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スクレイピングはどこまで許されるのか 生成AIの学習データ収集も踏まえて事業者が確認したい法的ポイント

目次

スクレイピングとは何か、なぜ法的検討が必要なのか

スクレイピングとは、Webサイト上に掲載されている情報を、プログラムを用いて自動的に取得し、整理又は保存することをいいます。業務の効率化、情報収集、データ分析、生成AIの学習用データ整備など、さまざまな場面で利用が検討される手法です。

ところで、インターネット上で公開されている情報であれば自由に取得し、利用できると考えられることもありますが、実際にはそのように単純ではありません。スクレイピングの適法性は、一律に決まるものではなく、対象となる情報、取得の方法、取得先の利用条件、取得後の利用目的などによって判断が分かれます。

スクレイピングを検討する際には、例えば、次のような点を確認する必要があります。

・取得対象に著作物や個人情報が含まれていないか

・利用規約やサイトポリシーで制限が設けられていないか

・ログインを要する領域や技術的制限を伴う部分にアクセスしていないか

・取得した情報をどのような目的で利用するのか

・社内利用にとどまるのか、外部提供や生成AIの学習等に用いるのか

このように、スクレイピングは、技術的に可能かどうかだけで判断できるものではありません。事業者としては、対象、方法、目的を具体的に整理した上で、どの法的論点が問題となり得るのかを順に確認することが重要です。

著作権との関係

(1) スクレイピングで著作権が問題となる理由

スクレイピングを検討する際、まず確認が必要になるのが著作権との関係です。

インターネット上で公開されている情報であっても、文章、写真、イラスト、図表、動画などには著作権が認められることがあります。そのため、誰でも閲覧できる状態にあるという理由だけで、自由に取得し、保存し、加工し、事業に利用できるとは限りません。

スクレイピングは、単に画面上で情報を読む行為ではなく、プログラムを用いて継続的かつ大量に情報を取得し、その後の利用につなげる行為であることから、通常の閲覧よりも、著作権法上の問題が顕在化しやすいといえます。

(2) どの段階で著作権の問題が生じるのか

著作権との関係では、どの段階で著作物の利用が生じるのかを分けて整理することが重要です。例えば、Webサイト上の記事や画像を取得して自社のサーバー等に保存する行為は、複製に関わる問題を生じます。また、取得したデータを整理し、検索しやすい形に加工し、データベース化する場面では、態様に応じて複製権や翻案権の問題が生じ得ます。さらに、そのデータを社外向けサービスに用いたり、第三者に提供したりする場合には、公衆送信権、送信可能化権、譲渡権等の問題が生じ得ます。

重要なのは、スクレイピングの適法性を、取得行為だけで判断しないことです。取得後にどのような形で保存し、加工し、利用するのかまで含めて検討する必要があります。

著作権との関係で、特に整理しておきたい視点は次のとおりです。

・取得対象が著作物に当たり得るか

・保存や蓄積の段階で複製等の問題が生じないか

・加工、分類、データベース化の段階で翻案等の問題が生じないか

・社内利用にとどまるのか、外部提供まで予定しているのか

(3) 非享受目的利用という考え方

著作権法では、著作物に表現された思想又は感情を人が見たり読んだりして味わうことを目的としない利用について、一定の場合に権利制限が認められています(いわゆる非享受目的利用、著作権法30条の4参照)。情報解析のために著作物を機械的に読み込み、特徴を抽出し、統計的又は技術的な処理に用いる場面は、この非享受目的利用の典型例として位置づけられます。

したがって、スクレイピングによって取得したデータを、著作物として鑑賞するためではなく、検索、分類、分析その他の情報解析のために用いる場面では、著作権法30条の4が適用され著作権侵害の問題を回避できる余地が生じます。もっとも、非享受であるという一点だけで、直ちにすべての利用が許容されるわけではありません。利用の態様や収集対象によっては、なお慎重な検討が必要です。

(4) 非享受であっても無制限に許されるわけではないこと

非享受目的利用に当たる場合であっても、常に無条件で適法になるわけではありません。著作権法30条の4但書には、権利者の利益を不当に害することとなる場合を除くという規定が置かれており、情報解析の名目であっても、その利用態様によっては権利制限の適用対象外となり得ます。とりわけ、著作物の利用市場と衝突するような利用や、権利者の潜在的な販路を実質的に阻害するような利用については、慎重な検討が必要です。実務上は、「情報解析のためである」という説明だけで安心するのではなく、その収集方法、対象範囲、利用の広がり方まで確認することが重要です。

(5) 実務上の確認事項

スクレイピングと著作権の関係では、公開情報かどうかだけで判断しないことが重要です。実務上は、少なくとも次のような点を順に確認しておくことが有用です。

・取得対象に著作物が含まれていないか

・取得後に保存、加工、データベース化又は外部提供を予定していないか

・利用目的が閲覧ではなく、非享受目的利用に当たるのか

・その利用が権利者の利益を不当に害するおそれはないか

・外部提供や商用利用により、利用範囲が過度に広がらないか

スクレイピングは技術的には情報取得の手段ですが、著作権法上は、その後の保存、加工、分析、提供まで含めて評価されます。そのため、事業者としては、対象データの性質と利用目的を具体的に整理した上で、必要に応じて個別の法的確認を行うことが重要です。

なお、生成AIとの関係は後述しますが、その前提としても、まずは著作権法における非享受目的利用の位置づけと、その限界を押さえておくことがポイントです

個人情報保護法との関係

(1) 公開情報であっても、個人情報に当たり得ること

スクレイピングの対象に人に関する情報が含まれる場合には、個人情報保護法との関係を検討する必要があります。

インターネット上で公開されている情報であっても、生存する個人に関する情報であり、特定の個人を識別できるものであれば、個人情報に当たり得ます。そのため、公開されているという一点だけで、自由に収集し、整理し、事業利用できると考えるのは適切ではありません。特に、氏名、顔写真、所属、連絡先、プロフィール、投稿内容などは、単独で又は他の情報と容易に照合することにより、個人情報に該当することがあります。

(2) 問題となるのは取得時だけではないこと

個人情報保護法との関係では、情報を取得する場面だけでなく、その後にどのように整理し、検索可能化し、利用し、提供するかも重要です。例えば、Web上に散在しているプロフィール情報や連絡先をスクレイピングによって集め、それを検索できる形に整理すれば、単なる閲覧とは異なる法的評価を受けます。すなわち、公開情報を収集して新たなデータベースを作成し、不特定多数が閲覧できる状態に置く行為については、個人情報データベース等の取扱いとして検討が必要になります。

したがって、スクレイピングでは、取得対象だけでなく、取得後のデータの構成、利用目的、提供先まで含めて整理することが重要です。

(3) 利用目的の整理が重要であること

個人情報を取り扱う場合には、何のために取得し、どの範囲で利用するのかを整理することが重要です。

スクレイピングでは、技術的に取得できる情報を広く集めた結果、収集された側の個人にとって当初想定していなかった用途に流用されるおそれがあります。しかし、個人情報の取扱いは、収集してから使い道を考えるという順序ではなく、利用目的を見据えて必要な範囲を検討することが基本です。特に、営業リスト化、人物検索サービス化、行動分析、属性分析など、人に関する情報を事業に組み込む場面では、情報の性質に応じた慎重な検討が求められます。

(4) 要配慮個人情報を含む場合は特に慎重な対応が必要であること

スクレイピングの対象に、病歴、障害、健康状態、人種、信条、犯罪の経歴など、要配慮個人情報に該当し得る情報が含まれる場合には、特に注意が必要です。要配慮個人情報の取得には、原則として本人同意等が必要であり、通常の個人情報よりも慎重な取扱いが求められます。また、要配慮個人情報については、オプトアウトによる第三者提供も認められていません。

公開情報の中には、本人が自ら発信している情報や、第三者が掲載している情報が含まれることがありますが、そのことから直ちに自由な収集や再利用が許されるわけではありません。特に、顔画像等の個人情報、医療・健康情報、思想信条に関わる投稿等の要配慮個人情報又は機微性の高い情報等を機械的に大量取得する場面では、法的リスクが高まりやすいため、対象の選別と取得の必要性を慎重に見極める必要があります。

(5) 実務上の整理

スクレイピングと個人情報保護法の関係では、公開情報かどうかだけで判断しないことが重要です。実務上は、少なくとも次の順序で整理すると検討しやすくなります。

・取得対象が個人情報に当たるか

・要配慮個人情報が含まれていないか

・取得後に検索可能なデータベース化を予定していないか

・利用目的が本人(個人情報を収集された側)にとって予測しにくい内容になっていないか

・第三者提供や外部公開を予定していないか

・社内管理、削除対応、保存期間のルールを定めているか

 

このように、スクレイピングと個人情報保護法の関係は、単に取得時点の問題にとどまりません。取得した情報をどのように整理し、どのような目的で使い、どこまで外部に広げるのかによって、検討すべき内容は大きく変わります。事業者としては、対象情報の性質と利用目的を具体的に整理した上で、必要に応じて個別の法的確認を行うことが重要です。

利用規約・サイトポリシーとの関係

(1) 法令だけでなく、利用条件の確認も必要であること

スクレイピングを検討する際には、著作権法や個人情報保護法といった法令だけでなく、対象となるWebサイトの利用規約やサイトポリシーも確認する必要があります。

公開されているページであっても、サイト運営者が利用条件を定め、自動取得、転載、再利用、商用利用等を制限していることがあります。そのため、技術的に取得できるからといって、その方法や利用が当然に許容されるとは限りません。特に、事業として継続的に情報を収集し、分析し、サービスに組み込もうとする場合には、法令上の整理とは別に、相手方が示している利用条件との関係を検討することが重要です。

(2) 利用規約違反は実務上の紛争原因になり得ること

利用規約やサイトポリシーに反する形でスクレイピングを行った場合、直ちにすべてが法令違反になるとは限りませんが、少なくとも実務上の紛争原因にはなり得ます。例えば、アカウント停止、アクセス遮断、警告、削除要請、損害賠償請求等に発展する可能性があります。特に、会員登録やログインを前提にサービスを利用している場合には、利用者が規約に同意していることが通常であり、その条件に反する行為は契約上の問題として整理されます。

また、明示的に自動取得を禁止しているサイトから継続的に大量取得を行えば、相手方との関係悪化や取引停止といった事業上の不利益も生じ得ます。

したがって、スクレイピングの可否を検討する際には、法令違反かどうかだけでなく、利用条件違反による実務上のリスクも視野に入れる必要があります。

確認しておきたい点としては、例えば次のようなものがあります。

・自動取得、クローリング、スクレイピングを明示的に禁止していないか

・取得した情報の転載、再配布、商用利用を制限していないか

・会員向けページやログイン後ページの利用条件に特別な制約がないか

APIの利用を前提とする設計であり、画面からの自動取得を許容していないのではないか

・違反時の措置として、利用停止や損害賠償に関する定めが置かれていないか

(3) APIが用意されている場合には、その利用を優先的に検討すべきこと

対象サイトがAPIを提供している場合には、まずそのAPIの利用を検討することが重要です。APIは、提供者が想定する範囲でデータを取得するための手段であり、取得可能な項目、頻度、認証方法、利用条件等があらかじめ定められていることが多いため、実務上の予見可能性が高いといえます。これに対し、画面表示用のHTMLを直接解析して情報を取得する方法は、表示変更に弱く、サイト運営者の想定外の負荷を与えることもあります。そのため、同じ情報がAPIで提供されているにもかかわらず、あえて画面から大量取得する必要があるのかは、慎重に検討するべきです。

(4) robots.txtやサイト上の技術的な意思表示をどう考えるか

スクレイピングの可否を検討する際には、利用規約だけでなく、robots.txtその他の技術的な意思表示も確認しておくことが有用です。robots.txt自体が直ちに法的な結論を決めるものではありませんが、少なくともサイト運営者がどの範囲のクローリングを予定し、どの範囲を制限したいと考えているかを示す資料にはなり得ます。

したがって、robots.txtやアクセス頻度制限、User-Agentに関する条件等が示されている場合には、それを無視してよいと安易に考えるべきではありません。少なくとも、相手方の意思に反する取得であることを基礎づける事情として評価される可能性があります。

(5) 実務上の整理

利用規約・サイトポリシーとの関係では、公開ページであることだけを理由に判断しないことが重要です。実務上は、次のような順序で整理すると検討しやすくなります。

・対象サイトの利用規約、ポリシー、注意表示を確認する

・自動取得や再利用に関する明示的な制限がないか確認する

APIが提供されている場合には、その利用条件を確認する

robots.txtやアクセス制御に反する取得方法になっていないか確認する

・取得の頻度、範囲、利用目的が相手方の想定を大きく外れていないか検討する

このように、利用規約・サイトポリシーとの関係は、法令とは別の層でスクレイピングの可否に影響する重要な論点です。事業者としては、技術的に取得可能かどうかだけで進めるのではなく、相手方がどのような条件で情報提供をしているのかを確認し、その条件に適合した手段を選ぶことが重要です。特に、APIが用意されている場合にこれを無視して画面から大量取得を行うことや、明示的な制限を看過して継続的な収集を行うことは、法的にも実務的にもリスクを高めやすいといえます。

不正アクセス・技術的制限回避の問題

(1) 公開ページの取得と、制限を超える取得は分けて考える必要があること

スクレイピングを検討する際には、公開されているページの情報を取得する場面と、ログインが必要な領域や技術的制限が設けられた部分にアクセスする場面とを区別して考える必要があります。前者は、著作権や個人情報、利用規約との関係が主たる検討対象になりやすいのに対し、後者は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律との関係が問題となり得ます。不正アクセス禁止法は、アクセス制御機能を備えたコンピュータについて、本来権限のない者が利用する行為などを禁止する法律であり、技術的制限を越える取得は、単なる情報収集とは異なる次元の問題を含みます。

(2) 問題となりやすいのは、認証や制限を回避する場面であること

実務上、特に注意が必要なのは、ID・パスワードを用いてログインすべき領域に無権限で入る場合や、本来予定されていない方法でアクセス制御を回避する場合です。そのため、会員限定ページ、管理画面、契約者向けページなどについて、正規の権限なく情報を取得することは、法的リスクが高いといえます。スクレイピングの名目であっても、アクセス管理者が予定していない方法で認証を突破したり、認証情報を不正に用いたりする場合には、通常の情報取得とは区別して検討しなければなりません。

確認しておきたい点としては、例えば次のようなものがあります。

・ログインが必要な領域に対して取得を行っていないか

・他人のID・パスワードその他の識別符号を利用していないか

・想定されていないURL指定、脆弱性利用、設定不備の悪用をしていないか

・アクセス回数制限、認証制限その他の技術的制限を意図的に回避していないか

・権限の範囲を超えて情報を取得していないか

(3) 他人の識別符号の取得や保管も問題になり得ること

不正アクセス禁止法は、実際に不正アクセスを行う場面だけでなく、その前段階となる行為についても規制を設けています。そのため、スクレイピングの準備段階であっても、認証情報を不適切に入手し、保持し、又は第三者から受け取るような運用は避ける必要があります。特に、委託先や業務担当者の間でログイン情報を安易に共有する運用は、権限管理の不備とあわせて大きな問題に発展し得ます。

(4) 技術的に閲覧できることと、適法に取得できることは別であること

実務では、設定不備やURLの推測により、通常は見えない情報に到達できてしまう場合があります。しかし、そのような状態にあるからといって、自由に取得してよいとは限りません。アクセス管理者が権限の範囲を区切って管理している領域について、その想定を外れる方法で利用することは、不正アクセス禁止法との関係を慎重に検討すべき場面です。

したがって、「技術的に見えた」「特別なツールを使わなくても到達できた」という事情だけで安全と判断するのは適切ではありません。公開ページの情報取得と、権限外の領域への到達は、明確に分けて考える必要があります。

(5) 実務上の整理

不正アクセス・技術的制限回避の問題では、対象サイトにアクセス制御機能があるか、取得行為が権限の範囲内かを最初に確認することが重要です。実務上は、少なくとも次の順序で整理しておくと検討しやすくなります。

・対象ページが公開領域か、認証が必要な領域かを確認する

・取得にログイン情報や識別符号を用いる必要がないかを確認する

・権限外のページやデータに到達する方法になっていないかを確認する

・技術的制限やアクセス制御を回避する設計になっていないかを確認する

・正規のAPIや正式な提供手段がある場合には、それを優先できないか検討する

このように、スクレイピングの検討においては、著作権や個人情報だけでなく、アクセスの前提となる権限や制御の有無も重要です。公開情報を取得する場面と異なり、認証の突破や制限の回避を伴う場合には、不正アクセス禁止法上その他の法的問題に発展する可能性があります。

事業者としては、取得対象だけでなく、そこに到達する手段が正規の権限の範囲内にあるかを丁寧に確認し、疑義がある場合には実施前に法的・技術的な確認を行うことが重要です。

生成AIの学習モデル作成で特に注意すべき事項

(1) 生成AIの学習モデル作成では、複数の論点を横断的に整理する必要があること

生成AIの学習モデルを作成する場面では、単にデータを集めれば足りるわけではありません。学習用データの収集段階から、著作権、個人情報、利用規約、アクセス方法、データ管理、出力結果まで、複数の論点を横断的に整理する必要があります。特に、スクレイピングを用いて大量のデータを収集する場合には、取得対象が適切か、取得方法に問題がないか、収集後の学習や提供の過程で法的リスクが拡大しないかを、段階ごとに確認することが重要です。

(2) 学習用データの出所を把握し、記録しておくこと

生成AIの学習モデル作成では、どこから、どのような条件でデータを取得したのかを把握しておくことが重要です。学習精度の観点だけでなく、後に権利主張や削除要請があった場合に、対象データの由来や利用根拠を説明できなければ、法的整理が困難になります。特に、複数のサイトからデータを収集し、再加工し、統合して学習に用いる場合には、元データの出所が追えなくなるおそれがあります。

そのため、学習用データについては、収集元、収集時期、利用条件、加工の有無等を記録し、必要に応じて追跡できる状態を整えておくことが望まれます。

確認しておきたい点としては、例えば次のようなものがあります。

・学習用データの収集元を把握しているか

・著作権、個人情報、利用規約の観点から問題がないか確認しているか

・要配慮個人情報や機密情報が混入していないか

・取得後の加工や統合の履歴を記録しているか

・削除要請や権利主張があった場合の対応方法を決めているか

(3) 非享受目的利用であっても、無制限ではないこと

著作権との関係では、AI学習は一般に非享受目的利用の典型例として整理されますが、そのことから直ちにすべてのデータ収集や学習が許容されるわけではありません。権利者の利益を不当に害する場合には、著作権法30条の4の適用対象外となり得ます。

また、学習段階であれば著作権法30条の4の適用が考えられるとしても、出力段階では適用がありません。そのため、生成物を表示し、提供し、又は公表する行為については、既存の著作物との類似性や依拠性などに応じて、別途、著作権侵害の成否が問題となり得ます。

したがって、モデル作成時には、学習段階については30条の4の適用可能性を確認しつつ、出力段階については同条による処理が及ばないことを前提に、生成物の傾向や利用方法まで見据えて検討することが重要です。

(4) データの質と社内管理体制も重要であること

生成AIの学習モデル作成では、法令適合性だけでなく、データの質と管理体制も重要です。偏りのあるデータ、誤情報を含むデータ、権利処理が曖昧なデータをそのまま学習に用いれば、後の出力品質や法的リスクに影響します。そのため、収集したデータを無差別に投入するのではなく、選別、除外、匿名化、アクセス制御、保存期間の設定などを含めた運用体制を整えることが必要です。

学習モデル作成は技術開発の問題であると同時に、データガバナンスの問題でもあるという視点が重要です。

(5) 小括

以上の通り、生成AIの学習モデル作成では、収集対象、取得方法、利用目的、出力結果までを一連の流れとして整理することが重要です。事業者としては、精度向上だけを優先するのではなく、学習用データの出所管理、権利・個人情報の確認、社内管理体制の整備をあわせて進めることをお勧めします。

よくある誤解について

スクレイピングについては、実務上、いくつかの典型的な誤解が見られます。もっとも多いのは、「インターネット上で公開されている情報であれば、自由に取得し、利用してよい」という理解です。しかし、公開情報であっても、著作権が認められる場合がありますし、個人情報が含まれていれば個人情報保護法との関係も問題となります。また、利用規約やサイトポリシーにより、自動取得や再利用が制限されている場合もあります。

次に、「商用利用でなければ問題にならない」という理解も見られますが、これも適切ではありません。営利目的であるかどうかは一つの事情にはなり得ますが、それだけで適法性が決まるわけではありません。取得対象、取得方法、利用目的、取得後の利用態様を総合的に見て検討する必要があります。

さらに、「生成AIの学習に使うのであれば自由に収集できる」という理解にも注意が必要です。生成AIの学習は、著作権法上、非享受目的利用として整理される場面がありますが、そのことから直ちにすべての収集や利用が許容されるわけではありません。権利者の利益を不当に害する場合や、個人情報を不適切に取り扱う場合には、別途の問題が生じ得ます。

よくある誤解を整理すると、例えば次のとおりです。

・公開情報であれば自由に取得・利用できる

・商用利用でなければ問題はない

・生成AIの学習目的であれば一律に許される

・技術的に取得できれば法的にも問題はない

・利用規約は法令ではないので気にしなくてよい

スクレイピングを検討する際には、このような単純な理解に依拠するのではなく、対象、方法、目的、利用条件を個別に整理した上で、必要な法的検討を行うことが重要です。

事業者が確認したい実務上のチェックポイント

スクレイピングを検討する際には、個別の法的論点を理解するだけでなく、実務上どの点を確認すべきかを整理しておくことが重要です。実際には、取得対象、取得方法、利用目的、社内管理のいずれかが曖昧なまま進められ、その結果として、後から法的又は運用上の問題が顕在化することがあります。

そのため、実施前の段階で確認項目を明確にし、必要に応じて関係部署間で共有しておくことが望まれます。特に、次のような点は、事前に確認しておきたい事項です。

・取得対象に著作物、個人情報、要配慮個人情報、機密情報が含まれていないか

・利用規約、サイトポリシー、robots.txtAPI利用条件等に反しないか

・ログインが必要な領域が含まれていないか、または技術的制限を回避する方法になっていないか

・取得した情報を何の目的で利用するのか明確になっているか

・社内利用にとどめるのか、外部提供、公開、学習用データ化まで予定しているのか

・保存期間、アクセス権限、削除対応等の管理方法が定まっているか

また、スクレイピングは、一度実施して終わるものではなく、継続的に運用されることも少なくありません。そのため、開始時の確認だけでなく、取得対象の見直し、利用条件の変更確認、取得頻度や範囲の適正化、苦情や権利主張への対応フローの整備も重要です。

さらに、委託先に収集や分析を任せる場合には、自社としても対象、方法、管理体制を把握しておく必要があります。

以上の通り、スクレイピングの実務対応では、法的な可否を抽象的に検討するだけでは足りません。対象、方法、目的、管理体制を具体的に整理し、事前に確認項目を設けた上で運用することが、法的リスクと実務上の混乱の双方を抑える上で重要です。

弁護士によるスクレイピング問題対応サービス

(1) スクレイピング問題を弁護士に相談・依頼するメリット

スクレイピングは、技術的に実施できるかどうかだけでなく、取得対象、取得方法、利用目的、社内管理の在り方によって法的評価が分かれます。しかも、問題となり得る論点は、著作権、個人情報保護法、利用規約、不正アクセス禁止法、生成AIの学習用データ管理など、多岐にわたります。

そのため、事業者だけで判断しようとすると、一部の論点を見落としたまま進めてしまうことがあります。弁護士に相談・依頼することにより、想定しているスキームを法的観点から整理し、実施前にリスクを把握しやすくなります。また、問題が生じた場合にも、初動を誤らず、事実関係と法的主張を整理した上で対応しやすくなります。

【弁護士に相談・依頼するメリット】

①法的リスクを論点ごとに整理できる

スクレイピングでは、著作権だけを確認すれば足りるわけではなく、個人情報、利用規約、アクセス権限、データの利用方法などを横断的に検討する必要があります。

弁護士に相談することにより、どの論点が中心的な問題になるのかを整理し、どの部分に優先して対応すべきかを明確にしやすくなります。

実施前の運用設計を整えやすくなる

スクレイピングは、開始後に問題が見つかると、収集停止、データ削除、運用変更などの負担が大きくなりやすい分野です。

事前に弁護士が関与することで、取得対象、利用目的、保存期間、委託先管理、外部提供の有無などを整理し、無理のない運用設計を進めやすくなります。結果として、法的リスクだけでなく、実務上の混乱も抑えやすくなります。

問題発生時の対応を速やかに進めやすくなる

スクレイピングをめぐっては、削除要請、警告、アカウント停止、権利主張、苦情対応などが生じることがあります。このような場面では、感覚的に対応するのではなく、取得経緯、利用目的、対象データの内容、法的根拠を整理して対応することが重要です。

弁護士が関与していれば、事実関係の整理、相手方への回答方針の検討、今後の運用見直しまで含めて、落ち着いて対応しやすくなります。

(2) 法律相談サービス

リーガルブレスD法律事務所では、これまでにお取引のない事業者様からのご相談を積極的に受け入れています。

早めのご相談であればあるほど、ダメージの少ない解決策をご提案することが可能です。

 

ご相談内容例

・自社で予定しているスクレイピングの方法に法的な問題がないか確認したい

・取得したデータを生成AIの学習用データとして利用できるか整理したい

・利用規約違反や権利侵害を指摘された場合の対応方針を相談したい

サポート内容例

・スクレイピングの対象、取得方法、利用目的を確認し、著作権、個人情報保護法、利用規約、不正アクセス禁止法等の観点から主要な法的論点を整理します

・学習用データの内容、取得経路、利用方法を確認し、生成AIの学習モデル作成に関して注意すべき法的ポイントを整理します

・相手方からの指摘内容や現在の運用状況を確認し、想定される法的リスク、初動対応の方向性、今後の見直し事項を整理します

相談者が得られるメリット

・自社のスクレイピング計画について、どの法的論点を優先して確認すべきかを把握することができる

・生成AIの学習用データ利用を含め、現時点で見直すべき点と継続可能な点を整理することができる

・問題が生じた場合にも、初動対応の方向性や今後の対応課題を明確にすることができる

弁護士費用

190分以内で15,000円(税別)

実施方法

①ご予約(お問い合わせフォーム又はお電話にて日程調整)

②事前準備(関係資料を共有いただきます)

③相談実施(オンライン又は対面)

④解決策提示(リスク診断、交渉方針などを具体的にご提示)

⑤アフターフォロー(ご希望内容に応じて別途契約の上、交渉代理や訴訟対応、継続支援へ移行)

 

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(3) その他サービス(法律相談以外のサービス)

リーガルブレスD法律事務所では、法律相談サービス以外にも様々なサービスをご提供しています。

ここではご提供可能なサービスの一例として、生成AI学習データ点検サービスをご案内します。 

【生成AI学習データ点検サービス】

ご依頼内容例

・生成AIの学習用データとして予定している収集対象に法的な問題がないか確認したい

・スクレイピングにより収集したデータを学習用データとして利用できるか整理したい

・学習用データの管理方法や社内運用体制に見直すべき点がないか点検したい

サポート内容例

・学習用データの収集対象、取得方法、利用目的を確認し、著作権、個人情報保護法、利用規約、不正アクセス禁止法等の観点から主要な法的論点を整理します

・スクレイピングにより取得したデータの内容、取得経路、利用態様を確認し、学習用データとして利用する際に注意すべき法的リスクと見直し事項を整理します

・学習用データの保存、アクセス権限、削除対応、委託先管理等の運用状況を確認し、社内管理体制や運用ルールの改善点を整理します

依頼者が得られるメリット

・学習用データとして予定している対象について、どの法的論点を優先して確認すべきかを把握することができる

・スクレイピングにより取得したデータを学習用データとして利用する場合のリスクと見直し点を整理することができる

・学習用データの管理方法や社内運用体制について、改善すべきポイントを明確にすることができる

弁護士費用

10万円(税別)~

 

(※)確認対象となるデータ・Webサイト・資料の量、スクレイピングや学習モデル作成の仕組みの複雑さ、個人情報や著作物を含むか、外部提供・委託・共同利用等を予定しているかどうか、レポートや意見書作成まで含むかどうか等により変動します。事前にお見積りをご提示します

実施方法

①オンラインヒアリング(30分程度、無料)を実施し、課題の抽出とご要望事項を確認します

②実施計画案とお見積りを提示します

③ご依頼者様にて検証して頂き、ご要望を踏まえて実施計画を確定させます

④実施計画に沿って、順次作業を進めていきます

 

お問い合わせはこちら

(4) 法律顧問プラン(顧問弁護士サービス)のご案内

スクレイピングや生成AIの活用は、一度だけ法的確認をすれば足りるものではなく、取得対象、利用方法、社内運用、外部提供の有無などに応じて、継続的な検討が必要になる場面があります。新たなデータ取得手法を導入する場合や、既存の運用を変更する場合には、その都度、著作権、個人情報保護法、利用規約、不正アクセス禁止法等の観点から確認することが重要です。

法律顧問サービスを利用することにより、事業の進行に応じて継続的に法的助言を受け、問題の予防と早期対応につなげやすくなります。

ご依頼内容例

・スクレイピングや生成AIの活用を継続的に進めるに当たり、都度法的な確認を受けたい

・新たなデータ取得スキームや外部提供サービスを開始する際に、事前にリスクを点検したい

・利用規約違反、権利侵害、削除要請等の問題が生じた場合に、継続的に相談しながら対応したい

サポート内容例

・スクレイピング、データ利用、生成AI活用に関する日常的な相談を受け、著作権、個人情報保護法、利用規約、不正アクセス禁止法等の観点から法的論点を整理します

・新たな業務フロー、データ収集方法、サービス設計について、開始前に法的リスクを確認し、必要に応じて運用上の見直し点を整理します

・権利者、取引先、プラットフォーム運営者等から指摘を受けた場合に、事実関係を整理し、回答方針、再発防止策、今後の運用改善を継続的に検討します

依頼者が得られるメリット

・スクレイピングや生成AI活用に関する法的論点について、必要なタイミングで継続的に確認することができる

・新規施策や運用変更を行う際に、実施前の段階で法的リスクを把握し、対応方針を整理することができる

・問題が生じた場合にも、都度の状況に応じた助言を受けながら、初動対応から再発防止まで一貫して進めることができる

実施方法

①お問い合わせ後、オンライン面談(30分程度、無料)を実施し、ご要望事項の聞き取りやプランの説明を行います

②ご提案書(見積書)の提示

③顧問契約の締結

④窓口の開設(専用メール、チャットの提供)

⑤サービス開始

・日常的な対応(契約書レビュー、相談に即応(即日~数日以内対応可))

・ミーティング(必要に応じて経営課題、法務リスクを総点検)

・追加支援(必要に応じて交渉代理、訴訟対応、研修実施などを提供)

 

お問い合わせ

 

20264月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

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