利用規約をコピペすることは違法?コピペによる法的リスクを弁護士が解説

【ご相談内容】

当社が展開しているWEBサービスについてリニューアルを予定しています。

このリニューアルついでに利用規約の見直しを行おうと考えているのですが、同業他社の利用規約をコピペして対応しようと考えています。

やはりコピペすることは法律上問題となるのでしょうか。

【回答】

利用規約が著作物に該当する場合、法的には著作権侵害の問題が生じることになります。

ただ、後述する通り、利用規約の著作物該当性は限定的であるため、コピペしたから直ちに著作権侵害が成立するとまでシビアに考える必要はないと思われます。

その他、コピペすることで一般不法行為が成立する余地もありますが、これについても例外的と思われます。

ところで、コピペすることで問題となるのは、コピペ元との関係での権利侵害ではなく、コピペした利用規約が果たして自社サービスに適合するものであるのか、要は使い物になるのかという点です。

執筆者個人としては、かなり問題のある事例も散見していることから、この点については具体例を挙げながら解説を行います。

【解説】

1.利用規約のコピペと法律違反

(1)著作権侵害の可能性

ネット検索を行えば、無数の利用規約を閲覧することが可能です。

そして、自社が展開しようと考えているサービスを既に実施している同業他社の利用規約を見つけ出し、それをそのまま用いれば事足りると考えている方もいるかもしれません。

ただ、よくよく考えた場合、利用規約は文章の集合体であり、その1つ1つが(法的な意味で)独特な言い回しとなっています。このため、利用規約をコピペすることは著作権侵害が成立するのではないかと心配になるかもしれません。

 

この点、利用規約のデッドコピーに関する裁判例が存在しますので紹介します(東京地方裁判所平成26年7月30日判決)。

まず、利用規約を構成する条項それ自体が似ていることについて、裁判所は次のように判断しています。

(注:時計修理を行う事業者間での修理規約に関する紛争であることから、修理規約という言い回しになっています。)

⼀般に、修理規約とは、修理受注者が、修理を受注するに際し、あらかじめ修理依頼者との間で取り決めておきたいと考える事項を「規約」、すなわち条⽂や箇条書きのような形式で⽂章化したものと考えられるところ、規約としての性質上、取り決める事項は、ある程度⼀般化、定型化されたものであって、これを表現しようとすれば、⼀般的な表現、定型的な表現になることが多いと解される。このため、その表現⽅法はおのずと限られたものとなるというべきであって、通常の規約であれば、ありふれた表現として著作物性は否定される場合が多いと考えられる。

 

つまり、一般論として、各条項について文章内容が似通っていたとしても、著作権侵害が認められることは原則ないと判断しています。

このように書くと、利用規約をコピペして用いても何ら問題がないのではと思われるかもしれません。しかし、裁判所はさらに次のように判断しています。

しかしながら、規約であることから、当然に著作物性がないと断ずることは相当ではなく、その規約の表現に全体として作成者の個性が表れているような特別な場合には、当該規約全体について、これを創作的な表現と認め、著作物として保護すべき場合もあり得るものと解するのが相当というべきである。

 

ちょっと読み方がややこしいのですが、個々の条項だけでは著作物に該当しない場合が多いとしても、個々の条項によって構成される利用規約全体を通して判断した場合、著作物に該当する場合があるとしています。

 

そして、事案の判断として、「原告規約⽂⾔は、疑義が⽣じないよう同⼀の事項を多⾯的な⾓度から繰り返し記述するなどしている点」からすれば、「原告の個性が表れていると認められ、その限りで特徴的な表現がされているというべきであるから、『思想⼜は感情を創作的に表現したもの』(著作権法2条1項1号)、すなわち著作物と認めるのが相当」と判断し、損害賠償請求を認めています(なお、認容額は5万円です)。

 

結局のところ、

 

①利用規約を構成する個々の各条項については、原則著作物に該当しない可能性が高い

②利用規約全体を観察し創作性が認められる場合は、著作物に該当する可能性がある

 

と整理することができます。

上記①は世間で知られているようですが、上記②については案外知られていません。そして上記②の判断は、弁護士等の専門家であってもかなり判断に迷う場合が多いことから、事業者において、安易に利用規約をコピペして用いても著作権侵害は成立しないと判断することは危険と考えるべきです。

 

(2)不法行為の可能性

上記(1)で記述した通り、利用規約をコピペした場合、原則的には著作権侵害は成立しないと考えられますが、著作権以外でも問題となり得る場面があります。

すなわち、民法上の不法行為が成立しないかという問題です。

 

例えば、利用規約を作成する場合、条項ごとに見出し(タイトル)を付けることが通常です。この見出し(タイトル)をデッドコピーした場合、不法行為成立の余地を一応検討する必要があります。

 

この点、利用規約の見出し(タイトル)のデッドコピーの事案ではないのですが、裁判例として、ニュースの見出しに関する裁判例が存在します(知財高裁平成17年10月6日)。

すなわち、本件裁判では、ニュースの見出しについて著作物性は否定されたのですが、次のような根拠をあげて、見出しのデッドコピーについて不法行為の成立を認めました。

本件…見出しは、控訴人の多大の労力、費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること、著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの、相応の苦労・工夫により作成されたものであって、簡潔な表現により、それ自体から報道される事件等のニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること、…見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば、…見出しは、法的保護に値する利益となり得るものというべきである。

 

ちなみに、利用規約の見出し(タイトル)だけで有料の取引対象になっているとは言い難いところがあります。したがって、この点を強調すれば、利用規約の見出し(タイトル)のデッドコピーを行っても不法行為は成立しないと考えることも可能かもしれません。

ただ、この裁判例は1つの考慮要素として有料での取引対象であることを指摘しているにすぎず、絶対的な要件として指摘しているわけではないことに注意が必要です。

利用規約の見出し(タイトル)は、「相応の苦労・工夫により作成されたものであること」、「簡潔な表現により、それ自体から条項内容の概要について一応の理解ができるようになっていること」が多いので、やはり不法行為の可能性を完全に否定することは難しいように思われます。

 

したがって、利用規約の見出し(タイトル)をコピペすることは、できる限り回避するべきです(もちろん、ありふれた見出しや誰しもが思いつくような見出しであれば、神経質になる必要はありませんが…)。

 

(3)風評被害の可能性

法律論とは異なる問題となるのですが、例えば、オリジナルの利用規約作成者側から「××は利用規約をデッドコピーしている」とSNS等に投稿し、閲覧者が当該投稿を拡散することでちょっとした騒ぎになったとします。この場合、一般的には「××はタダ乗りしてけしからん」といった感情を持たれることが多く、××の信用が失われる事態につながりかねません。

実のところ、著作権侵害や不法行為該当性については、最終的には裁判所の判断を待たなければならないことから、その結論が出るのに早くても数ヶ月、場合によっては数年の時間が必要となります。したがって、デッドコピーした側からすれば、ある程度時間稼ぎすることができますし、その間に世間一般からの関心が薄れ忘れてくれるので、それほどダメージとならないことがあります。

 

一方、上記のような風評被害の場合、世間一般は法律論ではなく感情論で判断しますので、たとえデッドコピーした側に法的言い分があったとしても、世間一般に受け入れてもらえないこともあり得る話です。こうなってしまうと、デッドコピーした側が一方的にパッシングを受け、特にインターネット上でのパッシングを多数受けた場合、真偽不明の内容が半永久的に記録として残ってしまい(いわゆるデジタルタトゥーの問題)、いつまでも信用が傷つけられるという事態にもなりかねません。

最近はリーガルリスクの1つとして、風評被害(レピュテーションリスク)を検討することが多くなっています。利用規約のコピペの問題を検討する場合、どうしてもオリジナルの利用規約作成者側との関係性のみに検討が終始しがちですが、世間一般に胸を張って堂々と説明できるのかという観点からの検討も必要であることを知って頂きたいところです。

 

2.利用規約をコピペすることで起こり得る問題

利用規約をコピペして利用した場合において、上記1.では、主としてオリジナルの利用規約作成者側との関係で留意したい法的問題につき解説を行いました。

ここでは、利用規約をコピペして用いることで、自らに降りかかる不利益について、代表的な事例を5つとりあげます。

 

(1)法律より厳しい制約を自ら課してしまうパターン

例えば、ネット通販事業を営む場合において、大手同業他社の利用規約をコピペして次のような条項を定めたとします。

 

・ユーザは、商品到着後8日以内に申出ることで、無条件に商品を返品することができます。

 

ユーザ視点からは無条件返品が認められるという点で、非常にありがたい条項です。しかし、当然のことながら事業者にとっては、使い古された商品(再利用不可)が返品される場合もあり、非常にリスクのある取引形態となります。

ところで、そもそも論として、事業者は無条件返品を受け付ける必要があるのでしょうか。

よく勘違いされているのですが、通信販売の場合、クーリングオフの適用はありません。したがって、無条件返品を受入れなければならない義務は存在しません。なお、特定商取引法では、8日間の返品を認める旨の定めがありますが、これは特約を定めることで適用を排除することが可能です。

つまり、事業者は、商品に不具合がある場合であればともかく、商品に不具合がない場合にまで無条件返品を受け付ける必要は全くありません。大手の通販事業者は無条件返品を受け付けることが多いのですが、体力のない中小の通販事業者が無条件返品を受け付けると、商売が成り立たなくなる恐れがあります。

大手の通販事業者の利用規約をコピペしたことによって、余計な義務を負担してしまうことになる一例と言えます。

 

(2)法令上の許認可を取り忘れるパターン

例えば、コミュニティ機能を実装する場合において、SNS事業者の利用規約をコピペして次のような条項を定めたとします。

 

・ユーザは、当社が提供するチャット機能を用いて、他のユーザと交流を図ることができます。

 

利用規約の定めそれ自体は特におかしいという訳ではありません。

しかし、ユーザ間のやり取りを媒介するサービスを提供する場合、電気通信事業法に基づく届出等が必要となることがあります。

利用規約を読んだだけでは、サービスを実装するにあたって必要となる許認可情報までは得られないことが通常であるところ、利用規約をコピペして利用している事業者は、必要な許認可を得ることなく、サービスを提供していることになります。このため、将来的に違法状態であるとしてサービスの停止等を余儀なくされるリスクを抱え、実際にサービス停止となった場合は多数のユーザとトラブルになってしまうことが予想されます。

他社の利用規約をコピペしサービス提供を開始したとしても、ビジネスの適法性は全く担保されないことの一例と言えます。

 

(3)法律上の規制を失念してしまうパターン

例えば、アプリケーションのライセンスサービスを提供する場合において、大手SaaSサービス事業者の利用規約をコピペして次のような条項を定めたとします。

 

・当社は、何らかの事情により本サービスの提供が一時的に中止または中断した場合であっても、ユーザに対して何らの責任を負いません。

 

いわゆる免責条項と称されるものであり、事業者が作成する利用規約ではよく見かける内容となります。よく見かける内容であるがゆえに、何も考えずに当該条項をコピペして用いることが多いようなのですが、非常に問題があります。

すなわち、コピペ元の事業者が提供するSaaSサービスのユーザが事業者のみであり、消費者が想定されていない場合、上記のような免責条項は有効と判断される可能性が高いといえます。

しかし、利用規約をコピペした事業者が提供するアプリケーションサービスにつき、想定されるユーザが消費者であるという場合、上記のような免責条項は消費者契約法に違反することとなるため、無効となります。無効となるため、結局のところ法律上の原則論に基づき、事業者は責任を負うことになるのですが、これでは少しでも責任範囲を限定する目的で定めたはずの利用規約が意味を有しないことになります。

他社の利用規約を見て「これは都合の良い条項だ」と判断したとしても、上記例のように想定されるユーザが異なるなど、前提となるビジネスモデルに相違がある場合があります。全く同一のビジネスモデルを採用し、後発でサービス展開を行うことはビジネスの常識として考えられないことからすると、いくら似通ったサービスを提供している他社の利用規約を用いても、自社のビジネスモデルに完全に適合した利用規約にはならないことの一例と言えます。

 

(4)本来予定していないサービスを提供する羽目になるパターン

例えば、オンラインセミナーを提供する場合において、大手通信教育事業者の利用規約をコピペして次のような条項を定めたとします。

 

・ユーザは、セミナー受講後3日以内に申出ることによって、講師に対し直接質問を行うことでアドバイスを得ることができます。

 

通信教育の場合、事業者が講師を雇入れていることが通常です。そのため、受講後であっても、事業者関与のもとで受講者と講師との間で質疑応答サービスを提供することが可能です。一方、特に社会人向けセミナーの場合などが該当するのですが、セミナー主催者は外部講師にセミナー業務を委託していることが多く、セミナー終了後に委託契約が終了することから、質疑応答サービスの提供自体を想定していないことが通常です。

しかし、何も考えずにコピペすることで、上記のような条項を定めてしまった場合、セミナー主催者は、外部講師に再度依頼する等の手間がかかると共に、場合によっては別途講師料の負担を余儀なくされることもあります。

中身をよく確認しないままコピペした利用規約を用いることで、事業者が認識していたサービス内容と利用規約に基づき提供しなければならないサービス内容とにズレが生じ、結果的に事業者が損をする一例と言えます。

 

(5)裁判管轄が遠方になるパターン

例えば、営業地域が異なるものの、自社と全く同一のサービスを展開している事業者が用いている利用規約をコピペして、次のような条項を定めたとします。

 

・本サービスに関連して生じる一切の紛争については、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

 

いわゆる合意管轄条項と称されるものであり、たいていは利用規約の後ろの方に定められているのですが、直接的にはサービス内容と関係しない条項のためか、読み飛ばされることが多い条項のようです。

ただ、自社が福岡で事業展開しているにもかかわらず、裁判になった場合は東京のみで対応するというのは、どう考えても不自然ですし、経済的合理性がありません。

これも中身を確認しないままコピペしたことにより、自ら不都合を招いてしまった事例の1つと言えます。

3.利用規約を参照するに留めるも検証不十分により起こり得る問題

利用規約をデッドコピーするわけではなく、参照した上で一部を修正して用いるという場合も多いかと思います。これ自体はよく行われる手法であり、抜け漏れ防止や自社で気付かなかったビジネス上の問題点に気が付くきっかけになるなど、有用な面があります。

しかし、検証不十分のまま修正することで、かえって自社の首を絞めるというパターンも頻繁に見かけます。

ここでは、よくある5例を取り上げます。

 

(1)法律上の規制を自ら招いてしまうパターン

例えば、オンラインゲーム内で使用するポイントにつき、購入後6ヶ月以内で消費しなければならないと同業他社が定めていたことを考慮し、同業他社より優位に立つ(=ユーザに訴求する)ことを目的として、ポイントの有効期限を1年間と変更した上で利用規約を定めたとします。

たしかに、ユーザ視点からすれば、オンラインゲーム内で使用するポイントの有効期限が長くなることは歓迎されるべきことであり、一定の優位性をアピールすることが可能となります。

しかし、ポイントをユーザに購入し使用してもらうということは、資金決済法に定める前払式支払手段に該当します。そして、有効期限が6ヶ月を超える場合、事業者は一定額を供託しなければならない義務を負うことになります。ただ、中小企業の場合、この供託金を負担しきれないことが非常に多いというのが実情です。

安易にユーザ向けアピールを行うことで、自ら法律上の規制を招いてしまい、かえってビジネス展開に支障を来すという事例の1つと言えます。

 

(2)予定されたビジネスモデルを自ら崩壊させてしまうパターン

例えば、サブスクリプション方式のWEBサービスを提供している同業他社が、行政の取締り状況等を踏まえ、いつでも中途解約可能という方針を打ち出していることから、自社もいつでも中途解約可能と利用規約を修正したとします。

たしかに、近時サブスクリプションについてはトラブルが急増し、行政も取締りを強化していることからすると、望ましい対応と一応は考えられます。

しかし、もともとの自社のビジネスモデルとして、ユーザに一定期間利用してもらわないことには利益はおろか、コスト回収さえできないという場合、いつでも中途解約可能とするとビジネスが成り立たなく恐れが生じます。

法令上はサブスクリプション方式を採用するビジネス全般について、いつでも中途解約可能とすることまで求められていないこと、行政も中途解約の条件をユーザに分かりやすく表記するよう要請しているだけであって、いつでも中途解約可能とすることまで求めてないこと等の正確な知識を持たないまま、同業他社の動向だけを根拠に利用規約を修正することで、自社が展開するビジネスを崩壊させかねない事例の1つと言えます。

 

(3)ユーザを統制できずサービス提供が混乱するパターン

例えば、WEBサービスを提供するに当たり、迷惑行為を適切に取締まるためには個別具体的な禁止事項を定める必要があると判断し、他社が定める禁止事項をすべて網羅する内容の利用規約を定めたとします。

たしかに、一般論として、個別具体的な禁止事項をできる限り利用規約に定めておくことは望ましい対策であり、直ちに否定される方法ではありません。

しかし、一例ですが、自社サービスではプラットフォーム上への投稿機能が実装されていないにもかかわらず、不適切な投稿内容を禁止する条項を多数定めても意味がありません。また、ユーザのみならず、ユーザが許諾する第三者による利用が想定されているWEBサービスであるにもかかわらず、ユーザ以外の第三者による利用禁止条項を定めてしまうと、自己矛盾に陥ってしまいます。さらに、禁止事項は充実させたものの、禁止事項に違反した場合の制裁措置が定められていない(又は制裁内容が不十分)がために、実効性が乏しいといった事例もあったりします。

現場実務ではよく、利用規約が長ければ長いほどあらゆる事象を想定し網羅されていると誤信しがちなのですが、取捨選択と周辺条項の整備を行わないことには、いざという場合に全く役に立たない利用規約となってしまう事例の1つと言えます。

 

(4)正当な対価を徴収できないパターン

例えば、同一サービスを提供している同業他社の利用規約をベースに、自社の利用規約を作成したとします。

たしかに、参照元がしっかりとした利用規約を作成している場合、同一サービスであれば定めるべき内容もほぼ同一となることから、自社の利用規約に必要十分な内容を盛り込むことができます。

しかし、どこかに落とし穴があるのが常であり、よくある事例としては、同業他社と自社とではサービスに対する対価設定や徴収方法が異なるにもかかわらず、その点にまで検討が至っていないというものがあります。一例として、同業他社はイニシャルライセンス料のみ徴収しておりランニングライセンス料を徴収していないため、利用規約上は1回分の支払いのみ規定している、一方、自社はランニングライセンス料を徴収しているにもかかわらず、利用規約上は毎月支払いを行うという定めがどこにもない…といったことが現実にあったりします。

木を見て森を見ずではないですが、細かな権利義務関係にとらわれすぎ、肝心の対価支払いの定めを疎かにすることで、ビジネスの根幹を揺るがしかねない事例の1つと言えます。

 

(5)プラットフォームが定める禁止事項に違反するパターン

例えば、類似するサービスの利用規約を参照したところ、想定外の問題対応を可能にする条項があったため、その内容を取り込みつつ自社の利用規約を作成したとします。

たしかに、自社が気付かなかった事項を利用規約に反映させることができるという点では有用です。

しかし、いくらサービス内容が類似するといっても、参照元はブラウザ上でサービス提供する、自社は第三者のプラットフォーム上で提供するといった前提が異なる場合、利用規約を作成する上での留意事項が異なってきます。すなわち、プラットフォーム上で提供する場合、プラットフォーマーが定めるルールに従う必要があるところ、参照元の利用規約はその点をフォローしていない可能性があり得ます(例えば、上記(1)の事例にあったポイントの有効期限につき、一部プラットフォーマーは有効期限を設定すること自体禁止しています)。

サービスが提供される周辺環境まで考慮することなく、同一・類似のサービスの利用規約だから問題なしと安直に考えると、後でビジネスの展開自体ができなくなる等のトラブルに直面しかねない事例の1つと言えます。

 

4.適切に利用規約を作るためには

先人の知識を借りること、すなわち先行する同業他社の利用規約を見比べ、参照しながら利用規約を作成することは有用な方法です。ただ、同業他社が用いているから、うちも使って大丈夫と安易に判断することは厳に慎むべきです。

また、複数の利用規約を参照し、いいとこ取りで条項作成を行った場合、必ずと言っていいほど内容矛盾が生じています(作成者自身は気が付きにくいという厄介な問題があります)。

結局のところ、ある程度自社で作成するとしても、最終的には弁護士に相談し、①法令違反はないか②社会通念上問題とならないか③全体として内容矛盾その他不自然な点はないか④誤字脱字その他形式面で遺漏はないか等々につき、アドバイスを受けるというのが一番確実と考えられます。

是非、弁護士に相談してください。

 

<2022年9月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

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