役割でありかつ協力義務の内容と考えられることからすると、仕様書に記載がない“使い勝手”や“現場ニーズ”は、契約内容に含まれていないと考えられるからです。

 

4.当事務所でサポートできること

当事務所では、ベンダ側・ユーザ側を問わず、システム不具合に関するトラブル事例について多くのご相談を受けています。そして、当事者間での交渉をサポートする、代理人として交渉を行う、訴訟手続きを行う等の問題解決のための支援も行っています。

多くの事例を取扱うことで、当事務所では、様々な知見と有用なノウハウを蓄積できており、これら蓄積された知見とノウハウを、ご依頼者様に還元し、お役立ちできるよう日々尽力しているところです。

検収前あるいは検収完了後に露見したシステム不具合に関するトラブル解決については、是非当事務所までご相談ください。

 

<2023年10月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。