【民法改正】第13回 多数当事者の債権・債務(連帯債務など)

【民法改正】第13回 多数当事者の債権・債務(連帯債務など)

 

社長:連帯債務という言葉は聞いたことがあるなぁ。でも、前から疑問だったんだけど、連帯債務と連帯保証って同じじゃないの?まずはそこから解説してよ。
弁護士:理論的には、連帯債務と連帯保証は異なる法制度なのですが、経済的な意味では、どちらも人的担保ですので、たしかに同じかもしれません。
社長:じゃ、なんで別制度にしているんだろうか?
弁護士:よく例に出されるのは夫婦で不動産を購入した際のペアローンと呼ばれるものがあります。夫婦で持分割合を決めて不動産を購入するものの、夫のみが債務者となり、妻が連帯保証人に過ぎない場合、不動産購入に見合った負債を抱えているのはどこまでいっても夫のみと考えられます。そうであるにもかかわらず、妻が持分権を有するとなると、税務上は贈与があったと見なされる場合があり、別途税金(贈与税)がかかってくることもあるようです。
 こうした税務対策の観点から、夫と妻の両方がローン債務を負担する形態=連帯債務として取り扱った方が有利という実務上の話はどうやらあるようです。
社長:ふ~ん、、、いろいろ考えているんだね。
弁護士:それはともかく、多数当事者の債権債務関係という場合、理論上は、①連帯債権、②連帯債務、③不可分債権、④不可分債務というものに分類されます。が、①と③は実務上はあまり見かけませんので、②と④を以下解説したいと思います。
社長:了解。ところで、連帯債務、不可分債務といった区分はどうやって行うの。だいたい、多数当事者がいるから必ず「連帯」「不可分」になるわけでもないのでは?
弁護士:おっしゃる通りです。大まかな関係図を示すと次のようになります。
債務の内容が性質上「可分」 債務の内容が性質上「不可分」
原則 分割債務 不可分債務
例外 法令の規定or当事者が連帯して負担することを合意したときは連帯債務

 

社長:性質上「可分」「不可分」とはどういうこと?
弁護士:大雑把なイメージとしては、金銭債務については性質上可分、物の引渡しは性質上「不可分」と考えればよいかと思います。
社長:例えば、債務者が3人で150万円借りた場合、原則的には分割債務として債務者は50万円ずつしか負担しないけど、当事者間の合意があれば債務者はそれぞれ150万円を負担するという理解でよいのかな。
弁護士:その通りです。
社長:でも、連帯債務の場合、たまたま1人が債権者のお気に入りで債務免除された場合、他の債務者にどういった影響が生じるのか、いろいろ複雑な問題が出そうだなぁ。
弁護士:ご指摘はごもっともで、実は今回の民法改正の目玉は、債務者間の内部関係の取扱に変更が入ったという点なんです。なかなか分かりづらいかもしれませんが、一応まとめますと、次のようになります。

 

現行:連帯債務 改正:連帯債務 不可分債務
弁済 絶対効
(=他の債務者にも影響が及ぶ)
絶対効 絶対効
請求 【相対効】 【相対効】
更改 絶対効 絶対効
免除 【相対効】 【相対効】
相殺 絶対効 絶対効
混同 絶対効 【相対効】
時効 【相対効】 【相対効】

 

社長:ちょっと頭がクラクラしてきたぞ…。
弁護士:でしょうね…。我々弁護士でもこの分野はなかなか理解しづらいところですねで。ただ、非常に大雑把に申し上げますと、債権者の満足(=実質的に回収ができている)になるものについては、絶対効が発生し、直接的に債権者の満足に繋がらないものについては、他の債務者には影響を及ぼさない(相対効)といってよいのかもしれません。
社長:この相対効なんだけど、例えばさっきの連帯債務の例でいえば、1人が消滅時効を援用した場合であっても、他の2名は引き続き債権者との関係では全額負担義務を負うという理解で良いのかな。
弁護士:その通りです。
社長:でもそうすると、全額を支払った債務者は消滅時効を援用した債務者に対して求償できないということになるのでは…。
弁護士:その辺りについても改正法ではルールが設定されました。結論から申し上げれば、求償は可能です。消滅時効を援用する対象は債権者であり、債権者との関係で負担が無くなったにすぎません。つまり、他の債務者との関係=内部負担割合について消滅したわけではないので、債務者は求償可能ということになります。
社長:消滅時効を援用しても、債務者間の約束事項(内部負担割合)は守りなさいという訳だな。
弁護士:そういうことになりますね。ちなみに、時効の援用以外に「免除」でも同じ問題が生じますが、結論としては内部間での求償は可能というのが改正民法の立場です。
社長:なるほどねぇ。

 

(平成28年8月5日更新)

 

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

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