下請法の効果(親事業者への義務①)

質問

「下請法」が適用された場合、どういった効果(メリット、デメリット)が生じるのでしょうか。

 

回答

 

下請法は、下請事業者を保護するための法律ですので、下請事業者は様々な法的保護を受けることになります。一方、親事業者は、下請法に基づく規制がかけられます。

 

具体的には、①下請代金の支払期日を60日以内に行うこと、②下請事業者に対する書面交付義務が生じること、③親事業者は一定の行為が禁止されること、があげられます。

 

今回は、上記①②について解説し、上記③は次回以降で解説します。

 

解説

 

下請法が適用される会社規模(資本金)及び取引類型については、前回までに開設した通りです。

 

それでは、下請法が適用された場合、親事業者、下請事業者にとってどういった効果(メリット、デメリット)が生じるのでしょうか。上記のアンサーでも書いた通り、基本的には下請法は下請事業者を保護するための法律ですので、下請事業者に対しては法的保護が付与され、親事業者に対しては法的規制がかけられます。

 

まず、「①下請代金の支払期日を60日以内に行うこと」は、文字通り、支払いサイトを60日以内にしなければ下請法違反になるということです。この60日の起算点ですが、下請事業者が親事業者に納品(給付又は役務提供)した日から起算するとされています。つまり、単なる引渡し日が起算点とされており、検収完了日ではありません。

 

したがって、例えば、支払いサイトとして、「検収完了日が属する月の翌月末日」と約定していた場合、3月20日の納品、4月1日に検収完了、5月末に支払いとしてしまうと、下請法違反となってしまいます。ここは取引実務でよく間違えるところですので、注意が必要です。

 

なお、下請法が定める60日以内に下請代金を支払わなかった場合、年利14.6%の遅延損害金の支払うことが法律上明記されていますので、この点も注意が必要です。

 

次に、「②下請事業者に対する書面交付義務が生じること」ですが、イメージとしては親事業者が発注書を交付するが義務付けられていると考えればよいかと思います。

 

日本の取引現場を見ていると、往々にして口頭で受発注のやり取りがされています。

たしかに、民法及び商法の原則からすれば、口頭でも契約が成立したと法的には考えることができます。ただ、何らかの取引上のトラブルが生じた場合、口頭でのやり取りは後で確認することができませんので、いわゆる「言った言わない論争」になりがちで、どういった契約内容だったのか客観的に確認することができません(極端な場合、そもそも発注が無かった!と言ってくる場合もあります)。
 こうなると、受注側である下請事業者は、下請代金をスムーズに回収することができませんので、こういった「言った言わない論争」を防止することを目的として、親事業者は下請事業者に対して書面(発注書など)を交付することが義務づけられています。
 なお、当該書面は取引を依頼した場合、直ちに交付する義務があります。また、当該書面にどういったことを記載しなければならないかについてでは、例えば、「3条書面」というキーワードで検索をしていただければ、直ぐに確認ができるかと思います。

<現場担当者が知っておきたいポイント>

◆委託者(親事業者)側

 ⇒支払いサイトについて経理部門と情報共有し、60日以内の支払いを徹底するようにしましょう。また、書面(発注書など)については、社内で予めひな形を作成しておき直ぐに交付できる体制を整えておきましょう。

◆受託者(下請事業者)側

 ⇒下請法を根拠に、発注書の交付と支払いサイトの短縮化を交渉してみましょう。
※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。

 

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