目次
購入できない商品が掲載される問題
ECサイト、ECモールやフリマアプリでは、商品ページ上は購入できるように表示されているにもかかわらず、注文後に「在庫がない」「仕入先から調達できない」などの理由で、取引がキャンセルされることがあります。
例えば、次のようなケースです。
・商品を確保しないまま出品し、注文後に仕入れようとする
・他の販売サイトで売却済みの商品を掲載し続ける
・仕入先で在庫切れとなった後も商品ページを停止しない
・購入できない商品を掲載し、問い合わせ後に別商品を案内する
・予約販売や受注生産であることを明示せずに注文を受ける
商品が結果的に欠品しただけで、直ちに景品表示法上の「おとり広告」となるわけではありません。もっとも、表示した時点で商品を供給できる具体的な見込みがなかった場合や、供給不能を認識しながら掲載を続けた場合には、実際には購入できない商品を購入可能であるかのように表示したものとして、おとり広告に該当する可能性があります。
本記事では、EC・フリマアプリにおける無在庫販売、同時出品、売り切れ後の掲載、予約販売などを取り上げ、おとり広告となるかを判断する基準と、事業者が講じるべき対策を解説します。
おとり広告の基本とEC取引での問題点
(1) おとり広告とは
おとり広告とは、実際には購入できない商品や、事業者が実際には取引する意思のない商品について、購入できるかのように表示し、一般消費者を誘引するものです。
景品表示法では、商品やサービスの内容・価格に関する誤認表示だけでなく、表示どおりに取引できない商品・サービスを用いて顧客を誘引する表示も規制されています。
おとり広告として問題となる表示は、主に次の4つに整理できます。
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・取引の対象となる商品又はサービスが実際には存在しない場合 ・商品又はサービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定内容が明瞭に表示されていない場合 ・供給期間、供給対象者又は一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定内容が明瞭に表示されていない場合 ・合理的な理由なく取引の成立を妨げるなど、実際には取引する意思がない場合 |
無在庫販売や在庫切れとの関係では、商品が存在しない場合だけでなく、表示された条件では実際に取引へ応じられない場合や、表示商品をきっかけとして別の商品へ誘導する場合が問題となります。
なお、おとり広告の詳細については、次の記事をご参照ください。
■景品表示法違反となる「おとり広告」とは?そのポイントを解説
(2) 商品ページや出品画面の「表示」該当性
おとり広告という名称から、新聞広告、チラシ、テレビCMなどを想定するかもしれません。しかし、景品表示法上の「表示」は、これらの広告媒体に限られません。
EC取引では、次のような表示も規制対象となります。
・自社ECサイトの商品ページ
・ECモールの商品ページや商品一覧
・フリマアプリの出品画面
・検索連動型広告やショッピング広告
・SNS上の商品広告
・メールマガジンやアプリのプッシュ通知
・価格比較サイト等に掲載される商品情報
特にEC取引では、消費者が商品そのものを手に取って確認できず、商品ページの表示を前提として購入を判断します。そのため、商品名や価格だけでなく、在庫の有無、販売可能数量、発送時期、予約商品であることなども、購入判断に影響する重要な情報です。
(3) EC取引における表示と在庫の不一致
実店舗の広告と異なり、EC取引では複数の販売経路が同時に利用されることがあります。また、商品ページ、広告配信システム、倉庫及び仕入先の在庫情報が別々に管理されていることもあります。
そのため、次のような原因で、表示上は購入できるものの、実際には供給できない状態が生じます。
・商品を確保せず、注文後に仕入れる運用
・仕入先の在庫情報の更新遅延
・店舗とECサイトにおける在庫の重複販売
・複数のECモールへの同時出品
・売り切れ後の商品ページや広告の停止漏れ
・終売商品や入荷未定商品の掲載継続
・予約販売や受注生産であることの表示不足
もっとも、注文後に欠品が判明したという結果だけで、直ちにおとり広告となるわけではありません。出品時に商品を供給できる合理的な見込みがあったか、供給不能を認識した後も表示を継続したか、欠品が偶発的か反復的かなどを踏まえて判断する必要があります。
(4) 事業者の販売意思と客観的な供給可能性
事業者が「販売するつもりだった」「仕入れられると思っていた」と認識していても、それだけでおとり広告の問題を回避できるとは限りません。
例えば、仕入先の在庫を確認せずに品薄商品を大量出品し、注文が入るたびに調達を試みている場合には、実際に供給できる客観的な根拠があったかが問題となります。
EC取引におけるおとり広告の判断では、事業者の主観だけでなく、在庫確認の方法、仕入先との関係、販売可能数量、欠品時の停止体制及び過去のキャンセル状況などを確認することが重要です。
おとり広告となるかを分ける判断基準
ECサイト等に掲載した商品を結果的に供給できなかったとしても、そのことだけで直ちにおとり広告となるわけではありません。
おとり広告に関する告示では、問題となる表示を、取引準備の有無、供給量の限定、供給期間等の限定及び実際の取引意思という4つの類型に分けています。
EC取引においても、商品が欠品したという結果だけで判断するのではなく、商品を掲載した時点の状況、実際に設定していた販売条件、供給不能となった後の対応などを、各類型に沿って確認する必要があります。
(1) 表示商品を供給するための取引準備
まず1つ目として、商品ページを掲載した時点で、注文に応じるための準備が実際になされていたかが問題となります。
販売者が商品を自社の倉庫や店舗に保管していなかったとしても、そのことだけで取引準備がなかったことにはなりません。メーカーや卸売業者との継続的な取引関係があり、注文後に商品を確保できる具体的な仕組みが整っていれば、取引準備があると評価できる場合があります。
他方、注文を受けてから初めて他のECサイトやフリマアプリで商品を探す場合や、仕入先の在庫を確認せずに商品を大量掲載している場合には、表示時点で供給できる具体的な根拠が乏しいと考えられます。
主な確認事項は、次のとおりです。
・商品の現物又は販売可能な在庫の有無
・具体的な仕入先の有無
・仕入先との契約又は継続的な取引関係
・表示時点における仕入先在庫の確認状況
・商品の取り置き又は仕入枠の確保
・表示した納期までに調達できる具体的な見込み
・売り切れ又は仕入不能を把握した後の販売停止状況
事業者が主観的に「仕入れられると思っていた」と認識していただけでは十分ではありません。その判断を裏付ける在庫情報、仕入先との契約、発注実績等の客観的な事情が必要です。
また、商品掲載時には取引準備があったとしても、その後に売り切れ、終売又は仕入不能となった場合には、その時点以降の表示が問題となります。供給不能を認識しながら購入可能な状態を継続すれば、取引準備がない商品について表示を続けたと評価される可能性があります。
(2) 供給量の限定に関する表示
2つ目として、表示商品の供給量が著しく限定されている場合に、その限定内容が購入者に明瞭に示されていたかが問題となります。
例えば、実際に販売できる商品が数点しかないにもかかわらず、数量の限定を示さず、通常どおり購入できるかのように表示している場合には、表示と実際の供給量が一致しません。
複数のECモールやフリマアプリへ同じ商品を掲載している場合には、各サイトに設定した数量だけでなく、すべての販売経路を合計した供給可能数量を確認する必要があります。
主な確認事項は、次のとおりです。
・事業者が実際に保有又は確保している数量
・各販売サイトに登録した販売可能数量
・複数の販売経路における合計販売可能数量
・実店舗とオンライン販売との在庫共有状況
・通常予想される注文数
・安全在庫の設定状況
・数量¥限定であること及び具体的な限定内容の表示
単に「数量限定」「在庫限り」と記載すれば、常に十分となるわけではありません。供給量が著しく限定されている場合には、具体的な数量その他の限定内容を、購入者が容易に認識できる位置と方法で表示する必要があります。
また、商品ページ上の販売可能数量が実在庫を上回る状態が反復している場合には、一時的な入力ミスではなく、在庫管理体制そのものに問題があると評価される可能性があります。
(3) 供給期間・供給対象者・一人当たり数量の限定に関する表示
3つ目として、商品の供給期間、供給対象者又は購入者一人当たりの供給量が限定されている場合に、その限定内容が明瞭に表示されていたかが問題となります。
この類型では、商品全体の在庫数だけでなく、いつまで、誰に対して、一人につき何個まで販売するのかという取引条件が問題となります。
例えば、会員のみを対象とする販売、特定地域への限定販売、一人一個までの販売、特定期間だけの予約販売などでは、その条件を購入者が申込み前に認識できるように表示する必要があります。
主な確認事項は、次のとおりです。
・販売開始日及び販売終了日
・予約期間又は申込期間
・販売対象となる会員、地域その他の条件
・一人当たりの購入可能数量
・予約商品又は受注生産品であること
・発売日、入荷予定日又は製作期間
・発送予定時期
・入荷遅延又は製造中止が生じた場合の取扱い
重要な条件を商品説明欄の末尾や別ページにだけ記載しても、商品ページ全体の表示との関係で明瞭とは評価されない場合があります。
例えば、商品名や購入ボタンの付近に「即納」と表示しながら、離れた箇所に「入荷後に発送します」と記載している場合には、購入者に正確な供給条件が伝わらない可能性があります。
予約販売や受注生産であることだけで、おとり広告となるわけではありません。もっとも、入荷時期や製作能力について具体的な見込みがないまま、確実に供給できるかのように表示する場合には、取引準備の有無も併せて問題となります。
(4) 表示商品についての実際の取引意思
最後に、事業者が表示商品について実際に取引する意思を有していたかが問題となります。
商品を供給できないことが判明した後、購入者の希望に応じて同等品を案内すること自体が、直ちにおとり広告となるわけではありません。
しかし、当初から表示商品を販売する意思がなく、その商品を利用して顧客を集め、別の商品へ誘導していた場合には、実際の取引意思がなかったと評価される可能性があります。
主な確認事項は、次のとおりです。
・表示商品について実際に取引へ応じた実績
・合理的な理由のない注文拒否又はキャンセルの有無
・表示商品を供給できないことを認識した時期
・供給不能認識後に表示を継続した期間
・欠品又はキャンセルが反復しているか
・相場より著しく低い価格で顧客を誘引していないか
・問い合わせ後に高額商品や利益率の高い商品を一律に提案していないか
・別商品の購入を断った場合に取引を打ち切っていないか
一度の欠品やキャンセルだけで、直ちに取引意思がなかったと判断されるものではありません。
他方、同じ商品について仕入不能によるキャンセルが繰り返されている、表示商品について取引を成立させた実績がない、問い合わせのたびに別商品を提案しているといった事情が重なる場合には、表示商品を実際に販売する意思があったかについて疑義が生じます。
おとり広告への該当性は、一つの事情だけで機械的に決まるものではありません。表示時点における取引準備、実際の供給量、供給期間等の限定表示及び表示商品についての取引意思を、販売履歴や在庫記録等の客観的な資料に基づいて総合的に検討する必要があります。
販売方法別の具体的な検討
無在庫販売、同時出品、予約販売などは、それぞれ名称だけでおとり広告への該当性が決まるものではありません。上記3.で解説した取引準備、供給数量・条件の表示、実際の取引意思を踏まえ、具体的な販売実態に即して判断する必要があります。
(1) 注文後に他のECサイト等から仕入れる販売
注文を受けた後に、他のECサイト、フリマアプリや実店舗から商品を調達する販売方法です。
この方法では、出品時点で商品を確保しておらず、仕入先の在庫や価格も変動するため、取引準備があったといえるかが問題となります。
特に、次の事情がある場合には、おとり広告に該当する可能性が高まります。
・出品時に仕入先の在庫を確認していない
・特定の仕入先との継続的な取引関係がない
・商品の取り置きや仕入枠を確保していない
・品薄商品や限定商品を多数掲載している
・仕入不能によるキャンセルが繰り返されている
・仕入先の販売価格が上昇すると注文を取り消している
他方、仕入先との契約に基づき、在庫情報が継続的に共有され、注文に応じて確実に商品を確保できる体制がある場合には、販売者が商品を手元に保有していないことだけで、直ちにおとり広告となるわけではありません。
(2) メーカー・卸売業者からの直送
販売者が注文を受け、メーカーや卸売業者が購入者へ商品を直接発送する販売方法です。
次のような体制が整っている場合には、販売者自身が商品を保管していなくても、取引準備があると評価できる余地があります。
・供給元との継続的な契約関係
・販売可能な商品及び数量の事前確認
・注文情報と在庫情報の連携
・発送時期及び配送方法の明確化
・欠品時の連絡及び販売停止の手順
もっとも、供給元の在庫を把握せずに商品を掲載している場合や、在庫連携の不具合を認識しながら販売を続けている場合には、実際の供給能力を欠く表示として問題となり得ます。
また、法律上直ちにおとり広告とならない場合でも、利用するプラットフォームが第三者から購入者への直送を禁止していることがあるため、規約上の確認も必要です。
(3) 複数サイトへの同時出品
一つの商品を複数のECモールやフリマアプリへ同時に出品すること自体は、直ちにおとり広告となるものではありません。
問題となるのは、実際の在庫数を超えて注文を受ける状態を放置している場合です。
例えば、在庫が1点しかない商品を複数サイトに掲載し、一つのサイトで売却した後も、他のサイトで購入可能な表示を続けていれば、売却後の表示について取引準備がないと評価される可能性があります。
事業者は、次のような管理体制を整える必要があります。
・複数サイトにおける在庫の一元管理
・売却後に他サイトの掲載を停止する仕組み
・実在庫数より少ない販売可能数量の設定
・店舗販売とオンライン販売との在庫連携
・在庫連携に障害が生じた場合の販売停止
同時出品による欠品が反復している場合には、偶発的な重複受注ではなく、販売可能数量の管理そのものに問題があると判断される可能性があります。
(4) 予約販売・受注生産
予約販売や受注生産では、注文時点で商品が完成していない、又は販売者の手元にないことが予定されています。そのため、完成品を保有していないことだけで、おとり広告となるものではありません。
重要なのは、次の事項を購入者に明瞭に表示し、表示内容に対応する供給体制を確保することです。
・予約商品又は受注生産品であること
・発売日、入荷予定日又は製作期間
・発送予定時期
・販売可能数量
・入荷遅延や製造中止が生じた場合の取扱い
・キャンセル及び返金の条件
入荷予定が確定していないにもかかわらず、特定の日までに確実に発送できるかのように表示する場合や、製造能力を大幅に超える注文を受ける場合には、表示どおりに供給できる能力があったかが問題となります。
(5) 売り切れ後の商品ページの掲載継続
商品が売り切れた後も、過去の商品情報や販売実績を示すために商品ページを残すこと自体が、常におとり広告となるわけではありません。
もっとも、次のような表示が残っている場合には、購入者が現在も購入できると誤認する可能性があります。
・購入ボタンが有効な状態
・「販売中」「在庫あり」等の表示
・検索結果や商品一覧への掲載
・リスティング広告やSNS広告の継続
・在庫切れの表示が分かりにくい状態
売り切れ後に商品ページを残す場合には、「売り切れ」「販売終了」などを明確に表示し、購入操作ができない状態にする必要があります。
また、商品ページだけでなく、外部広告、比較サイト、アフィリエイト広告等の掲載も停止又は修正する必要があります。
(6) 供給できない商品から別商品への誘導
表示商品を供給できないことを伝えたうえで、購入者の選択肢として同等品を案内すること自体は、直ちにおとり広告となるわけではありません。
しかし、当初から表示商品を販売する意思がなく、その商品を入口として別の商品を販売する目的があった場合には、おとり広告に該当する可能性が高くなります。
例えば、次のような販売方法には注意が必要です。
・相場より著しく低い価格の商品を掲載して顧客を集める
・問い合わせがあるたびに在庫切れと説明する
・より高額な商品や利益率の高い商品を一律に提案する
・表示商品について実際の販売実績がない
・別商品の購入を断ると取引を打ち切る
別商品の案内が、予期しない欠品への事後的な対応なのか、当初から予定された誘導なのかは、表示商品の在庫状況、販売実績、価格設定、キャンセルの発生状況などを踏まえて判断する必要があります。
販売方法の名称だけで適法性を判断することはできません。商品を供給するための準備、実際の供給可能数量、販売条件の表示及び表示商品についての取引意思を、個別の販売実態に即して確認することが重要です。
規約違反・契約責任と事業者の対応
商品を供給できない表示がおとり広告に該当しない場合でも、事業者に法的な問題が生じないとは限りません。
フリマアプリ・ECモールの規約に違反する可能性があるほか、購入者との売買契約が成立していれば、商品を引き渡せないことについて契約上の責任が問題となります。
(1) プラットフォーム規約への違反
フリマアプリやECモールは、取引上のトラブルを防止するため、法令とは別に独自の出品ルールを定めています。
そのため、景品表示法上は直ちにおとり広告とならない販売方法であっても、次のような行為が規約上禁止されている場合があります。
・出品者の手元にない商品の出品
・外部のECサイトから購入者への直送
・実際の在庫数を超える数量の出品
・販売する意思のない商品の掲載
・外部サイトやSNSへの誘導
・商品の内容や発送時期が不明確な出品
例えば、メーカーや卸売業者との供給体制が整っており、商品を実際に供給できる場合でも、利用するプラットフォームが第三者からの直送を禁止していれば、規約違反となる可能性があります。
規約違反と判断された場合には、次のような措置を受けることがあります。
・商品ページの削除
・進行中の取引のキャンセル
・出品機能の制限
・アカウントの利用停止
・出店契約の解除
事業者は、「法律上違法でなければ掲載できる」と判断するのではなく、利用するプラットフォームごとに規約や出品ガイドラインを確認する必要があります。
(2) 売買契約の成立時期
注文後に商品を供給できないことが判明した場合には、購入者との売買契約が既に成立しているかを確認する必要があります。
EC取引における契約の成立時期は、販売サイトの利用規約や注文画面の表示によって異なります。例えば、次の時点が契約成立時期として定められている場合があります。
・購入者が注文を確定した時点
・決済が完了した時点
・事業者が注文を承諾した時点
・商品の発送を通知した時点
注文を受け付けたことを知らせる自動送信メールが、直ちに事業者の承諾を意味するとは限りません。もっとも、注文画面や利用規約の記載が不明確であれば、事業者が想定する時点とは異なる時点で契約が成立したと判断される可能性があります。
事業者は、利用規約、注文確認画面及び通知メールの内容を整合させ、契約成立時期を購入者に分かりやすく示す必要があります。
(3) 契約成立後の供給不能
売買契約が成立した後に、事業者側の事情で商品を供給できなくなった場合には、単に注文をキャンセルすれば責任を免れるとは限りません。
商品を引き渡せない場合には、契約の解除や代金返還に加えて、事情によっては債務不履行に基づく損害賠償が問題となる可能性があります。
もっとも、購入者が主張するすべての損害について当然に賠償義務を負うわけではありません。事業者の責任の有無や範囲は、供給不能となった原因、事業者の帰責性、予見可能性及び実際に発生した損害などを踏まえて判断されます。
利用規約に「在庫切れの場合は注文を取り消すことができる」と定めていても、その条項によってあらゆる責任を当然に免れるとは限りません。条項の内容や表示方法に加えて、実際の運用状況も確認する必要があります。
(4) キャンセル時の購入者対応
供給不能が事業者側の事情による場合には、購入者に責任があるかのような処理を行うべきではありません。
特に、次の点に注意が必要です。
・購入者都合のキャンセルとして処理しないこと
・供給できない理由を正確に説明すること
・受領済みの代金を速やかに返還すること
・返金手数料を購入者に負担させないこと
・ポイントやクーポンの取扱いを確認すること
・購入者の同意なく代替商品へ変更しないこと
代替商品を提案する場合には、当初の商品を供給できないことを明示したうえで、価格、仕様、納期などの相違を説明し、購入者が返金を選択できるようにする必要があります。
(5) 供給不能判明後の表示停止
一件の注文をキャンセルしただけでは、問題への対応として十分ではありません。
同じ商品が購入可能な状態で掲載されていれば、新たな注文が入り、同様の供給不能が繰り返される可能性があります。
供給不能が判明した場合には、次の表示を横断的に確認する必要があります。
・自社ECサイトの商品ページ
・ECモールやフリマアプリの出品
・検索広告やSNS広告
・メールマガジンやプッシュ通知
・比較サイトやアフィリエイト広告
・店舗における販売表示
購入機能を停止するだけでなく、「在庫あり」「販売中」などの表示が残っていないかも確認する必要があります。
(6) 再発防止に向けた管理体制
欠品やキャンセルが発生した場合には、個別の購入者対応だけで終わらせず、発生原因を確認することが重要です。
事業者が講じるべき対策として、次のものが考えられます。
・出品前の在庫確認手順の設定
・複数サイトにおける在庫の一元管理
・実在庫数より少ない販売可能数量の設定
・売り切れ時の自動的な販売停止
・在庫連携障害時の手動停止手順
・欠品率及びキャンセル率の定期的な確認
・仕入先との連絡方法及び責任分担の明確化
・在庫確認及びキャンセル対応に関する記録の保存
無在庫型の販売では、商品ページの文言を修正するだけでは十分ではありません。商品の確保、在庫情報の更新、販売停止及び購入者対応を一連の業務として管理する必要があります。
まとめ
ECサイト、ECモールやフリマアプリに掲載した商品を結果的に供給できなかったとしても、それだけで直ちにおとり広告となるわけではありません。
おとり広告への該当性を判断する際には、主に次の点を確認する必要があります。
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・表示商品を供給するための在庫、仕入先その他の取引準備 ・表示した数量に対応する実際の供給可能性 ・予約販売、受注生産、発送時期等の供給条件の明示 ・供給不能を認識した後における表示の停止 ・表示商品について実際に取引する意思の有無 ・欠品やキャンセルの発生状況 ・供給できない商品から別商品への誘導の有無 |
商品を手元に保有していないことだけで、直ちに違法となるものではありません。メーカー直送や予約販売など、合理的な供給体制があり、その条件を正確に表示している販売方法もあります。
一方、出品時点で商品を供給できる具体的な根拠がない場合や、当初から表示商品を販売する意思がなく、別商品への誘導に利用している場合には、おとり広告に該当する可能性があります。
また、景品表示法上の問題とは別に、プラットフォーム規約違反や、購入者との契約上の責任が生じる場合もあります。事業者は、在庫確認、販売数量の設定、表示の修正、キャンセル対応及び再発防止を一体として管理することが重要です。
リーガルブレスD法律事務所のサポート内容
ECサイト、ECモールやフリマアプリに掲載した商品を供給できなかったとしても、その事実だけで直ちに景品表示法上のおとり広告に該当するわけではありません。商品を掲載した時点で在庫や仕入先を確保していたのか、表示した数量を供給できる体制があったのか、予約販売や受注生産等の条件を明瞭に表示していたのか、供給不能を把握した後に速やかに表示を停止したのかなどを、具体的な販売実態に基づいて検討する必要があります。
また、おとり広告の疑いを指摘された場合に、事実確認が不十分なまま法令違反を認めたり、購入者に対して必要以上に責任を認める回答をしたりすることは避けるべきです。一方で、問題となる商品ページや広告の停止、在庫・仕入状況の確認、販売履歴や管理画面の保存、購入者への説明・返金など、必要な初動対応は速やかに行う必要があります。
リーガルブレスD法律事務所では、EC事業者、D2C事業者、通販事業者、メーカー、卸売事業者、Webサービス事業者、広告代理店その他オンライン上で商品を販売・広告する事業者を対象に、おとり広告、無在庫販売及び在庫表示に関する法務支援を行っています。
主な対応内容は、次のとおりです。
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・商品ページ、出品画面、広告表示及び販売条件を確認し、おとり広告に該当する可能性を検討 ・在庫、仕入先、販売可能数量、予約販売・受注生産等の供給体制と表示内容の整合性を確認 ・売り切れ、終売、仕入不能判明後の表示継続、欠品・キャンセル、別商品への誘導に関する法的評価 ・フリマアプリ・ECモールの利用規約違反、契約解除、返金及び損害賠償責任の検討 ・購入者、プラットフォーム運営者、行政機関への対応及び在庫管理・表示管理体制の見直し |
おとり広告への該当性は、商品を手元に保有していたかという一点だけで判断されるものではありません。商品掲載時の取引準備、実際の供給可能数量、販売条件の表示、供給不能判明後の対応、欠品・キャンセルの発生状況、別商品への誘導の有無などを総合的に確認する必要があります。
無在庫販売、複数サイトへの同時出品、予約販売等の運用に問題がないか確認したい場合や、購入者、プラットフォーム運営者等からおとり広告又は在庫表示の不備を指摘され、対応に迷っている場合は、リーガルブレスD法律事務所までご相談ください。
ご相談に当たっては、課題の内容やご希望に応じて、「法律相談サービス」「スポットサービス」「法律顧問サービス」をご利用いただけます。
(1) 法律相談サービス
ECサイト、ECモールやフリマアプリで商品を供給できなかった場合でも、直ちにおとり広告となるわけではありません。出品時の在庫・仕入体制、販売可能数量、表示内容、供給不能判明後の対応などを確認する必要があります。
また、購入者やプラットフォーム運営者から指摘を受けた場合には、安易に法令違反を認めず、商品ページや広告の停止、関係資料及びログの保存、返金等の初動対応を進めることが重要です。
無在庫販売、同時出品、予約販売、受注生産、売り切れ後の掲載等について、法的問題や対応方針を確認したい場合には、法律相談サービスをご利用いただけます。
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ご相談内容例 |
・商品を手元に保有せず、注文後にメーカー、卸売業者又は他のECサイトから調達する販売方法について、おとり広告やプラットフォーム規約違反となる可能性を確認したい ・売り切れ、仕入不能又は在庫連携の不具合により注文をキャンセルしたところ、購入者やプラットフォーム運営者から不適切な表示を指摘されたことを踏まえ、商品ページの停止、返金、回答等の対応方針を整理したい ・複数サイトへの同時出品、予約販売、受注生産、メーカー直送等の販売方法について、商品表示、在庫管理、キャンセル対応及び社内運用に問題がないか確認したい |
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サポート内容例 |
・注文後に商品を調達する販売方法について、出品時の在庫確認、仕入先との契約関係、商品の取り置き・仕入枠、販売可能数量、欠品率等を確認し、おとり広告への該当可能性やプラットフォーム規約上の問題を整理します ・購入者やプラットフォーム運営者から指摘を受けた場合について、商品ページ、広告、在庫・仕入記録、販売履歴、キャンセル理由等を確認し、表示停止、証拠保全、返金、購入者への説明及び回答方針を整理します ・同時出品、予約販売、受注生産、メーカー直送等について、販売条件の表示、在庫連携、契約成立時期、供給不能時の処理及び規約との整合性を確認し、商品ページや利用規約、社内管理体制の見直し事項を助言します |
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相談者が得られるメリット |
・現在の販売方法がおとり広告に該当する可能性について、取引準備、供給数量、販売条件及び取引意思を踏まえて整理しやすくなる ・購入者やプラットフォーム運営者から指摘を受けた場合に、安易に法令違反や責任を認めることなく、必要な初動対応と回答方針を検討しやすくなる ・商品ページや広告を停止すべき範囲、保存すべき在庫情報、販売履歴、管理画面等の資料を把握しやすくなる ・注文後の供給不能について、契約成立の有無、返金、キャンセル処理及び損害賠償責任の問題を整理しやすくなる ・今後の販売に向けて、在庫管理、同時出品、予約販売、受注生産、メーカー直送等に関する表示・運用上の改善点を把握しやすくなる |
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弁護士費用 |
1回90分以内で15,000円(税別) |
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実施方法 |
①ご予約(お問い合わせフォーム又はお電話にて日程調整) ②事前準備(関係資料を共有いただきます) ③相談実施(オンライン又は対面) ④対応方針の提示(リスク診断、交渉方針などを具体的にご提示) ⑤アフターフォロー(ご希望内容に応じて別途契約の上、交渉代理や訴訟対応、継続支援へ移行) |
お問い合わせはこちら>>
(2) スポットサービス(法律相談以外のサービス)
おとり広告や在庫表示に関する個別案件について、商品ページ、広告、在庫記録、販売履歴、購入者・プラットフォーム運営者とのやり取りなどを確認し、具体的な対応方針や書面作成まで依頼したい場合には、スポットサービスをご利用いただけます。
法律相談サービスが、相談時間内で問題点や対応の方向性を整理するものであるのに対し、スポットサービスでは、個別資料を確認したうえで、回答書、通知書等の作成・レビューまで対応します。
例えば、スポットサービスとして、次のようなご依頼に対応しています。
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・商品ページ、出品画面、広告、在庫記録、仕入記録、販売履歴等を確認し、おとり広告への該当性及び法的リスクを整理 ・購入者、プラットフォーム運営者、取引先等から指摘や請求を受けた場合の回答方針の検討及び回答書・説明書面の作成 ・欠品、仕入不能、重複受注等に伴う契約解除、返金、損害賠償責任及び購入者対応の整理 ・プラットフォームによる商品削除、取引キャンセル、アカウント制限等に対する異議申立て・説明書面の作成又はレビュー ・無在庫販売、同時出品、メーカー直送、予約販売、受注生産等に関する商品表示、利用規約、販売条件及び在庫管理ルールの見直し |
ご依頼内容を簡単にお伺いしたうえで、確認する資料、作成する書面、対応範囲、納期及び費用を整理し、お見積書をご提示します。
おとり広告への該当性について資料に基づく具体的な検討をご希望の場合、購入者やプラットフォーム運営者への回答書作成をご希望の場合、又は商品ページ・利用規約・在庫管理ルールの個別レビューをご希望の場合は、お問い合わせください。
お問い合わせはこちら>>
(3) 法律顧問サービス(顧問弁護士サービス)のご案内
EC取引におけるおとり広告の問題を防ぐには、欠品やキャンセルが発生してから対応するだけでなく、商品掲載前の在庫確認、販売条件の表示、複数サイトの在庫管理、供給不能時の対応を継続的に確認することが重要です。
リーガルブレスD法律事務所では、EC事業者、D2C事業者、通販事業者、メーカー、卸売事業者、Webサービス事業者、広告代理店などを対象に、商品表示、無在庫販売、予約販売、在庫管理、プラットフォーム規約及び購入者対応に関する継続的な法務支援を行っています。新たな販売方法を開始する際や、日常的な商品表示・販売運用について相談できる体制を整えたい場合にご利用いただけます。
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ご依頼内容例 |
・無在庫販売、メーカー直送、予約販売、受注生産等を行うに当たり、商品ページや広告表示を継続的に確認できる体制を整えたい ・複数のECサイト、ECモール、フリマアプリ及び実店舗で商品を販売しており、在庫連携、販売可能数量、売り切れ時の表示停止等の運用を見直したい ・欠品、仕入不能、重複受注等が発生した場合に、購入者対応、プラットフォーム対応及び表示修正について継続的に相談したい |
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サポート内容例 |
・無在庫販売、メーカー直送、予約販売、受注生産等について、取引準備、供給可能数量、発送時期、入荷不能時の取扱い、キャンセル条件等を確認し、おとり広告を防止するための商品ページ・広告表示の修正方針を助言します ・複数の販売経路を利用する場合について、各サイトの販売可能数量、在庫一元管理、安全在庫、売り切れ時の販売停止、広告・商品ページの修正手順を確認し、在庫表示と実際の供給体制を整合させるための運用整備を支援します ・欠品、仕入不能、重複受注等が発生した場合について、契約成立時期、キャンセル及び返金の方法、購入者への説明、プラットフォーム規約への対応、表示停止、記録保存及び再発防止策を確認し、対応方針を助言します |
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依頼者が得られるメリット |
・商品を掲載する前に、取引準備や供給可能数量を確認し、おとり広告となるリスクを整理しやすくなる ・無在庫販売、予約販売、受注生産、メーカー直送等について、必要な表示事項や規約上の注意点を相談しやすくなる ・複数サイトや実店舗を利用する場合に、在庫連携、販売可能数量及び売り切れ時の表示停止に関する運用を整えやすくなる ・欠品やキャンセルが発生した場合に、購入者への説明、返金、商品ページ・広告の停止等の初動対応を整理しやすくなる ・商品表示、プラットフォーム規約、利用規約、在庫管理及びキャンセル対応を継続的に見直し、EC販売に関する法務管理体制を整えやすくなる |
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実施方法 |
①お問い合わせ後、オンライン面談(30分程度、無料)を実施し、ご要望事項の聞き取りやプランの説明を行います ②ご提案書(見積書)の提示 ③顧問契約の締結 ④窓口の開設(専用メール、チャットの提供) ⑤サービス開始 ・日常的な対応(契約書レビュー、相談に即応(即日~数日以内対応可)) ・ミーティング(必要に応じて経営課題、法務リスクを総点検) ・追加支援(必要に応じて交渉代理、訴訟対応、研修実施などを提供) |
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<2026年6月執筆>
※本記事は、執筆時点における一般的な法的整理を示すものであり、個別案件への適用は具体的な事情により異なります。