<会社取引と金融④>手形の一部空欄・補充と手形決済

<会社取引と金融④>手形の一部空欄・補充と手形決済


 


 取引先より決済用として、他社作成の約束手形を受領しました。一部空欄があるのですが、問題ないでしょうか。また、空欄を勝手に補充しても問題ないでしょうか。 


 

 
 

ポイント

 手形の振出人が支払ってくれる場合には、空欄のままでも問題が生じることはありません。
 一方、不渡りとなった場合、空欄のまま取立てに回してしまうと裏書人への遡求権行使ができなくなる等の不都合が生じますので、万一の場合に備えて空欄を補充するのが望ましいです。
 空欄の手形の場合、通常は、振出人としても、所持人において補充しても良いという意思を保有していると考えられることから、補充しても問題は無いと考えられます(但し、微妙な問題があるためケースバイケースの判断を要します)。
 
 

解説

社長(以下「社」):取引先が、現金決済が難しいと言うことで、第三者が振り出した手形を持ってきたんだけど、大丈夫だろうか。
 
弁護士(以下「弁」):お預かりした手形を見せてもらえますか…。
フムフム…、振出日欄、受取人欄、被裏書人欄いずれも記載がないですね。
 
社:えー!! やっぱり騙されたのか!! 早急に回収に走らなければ!!!
 
弁:ま…待って下さい。これらの欄が空欄であることは実務上よくあることですよ。そして、空欄のままでも銀行等に持っていけば取立てには回してもらえますよ。
 
社:ホッ…。だったら問題ないね。
 
弁:いや、そういう訳ではないんです。変な言い方になってしまいますが、振出人がきちんと支払ってくれる場合には全く問題がありません
しかしながら、不渡りとなった場合、手形の裏書人へ追求(法律上は遡求権行使といいます)することは不可能となります。
 
社:裏書人へ追求できないとなると、手形の意味がなくなってしまうなぁ。
 
弁:そうですね。実務的にはうっかりして空欄のまま取立てに回してしまうことが多いのですが、法律上は、振出日欄や受取人欄の記載がない手形は本来無効なんです。
こういった、法律と実務慣行との矛盾が混乱に拍車をかけている事情はありますね。
 
社:そうすると、面倒でも空欄を補充してから取立てに回した方がいいということか。ところで、空欄の補充は必ず振出人等に行ってもらう必要があるのかな?
 
弁:本来的にはその様な形が望ましいと思います。ただ、一般的には、将来の手形所持人において空欄補充をしてもらって良いと振出人等は考えているのが合理的意思解釈であるとして、所持人が空欄を埋めても、原則問題になることはないと思います
 
社:ということは勝手に補充記載しても良いと言うことか。
 
弁:結論的にはそうなります。ただ、金額が空欄の場合には、さすがに上記のような合理的意思解釈という手法を用いることができませんので、この場合は振出人にきちんと記載をしてもらうか、最低でも振出人の了解を得て補充する方が良いでしょうね。
 
社:ちなみに、不渡りとなった後に補充することで裏書人に請求することはできないの?
 
弁:残念ながらアウトです。
 
社:そっか…。あともう一つ。補充に際し、書き損じが発生した場合は訂正・抹消はできるの?
 
弁:可能ですよ。逆に書き損じを放置することで、裏書が連続しない場合はそもそも手形金の支払い自体ができなくなってしまいますので、大変なことになってしまいます。
 
社:そうなんだ。最近、手形での取引が減ってきているとは聞いているけど、別に廃止されたわけではないから、きちんと手続きを覚えておかないといけないなぁ。


 


 

※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。