【民法改正】第4回 賃貸借(地位の変更・妨害・排除)

【民法改正】 第4回 賃貸借(地位の変更・妨害・排除)

 

弁護士:今回は、民法改正でも必ず話題になる「賃貸借」について触れていきたいと思います。

 

社長:これまでの話からすると、これまでの実務上の運用が法律に反映されただけだから、特に目新しい規定なんて無いのでは?

 

弁護士:基本的な民法改正案の発想は、社長のご指摘の通りです。ただ、賃貸借については、新設された規定があります。

 

社長:ほう、それは何?

 

弁護士:2つあるのですが、まずは軽いものからいきますね。1つ目は、賃貸借契約の上限期間が50年と延長されました。

 

社長:え!?賃貸借契約の期間に上限なんてあったの?

 

弁護士:実はあるんです。現行法では20年なんですが、20年では短すぎるということで50年に変更されることになりました。

 

社長:へぇ、そうなんだ。。。

 

弁護士:さて、あともう1つですが、賃貸人たる地位の移転に関するものです。
従前の解釈では、不動産オーナー兼賃貸人が不動産を第三者に売却してしまった場合、賃貸人たる地位は当該第三者に当然に移るものとされていました。しかし、今回の改正案では、一定の条件を満たす場合、不動産を手放しても賃貸人たる地位は引き続き保有することができるということができるようになりました。

 

社長:う~ん、、、理屈は分かるけど、何かメリットがあるのかなぁ。

 

弁護士:最近流行の兆しがある不動産の信託譲渡への対応という目的が大きいように思います。あるいは、不動産は手放したい(固定資産税の支払いを回避したい)けど、賃料は引き続き得たいという事情、例えば、収入に乏しい親が子供に不動産を譲渡し、固定資産税を子供に支払ってもらいつつ、生活資金として引き続き親は賃料収入をあてにしたいといった場合が想定されるのかもしれませんね。

 

社長:なるほど、世間では色々な事情があるんだな。ところで、その「一定の条件」とは何があたるのかな。

 

弁護士:2つの要件充足が必要なのですが、①旧所有者と新所有者との間で賃貸人の地位を旧所有者に留保する合意を行なうこと、②新所有者を賃貸人、旧所有者を賃借人とする賃貸借契約を締結すること、が条件となります。

 

社長:そうすると従来の賃借人は、いわば転借人になる、転貸借契約となってしまうわけだな。

 

弁護士:その通りです。

 

社長:でも、転貸借契約となってしまうと、万一、旧所有者と新所有者との賃貸借契約が後で解消された場合、親亀こけたら皆こけた…ということで、転貸借契約に悪影響が生じるのではないかと不安があるけど…。

 

弁護士:たしかに、その懸念は残りますね。今回の民法改正では、旧所有者と新所有者が賃貸借契約を合意解約しても転借人は保護される旨が明文化されました。ただ、賃借人である旧所有者が賃料不払い等の契約違反(債務不履行)となった場合は、転借人が保護されませんので、その点では不安は残ってはしまいますね。

 

社長:色々ややこしいなぁ。ところで、賃貸人の地位について留保することなく、新所有者=賃貸人と変更となった場合は、今回の民法改正で何か影響がでるのかな?

 

弁護士:基本的には影響がありません。といいますか、現行民法では明文化されていなかった解釈論(裁判例)が民法改正により軒並み明文化された結果、ルールがはっきりしました。

 

社長:例えば?

 

弁護士:そうですね、例えば…
 ①新所有者が賃貸人たる地位を承継することについて、従前からの賃借人の同意を得る必要が無いこと。
 ②もっとも、新所有者が従前からの賃借人に対して、自らが賃貸人であることを対抗するためには登記が必要であること。
 ③敷金返還債務及び費用償還債務について、賃貸人たる地位を承継すると同時に一緒に承継されること。
といったものが代表例になります。

 

社長:今指摘した事項は、従来からの実務運用だったわけか。

 

弁護士:そうなんです。まぁ、法律に書いていないとこんなこと分からないですよね。あと、逆に賃借人の権利行使についても、明文化されています。
 特に、賃借人が不法占拠者に対して妨害排除請求ができることが明文化されたことは非常にインパクトがあると思いますね(従来より解釈論として認められていたとはいえ)。

 

社長:へぇ~、家主にお願いするのではなく、賃借人自らが妨害排除請求権を行使できるんだ。

 

弁護士:そうなんです。ただ、この妨害排除請求権を行使するためには、賃借人として対抗要件を備えていること、典型的には賃借権の登記ですが、借地借家法上の対抗要件でもOKとされています。

 

 

 

 

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

 

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