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パッケージ開発の紛争予防~F&Gから検収・保守まで、契約書に落とす要点

なぜパッケージ開発は揉めやすいのか(成果の内容の不一致とF&Gの未固定)

パッケージ開発が紛争化しやすい主因は、当事者間で「成果の内容」を一致させにくい点にあります。

スクラッチ開発では、仕様として「何を作るか」を定め、その仕様どおりかを基準に確認できます。一方、パッケージ開発では、既存の標準機能を前提に導入するため、ユーザーが期待する業務の実現方法が「標準で満たせるのか」「設定や運用で代替するのか」「追加開発が必要か」といった形で分岐します。この分岐が契約前後で十分に整理されないまま進行すると、後日、追加費用・納期・未対応範囲をめぐる対立が生じやすくなります。

また、パッケージ開発では、同じ要望でも実現手段が複数あり、どの手段を採用するかで作業範囲と責任分担が変わります。ところが、提案書・見積書・要件整理資料が抽象的なままの場合、ユーザーは「標準でできる」と理解するのに対し、ベンダーは「追加対応」と理解するなど、認識差が生じます。さらに、標準機能で満たせる点と満たせない点(追加対応が必要な点)を整理するフィット&ギャップ(F&G)が作成されていても、その結果が仕様・受入基準・変更判断の基準点として位置付けられていない場合、検収や稼働後の不具合対応の局面で争点が再燃しやすくなります。

本記事では、こうした「成果の内容が一致しにくい」という構造を前提に、ベンダー側が紛争予防のために整備すべき事項を、(1)契約前資料と合意形成、(2)スコープと変更管理、(3)カスタマイズ/アドオンの境界と成果物、(4)検収・受入・データ移行、(5)稼働後の不具合対応と保守運用の順に整理します。

ベンダーが押さえるべき紛争予防の5論点(契約書に落とすポイント) 

(1) 契約前資料(提案書・見積・F&G)による合意の固定

パッケージ開発の紛争は、開発中ではなく契約前の提案書・見積書・要件整理の不備が大きな要因です。

【具体例】

パッケージ開発では、契約前の資料作成段階で、次のような状況が生じやすくなります。

・提案書に「標準機能で対応可能」と記載したが、実際には追加開発または運用変更が必要であった。

・見積書に作業内訳や前提条件が十分に記載されておらず、ユーザー側のデータ整備遅延や意思決定遅延が発生しても、追加費用や納期延長の根拠を示しにくかった。

・要件整理が未了のままプロジェクトが進行し、後から「当初の想定に含まれていた」と主張される要望が増え、費用・納期・対応範囲をめぐる対立が生じた。

 

なお、これらの認識差を減らすために、パッケージ開発では、標準機能で満たせる点と、満たせない点(追加対応が必要な点)を整理する「フィット&ギャップ(F&G)」が用いられることが多くあります。F&Gの整理結果が曖昧なまま進行すると、後日「標準でできるはずだった」「追加対応のはずだった」という対立が生じやすくなります。

【トラブルが発生する理由】

大きくは3つ考えられます。

1つ目として、契約前資料が「何を約束したのか」を後日説明できる状態になっていないことです。提案書や見積書が抽象的で、対象範囲や前提条件、未確定事項が整理されていない場合、当事者は同じ資料を見ても異なる理解に到達します。結果として、開発が進んだ段階で追加費用や納期調整が必要になっても、合意の出発点が曖昧であるため、交渉が対立に転じやすくなります。

2つ目として、「標準機能・設定・運用・追加開発」の切り分けが不十分なまま進むことです。パッケージ開発では、要望に対する実現手段が複数あり、どれを採用するかで費用と期間が変動します。しかし、契約前の整理が不十分だと、ユーザーは「標準でできる」と理解し、ベンダーは「追加対応」と理解するなど、認識差が生じます。

最後に3つ目として、要件が確定していない状態で進行する場面を管理できていないことです。要件の未確定事項が一覧化されず、確定手続や変更時の取扱いが合意されていない場合、後から追加要望が発生しても「変更」なのか「当初に含まれるのか」が不明確になり、費用・期間の見直しが争点化します。

【対策】

対策の要点は、契約前資料を「合意内容を固定する道具」として整備し、未確定事項を含めて管理可能な状態にすることです。

①提案書で範囲と実現手段を明確化する

パッケージ開発では、提案書や要件整理の段階で、標準機能で対応できる点と追加対応が必要な点を整理するフィット&ギャップ(F&G)を作成し、その結果を合意内容として残すことが重要です。そして、標準機能で実現できる事項、設定で対応する事項、運用で代替する事項、追加開発が必要な事項を分けて記載します。追加開発が必要な場合は「別途見積」で止めず、未確定部分(前提・条件・追加で確認すべき事項)と、何が確定すれば金額・期間が明確になるかを示します。

②見積書に内訳・前提・協力事項を明記する

作業内容の内訳、前提条件、ユーザー側の協力事項(担当者の配置、資料提供、データ整備、意思決定期限等)を明確にし、前提が崩れた場合に費用・期間を見直し得ることを整理します。特に、データ移行、権限設計、帳票、外部連携などの「見えにくい作業」は、対象範囲と条件を明記し、見積対象に含めるか否かを明確にします。

③未確定事項を一覧化し、確定手続と変更時の取扱いを合意する

要件を契約前に確定できない場合でも、未確定事項の一覧、確定までの手順、確定後に変更が生じた場合の扱い(費用・期間の再協議、優先順位付け)を合意します。会議記録や確認メールも、単なる連絡ではなく、合意内容が追跡できる形で整備し、誰が何を決め、どこが保留かを明確に残します。

【契約書に反映させるべき事項】

・提案書・見積書・要件整理資料等の位置付け(どれを合意内容として扱うか、相互の優先順位)

・フィット&ギャップ(F&G)の位置付け(標準で満たせる点/満たせない点=追加対応が必要な点の整理結果を、合意内容として残すこと)

・「標準機能/設定/運用/追加開発」の切り分け(どの手段で実現するかの採用方針の明示)

・前提条件の明記(利用環境、既存データの状況、関係システム、意思決定体制など)

・ユーザー側の協力事項と期限(担当者配置、資料提供、データ整備、回答期限、決裁期限)

・未確定事項の一覧化と確定手続(未確定事項、確定までの手順、確定期限、確定の判断者)

・「別途見積」となる範囲と条件(何が確定すれば金額・期間が明確になるか、確定前に含めない事項)

・会議記録・確認メール等の扱い(合意内容が追跡できる形で残すこと、保管・共有のルール)

(2) スコープと変更管理(実施水準・対象外・承認手続)の設計

追加費用と納期延長を「当然の手続」にする鍵は、スコープを実施水準と対象外まで固定し、変更管理を運用できる手順に落とすことです。

【具体例】

パッケージ開発では、スコープ(実施範囲)と変更管理が十分に整理されない場合、次のような状況が生じやすくなります。

  • 対象機能の一覧は合意していたが、同時利用人数、処理時間の目安、対応ブラウザ等の「実施水準」が明示されておらず、稼働直前に性能改善や対応範囲の追加が求められた。
  • 外部サービス連携について「連携する」とのみ記載され、連携方式、対象データ、例外処理、第三者サービス側の制約が整理されていないため、追加の実装・調整が必要となり、費用・納期の再協議が争点化した。
  • 変更管理が「追加費用は協議する」といった抽象的な定めにとどまり、承認前に現場判断で追加対応が進んだ結果、後日「誰が、いつ、何を追加として認めたか」を説明できず、精算段階で対立が深まった。

 

特に、実施水準(性能・運用条件)、外部連携の仕様、変更管理の手続は、提案時点で曖昧になりやすく、認識差が紛争に直結しやすい領域です。

【トラブルが発生する理由】

大きくは3つ考えられます。

1つ目は、スコープ(実施範囲)が「機能」中心で記載され、対象外や実施水準が十分に固定されないことです。パッケージ開発では、同じ機能でも品質・性能・運用条件によって必要工数が大きく変わりますが、これが明示されないと、ユーザー側は当然に含まれると理解するのに対し、ベンダー側は追加作業と理解するという認識差が生じます。

2つ目は、変更管理が「協議する」という抽象的な定めにとどまり、手続として機能しないことです。現場では要望や追加作業が発生しやすく、承認前に作業が先行すると、後日の精算局面で「誰が、いつ、何を追加として認めたか」を説明できず、対立が深まります。

最後に3つ目は、「不具合対応」と「追加要望」の区別が不明確なことです。区別の基準がない場合、たとえベンダーは仕様外の要望と捉えていたとしても、ユーザーは期待に沿わない動作を不具合と捉えるため、無償対応の範囲が拡大しやすくなります。加えて、ユーザー側の協力遅延(要件確定、承認、データ整備)が工程に与える影響を契約上整理していない場合、遅延責任や納期変更の合理性を示しにくくなります。

【対策】

対策の中心は、スコープを具体化し、変更を合意手続として管理できる状態にすることです。

①スコープを「実施すること/実施しないこと/実施水準」でセット化する

スコープを固定するうえでは、標準機能で満たせる点と、追加対応が必要な点を整理するフィット&ギャップ(F&G)の結果を、実施範囲の根拠として位置付けることが有効です。そして、対象機能の一覧に加え、対象外事項(標準機能では対応しない点、外部連携の範囲外、過去データ移行の保証範囲外等)を明示します。また、品質・性能・運用条件(同時利用人数、処理時間の目安、対応環境、バックアップ、運用手順の前提等)を整理し、期待値の拡張を防ぎます。

②変更管理を「流れ」と「記録」に落とす

変更の申請方法(書式・記載事項・窓口)、影響評価(費用・期間・品質への影響、代替案)、見積提示と承認(決裁者と回答期限)、承認前は着手しない原則、緊急対応時の例外処理を明文化します。これにより、追加作業が発生しても、追加として承認された事実を後から追跡できます。

また、変更の判断においては、当初のF&Gで「標準で満たせる」と整理した範囲と、「追加対応が必要」と整理した範囲を基準点として参照できる状態にしておくと、追加費用や納期延長を説明しやすくなります。

③不具合と追加要望の線引きを定める

受入基準や仕様の根拠文書を明確にし、標準機能の範囲、運用で代替する前提事項、推奨環境や他システム起因の扱いを整理します。区別基準があることで、不具合対応の無制限な拡張を抑制できます。

④ユーザー協力の遅延を変更管理と連動させる

協力事項(要件確定、承認、データ整備等)と期限を定め、遅延が発生した場合に納期が連動して延びること、追加費用が発生し得ることを資料と契約の両面で整備します。

【契約書に反映させるべき事項】

・スコープの確定方法(対象機能だけでなく、対象外事項と実施水準まで含めて固定すること)

・実施水準(性能・運用条件)の明記(同時利用人数、処理時間の目安、対応環境、運用上の前提など)

・外部サービス連携の整理(連携方式、対象データ、例外処理、第三者サービス側の制約、連携範囲外の明示)

F&Gの位置付け(「標準で満たせる点」「追加対応が必要な点」を、スコープと変更判断の基準とすること)

・変更の申請方法(窓口、書式、必須記載事項、申請のタイミング)

・影響評価の手順(費用・期間・品質への影響、代替案の提示、見積提示の方法)

・承認のルール(決裁者、回答期限、承認前は着手しない原則)

・緊急対応の例外処理(暫定対応の範囲、事後の承認・精算、記録の残し方)

・不具合対応と追加要望の線引き(判断の根拠となる文書、扱いの分岐、追加要望は別枠で扱うこと)

・ユーザー協力遅延の取扱い(協力事項と期限、遅延時の納期連動、追加費用の可能性、停止条件)

(3) カスタマイズ/アドオンの境界(標準と追加)と成果物の扱い

カスタマイズ/アドオンの揉め事は、標準と追加の境界、分担、成果物の扱いを契約・仕様・記録で固定できるかに集約されます。

【具体例】

パッケージ開発に伴うカスタマイズやアドオン開発では、標準機能と追加開発の境界が十分に整理されない場合、次のような状況が生じやすくなります。

  • 本体の内部を直接変更するカスタマイズを行った結果、バージョンアップ時に動作不良が発生したが、どこまでが標準サポートの範囲で、どこからが追加対応(有償)かが明確でなく、無償対応の要否をめぐって対立した。
  • 同一の要望について「設定で実現するのか」「運用で対応するのか」「追加開発で実現するのか」が合意されないまま進行し、稼働後に期待と異なる挙動が問題視され、追加開発の範囲が拡張していった。
  • 追加開発で作成したプログラムや帳票等の成果物について、引き渡す範囲、利用できる範囲、再利用・他案件への転用の可否が未整理で、納品後に利用制限や転用の可否をめぐって紛争となった。

 

特に、実装方式(本体改変か拡張か)、標準部分との分担、成果物の扱いは、契約時点で曖昧になりやすく、稼働後の無償対応拡大や権利関係の対立に直結しやすい領域です。

【トラブルが発生する理由】

大きくは3つ考えられます。

1つ目は、追加開発の位置付けが不明確なことです。カスタマイズが本体の改変であるのか、外付けの拡張であるのかにより、保守や更新時の影響が大きく異なりますが、実装方式を前提とした責任範囲(対応範囲、条件、前提、制約)が文書化されていないと、標準部分まで含めた無償対応が期待されやすくなります。

2つ目は、標準機能・設定作業・運用ルール・追加開発の分担整理が不足することです。パッケージ開発では、要望の実現手段が複数あり得るため、採用した手段を固定しないと、稼働後の不満が「追加開発で解消すべき問題」として拡張しやすくなります。

最後に3つ目は、成果物の権利関係が曖昧なことです。追加開発で作成する成果物は、ユーザーが自由に利用できると理解しやすい一方で、ベンダー側は再利用や汎用化を前提にすることもあります。この整理がないと、納品後に利用範囲や転用の可否をめぐって対立します。さらに、第三者部品や外部サービスの利用条件が十分に共有されない場合、ユーザー側に及ぶ制約が紛争の原因となります。

【対策】

対策の要点は、標準と追加の境界、分担、成果物の扱いを「契約・仕様・記録」の三点で整備し、稼働後に判断基準がぶれない状態を作ることです。

①追加開発の位置付けを明確にする

実装方式(本体改変か、拡張手段によるアドオンか)を明示し、その方式に応じた責任範囲を定めます。具体的には、対象範囲、前提条件、制約事項、標準サポートの範囲外となる場面、更新時の影響や対応方針(有償対応の対象となる範囲)まで整理します。

②分担を「標準・設定・運用・追加開発」で固定する

各要望について、どの手段で実現するのかを確定し、追加開発の対象を機能一覧として示すだけでなく、非対象事項、例外条件、ユーザー側で実施すべき手順、運用上の制約も含めて合意します。標準部分の仕様や設定値が前提となる場合は、その前提を明記し、受入確認の方法と基準も合わせて定めます。

③成果物の扱い(利用範囲・再利用・第三者部品)を整理する

追加開発で作成される成果物について、引き渡す範囲、ユーザーが利用できる範囲、複製・改変の可否、他案件への転用の可否を明確にします。ベンダー側が再利用を前提とする部品を含める場合は、その旨を事前に説明し、ユーザーには必要な範囲で利用を認めつつ、汎用部品や一般的ノウハウまで譲渡対象としない構造を設けます。第三者部品や外部サービスを利用する場合は、利用条件と制約がユーザー側にも及ぶことを明示し、合意に反映させます。

【契約書に反映させるべき事項】

・追加開発の位置付け(本体の改変か、拡張手段による外付けかの明示)

・標準サポート範囲と追加対応(有償)範囲の切り分け(どこからが追加対応になるか、判断基準)

・バージョンアップ時の影響と扱い(改変部分に起因する不具合や調整の扱い、追加費用・納期の考え方)

・「標準機能/設定/運用/追加開発」の分担の固定(採用する実現手段、非対象事項、例外条件、運用上の制約)

・受入確認の基準と前提(標準仕様・設定値を前提とする事項、確認方法と判断基準)

・成果物の範囲(引き渡す対象:プログラム、設定ファイル、帳票、手順書等の範囲)

・成果物の利用範囲(利用できる範囲、複製・改変の可否、社内利用の範囲)

・再利用、他案件への転用の扱い(ベンダー側の再利用を認めるか、どこまでを対象外とするか)

・第三者部品・外部サービスの利用条件(利用条件の制約がユーザー側にも及ぶこと、範囲と例外)

(4) 検収・受入・データ移行(基準・期限・分担)の固定

未払いと大幅な手戻りを防ぐには、検収・受入・データ移行を「結果を確定させる手続」として基準・期限・分担を先に決める必要があります。

【具体例】

パッケージ開発では、検収(納品物の確認)・受入(利用開始の判断)・データ移行の設計が不十分な場合、次のような状況が生じやすくなります。

  • 検収の基準や期限が明確でないため、ユーザーの確認が長期化し、稼働後の不満を理由に検収が留保され、代金支払が止まった。
  • 「検収」と「本番稼働の判断」が混同され、稼働後に生じた運用上の不満まで検収不合格の理由として扱われ、無期限の追加対応や手戻りが発生した。
  • データ移行について、移行対象(期間・項目)、照合方法、元データ整備の責任分担が曖昧で、移行後の不一致や欠損をめぐり、やり直しや費用負担の対立が生じた。

 

特に、検収の基準と期限、稼働判定の位置付け、データ移行の前提条件は、終盤で一気に争点化しやすく、未払いと大幅な手戻りに直結しやすい領域です。

【トラブルが発生する理由】

大きくは3つ考えられます。

1つ目は、検収が「何をもって完了とするか」を確定する手続として設計されていないことです。確認対象や確認方法、期限、不合格時の処理が具体化されていないと、ユーザー側が確認を引き延ばす余地が生じ、支払と完成の確定が連動しなくなります。また、パッケージ開発では、F&Gで合意した「標準で満たせる点」と「追加対応が必要な点」が、仕様書や受入基準、テスト項目に反映されていないと、検収の対象が膨らみやすくなります。

2つ目は、受入(利用開始の判断)と検収の役割が整理されていないことです。パッケージ開発では、標準機能の制約や運用設計の影響で、稼働後に「使い勝手が想定と異なる」といった評価が出やすいものの、これを検収の合否に取り込むと、検収が無期限化し、追加対応の範囲が拡張します。

最後に3つ目は、データ移行の責任分担が曖昧なことです。移行結果は元データの品質に左右されるにもかかわらず、元データ整備の責任、移行対象、照合方法、移行不備の影響範囲が明確でないと、移行結果が一括してベンダー責任として評価されやすく、やり直しや補償の争点につながります。

【対策】

対策の要点は、検収・受入・移行を「結果を確定させる手続」として設計し、基準・期限・手順・分担を事前に固定することです。

①検収の設計を具体化する

確認対象(仕様書、受入基準、テスト項目)、確認方法(実施主体、環境、手順)、検収期間(開始日と期限)、不合格時の扱い(指摘方法、再確認の回数・期限)を契約と付随資料で明確にします。また、期限までに確認結果が示されない場合に、一定条件で合格と扱う仕組みを設けることで、未払いリスクを低減できます。

②検収と受入(本番稼働判定)を切り分ける

検収は「合意した仕様・基準への適合」を確認する手続として位置付け、稼働後の運用上の不満や改善要望は、別途の改善(軽微改修・追加開発等)として扱う範囲を整理します。稼働開始の判定手続(判定者、判定日、稼働後の問い合わせ窓口)も定め、稼働判断が検収の留保理由として使われないようにします。

③データ移行の前提条件と分担を明確にする

元データ整備の責任、移行対象(期間・項目)、移行後の照合方法(件数一致、金額一致、サンプリング等)、移行不備が判明した場合の対応範囲を明確にします。移行ツール提供と実作業の役割分担、ユーザー側の作業(データ整備、確定、検証協力)も文書化し、移行の合格基準を現実的な形で定めることが重要です。

【契約書に反映させるべき事項】

・検収の確認対象(仕様書、受入基準、テスト項目等)と優先順位

・検収方法の具体化(実施主体、環境、手順、テストデータ条件、指摘の出し方)

・検収期間(開始日と期限)と不合格時の扱い(再確認の回数・期限、修正対応の範囲)

・期限徒過時の扱い(一定条件で合格と扱う仕組みの要否と条件)

・受入(稼働開始判定)の位置付け(検収との切り分け、判定者・判定日、稼働後の窓口)

・稼働後の運用上の不満・改善要望の扱い(検収とは別枠として整理し、追加対応の手続へ接続すること)

F&Gの反映(F&Gで合意した範囲が仕様・受入基準・テスト項目に反映されることの明示)

・データ移行の役割分担(ツール提供/実作業/検証の分担、ユーザー側のデータ整備・確定の責任)

・移行対象の明確化(期間・項目、対象外、前提条件)

・照合方法と合格基準(件数一致、金額一致、サンプリング等の採用方法、許容差の考え方)

・移行不備時の対応範囲(どこまでをやり直すか、原因が元データにある場合の扱い)

(5) 稼働後不具合と保守(定義・終点・責任上限)の切り分け

稼働後の無償対応が膨らむ原因は不具合対応の終点がないことであり、定義・手順・責任上限・保守範囲を契約で切り分けることが不可欠です。

【具体例】

パッケージ開発の稼働後には、不具合対応の整理が不十分な場合、次のような状況が生じやすくなります。

  • 仕様書や受入基準が弱く、「期待どおりに動かない」という理由で不具合対応が繰り返し要求され、実際には運用上の要望や追加改善まで無償対応に含まれていった。
  • 不具合の対応手段(修正、回避策、設定変更、次期対応等)や完了条件が定まっておらず、暫定対応を行っても「恒久対応が終わっていない」とされ、対応が終了しない状態が続いた。
  • 推奨環境外での利用、ユーザー側の設定変更、他システム障害、通信環境の問題など、ベンダーが管理できない要因による事象まで不具合として扱われ、原因切り分けと責任分担をめぐって対立が深まった。

 

特に、何を不具合とするかの基準、対応の終点、対象外事由の整理が不十分な場合、無償対応の範囲が拡張しやすく、長期化した紛争につながりやすい傾向があります。

【トラブルが発生する理由】

大きくは4つ考えられます。

1つ目は、「不具合」の定義が曖昧なことです。パッケージ開発では、標準機能の制約や運用手順が前提となるため、ユーザーの期待と実際の仕様の間に差が生じやすいにもかかわらず、何を基準に合否を判断するかが明確でないと、期待との差異が不具合として扱われやすくなります。

2つ目は、対応方法と完了条件が定められていないことです。修正以外にも回避策、設定変更、次期リリースでの対応などの選択肢があるにもかかわらず、優先順位や期限、完了条件がないと、暫定対応後も終結しません。加えて、調査に必要な情報提供や再現条件の提示など、ユーザー側の協力事項が定まっていないと、原因特定が進まず、対応が長期化します。

3つ目は、責任の範囲と上限が明確でないことです。稼働後の障害が業務に影響した場合、損失の主張が広がりやすい一方、負担範囲が無限定だと契約対価に見合わないリスクを負うことになります。さらに、再委託先やクラウド基盤等の責任範囲と契約上の整理が一致していない場合、説明と調整が困難になります。

最後に4つ目は、保守運用の範囲が切り分けられていないことです。不具合修正、環境変化への追随、法令改正対応、軽微改修、問い合わせ対応が混在すると、ユーザーは一体として無償対応を期待し、ベンダー側は保守契約の対象として有償化したい領域と考え、両者の間で認識差が生じます。

【対策】

対策の要点は、稼働後の対応を「基準」「手順」「責任」「保守」の四点で具体化し、無償対応が無期限に拡張しない構造を作ることです。

①不具合の定義(対象・対象外)を明確にする

仕様書、受入基準、テスト項目など、事前に合意した文書を基準として、不適合の場合を不具合として扱う設計とします。一方、推奨環境外での利用、ユーザー側の操作ミスや設定変更、他システム起因、通信環境起因など、管理外の要因による事象は対象外であることを明記します。運用上の要望や改善提案は、不具合ではなく別枠(改善・追加開発)として扱う整理が重要です。

②対応方法と完了条件を定め、終点を可視化する

修正、回避策、設定変更、次期リリース対応などの手段を整理し、優先順位と選択条件を定めます。重大度に応じて、初動連絡、暫定対応、恒久対応の目安時期を設定すると、期待値の調整に有効です。あわせて、調査に必要な協力事項(連絡窓口、再現条件、ログ提出、切り分け手順)を定め、協力が得られない場合の取扱いも明確にします。

③責任の範囲と上限を取引規模に応じて設計する

補償対象をどこまでとするか(直接の損失に限定するか、利益の減少等を対象外とするか)を整理し、上限額の基準(契約金額、直近利用料相当額等)を設けます。再委託先やクラウド基盤の条件と整合する形で設計し、背中合わせのリスクを調整します。

④保守運用の範囲を切り分け、提供条件を明確にする

不具合修正と、環境変化への追随、法令改正対応、軽微改修、問い合わせ対応を区別し、無償で含める範囲と保守契約として有償化する範囲を明確にします。対応時間帯、回数、優先順位、更新・終了時の扱い(サポート終了や代替手段の提供の有無)まで定めておくと、運用段階の摩擦を抑えられます。

【契約書に反映させるべき事項】

・不具合の定義(何を基準に不具合と扱うか:仕様書・受入基準・テスト項目等)

・対象外事由の明示(推奨環境外、操作ミス、ユーザー側設定変更、他システム起因、通信環境起因等)

・受付、調査の手順(窓口、連絡方法、再現条件、ログ提出等の協力事項、協力が得られない場合の扱い)

・重大度の分類と対応水準(初動連絡、暫定対応、恒久対応の目安と優先順位)

・対応手段の整理(修正/回避策/設定変更/次期対応等の選択条件と位置付け)

・完了条件(終点)の設定(何をもって対応完了とするか、再発時の扱い)

・負担範囲の整理(どの損失までを対象とするか、対象外とする範囲の考え方)

・上限額の設計(契約金額・利用料相当額等、取引規模に応じた上限の考え方)

・再委託先・クラウド基盤との整合(前提条件、責任範囲、ユーザー側への説明事項)

・保守運用の切り分け(不具合修正と、問い合わせ、環境追随、軽微改修等を区別すること)

・保守の提供条件(対応時間帯、回数、優先順位、更新・終了時の扱い)

弁護士による「パッケージ開発」を行うベンダー向けサポートサービス 

(1) パッケージ開発の紛争予防・対応を弁護士に相談・依頼するメリット

パッケージ開発の紛争は、契約書の文言だけでなく、提案書・見積書・F&G・受入基準・変更管理の運用まで含めた「一貫した設計」で防ぐ必要があります。

リーガルブレスD法律事務所では、ベンダー側の実務に即して、合意内容を「後から説明できる状態」に固定し、追加費用・納期調整・検収・稼働後対応が争点化しにくい契約と資料体系を整備します。

【弁護士に相談・依頼するメリット】

①合意内容の固定と「説明可能性」の確保

パッケージ開発では、「標準/設定/運用/追加開発」の切り分けや、F&Gの整理結果が曖昧なまま進むと、後日「当初の合意内容に含まれていたか」が争点になります。契約と付随資料の優先順位、前提条件、未確定事項の確定手続まで一体で整備し、合意内容を追跡できる状態にします。

②追加費用・納期延長を通すための変更管理設計

「追加費用は協議する」だけでは、承認前に作業が先行し、精算段階で対立が深まります。変更申請・影響評価・見積提示・承認の流れを契約上の手続として固定し、誰が・いつ・何を追加として認めたかを記録に残せる運用に落とし込みます。

③検収・稼働後対応の長期化を防ぐ線引きと上限設計

未払いと手戻りは、検収基準・期限・受入の位置付けが曖昧なときに顕在化しやすく、稼働後は「不具合」と「追加要望」が混同されると無償対応が拡張します。検収・移行の基準と期限、対象外事由、対応の終点、保守範囲、責任の上限を整合させ、終盤と稼働後の争点化を抑えます。

(2) 法律相談サービス

リーガルブレスD法律事務所では、これまでにお取引のない事業者様からのご相談を積極的に受け入れています。

早めのご相談であればあるほど、ダメージの少ない解決策をご提案することが可能です。

ご相談内容例

・パッケージ開発で紛争化しやすい論点について、自社案件に当てはめた「注意点と優先順位」を整理したい

・提案書、見積書、F&G、受入基準などの契約関連資料について、どこを「合意内容」として残すべきか確認したい

・進行中案件で、追加要望が出た場面を「変更」として整理できるか、追加費用、納期見直しの進め方を相談したい

サポート内容例

・事案の概要(取引形態、体制、前提条件、想定スコープ)を確認し、紛争化しやすい論点(スコープ、変更、検収、稼働後対応等)のうち優先的に固めるべき点と、資料・合意の残し方を提示します

・提案書、見積書、F&G・仕様、受入基準等を確認し、優先順位と前提条件を整理したうえで、合意内容として残すべきポイントと記録方法を提案します

・追加要望の内容と経緯を確認し、「不具合対応」か「変更」かの整理と、変更手続(見積提示・承認・着手)の進め方、相手方への説明文案の方向性を提示します

相談者が得られるメリット

・契約書と付随資料のどこを固めるべきかが明確になり、認識差の温床を早期に潰すことができます

・追加費用、納期見直しの局面で、感覚ではなく「合意と記録」に基づいて説明と交渉ができるようになります

・検収留保や無償対応の拡張につながる論点を先回りして整理し、トラブルを回避しやすくなります

・問題が顕在化した場合でも、争点整理と対応方針が早期に定まり、損失拡大を抑えやすくなります

弁護士費用

190分以内で15,000円(税別)

実施方法

①ご予約(お問い合わせフォーム又はお電話にて日程調整)

②事前準備(関係資料を共有いただきます)

③相談実施(オンライン又は対面)

④解決策提示(リスク診断、交渉方針などを具体的にご提示)

⑤アフターフォロー(ご希望内容に応じて別途契約の上、交渉代理や訴訟対応、継続支援へ移行)

 

お問い合わせは

 

(3) その他サービス(法律相談以外のサービス)

リーガルブレスD法律事務所では、法律相談サービス以外にも様々なサービスをご提供しています。

ここでは一例として、F&G(フィット&ギャップ)法務レビューサービスをご案内します。

F&G(フィット&ギャップ)法務レビューサービス】

ご依頼内容例

・作成済みのF&G表について、FitGapの区分や追加対応の条件を「合意内容」として固定するために、不足している前提条件・対象外事項・制約の記載を洗い出したい

Gap項目について、運用代替/設定対応/追加開発/対象外/別途合意といった扱いが混同しないよう、各項目の扱い(確定事項・未確定事項)を整理し、後日の変更手続に接続できる形にしたい

F&Gの整理結果を、仕様・受入基準・変更管理の基準点として機能させるために、文書の優先順位、版管理、変更時の扱いなどを含めて契約・付随資料へ反映したい

サポート内容例

本サポートは、技術的な実現可能性や工数妥当性の評価ではなく、合意内容の固定と文書化を目的として実施します。

 

F&G表および関連資料(提案書・見積書・要件整理資料等)を確認し、合意内容として固定するうえで不足しやすい事項(前提条件、対象外、制約、用語の定義、判断基準)の欠落や曖昧さを指摘し、追記すべきポイントを整理します

Gap項目について、各項目の扱いを「対象外」「別途合意・別途見積」「運用で代替」「設定で対応」「追加開発で対応」に分類し、分類ごとに必要となる記載(前提、範囲、例外、ユーザー協力事項、判断の基準点)を整備するための文案を提示します

F&Gの整理結果が、仕様・受入基準・変更管理と矛盾しないように、文書の優先順位、版管理(確定手続・改訂手続)、変更時の扱い(承認前着手の原則、影響評価と記録)を含め、契約・付随資料へ反映する箇所と方法を取りまとめます

依頼者が得られるメリット

・「標準で満たせる範囲」と「追加対応が必要な範囲」の境界が、前提条件・対象外・制約を含めて明確になり、認識差が生じにくくなります

Gap項目の扱いが分類と文言で固定されるため、追加費用・納期延長が必要な場面でも、変更手続に基づいて説明・調整しやすくなります

F&Gが仕様・受入基準・変更管理の基準点として機能しやすくなり、検収や稼働後の局面で争点が再燃しにくくなります

・文書の優先順位と版管理が整理されることで、「どの資料を根拠に判断するか」が明確になり、プロジェクト内の判断と記録がぶれにくくなります

弁護士費用

30万円(税別)~

(※)事案の難易度、ボリューム、予想される工数等により変動します。事前にお見積りをご提示します。

実施方法

①オンラインヒアリング(30分程度、無料)を実施し、課題の抽出とご要望事項を確認します

②実施計画案とお見積りを提示します

③ご依頼者様にて検証して頂き、ご要望を踏まえて実施計画を確定させます

④実施計画に沿って、順次作業を進めていきます

 

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(4) 法律顧問プラン(顧問弁護士サービス)のご案内

パッケージ開発では、「標準で対応できる範囲」と「追加対応が必要な範囲」の境界が揺らぎやすく、提案書・見積書・F&G・仕様・受入基準・変更管理の運用まで含めた一貫した設計が不可欠です。顧問弁護士が、これらの資料体系と手続を平時から整備し、案件ごとの判断基準と記録の残し方を定着させることで、追加費用・納期延長・検収留保・無償対応の範囲拡大が争点化しにくくなり、説明可能性と回収可能性を高めることができます。

 

ご依頼内容例

・パッケージ開発の案件類型に合わせて、契約書・提案書・変更申請・検収資料などの社内テンプレを整備し、運用を定着させたい

・「不具合」「追加要望」「仕様の前提不充足」などの判断がぶれやすい論点について、案件横断の判断基準と記録ルールを作り、現場の対応を標準化したい

・重要案件やトラブル案件について、相手方との調整・説明の方針を継続的に整理し、交渉局面に伴走してほしい

サポート内容例

・貴社の取引類型と体制を踏まえ、契約書・提案書・見積書・F&G・受入基準・変更申請書式等をテンプレ化し、条項と付随資料が矛盾しない形で更新・運用できるよう整備します

・「不具合/追加要望/前提不充足」の線引き、変更管理の承認手続、検収留保への対応などについて、判断基準と記録の取り方をルール化し、案件ごとのブレと属人化を抑える運用に落とし込みます

・重要案件・トラブル案件について、事実関係の整理、争点の固定、相手方への説明文案の作成、交渉方針の組み立てを継続的に支援し、局面に応じた打ち手を整理します

依頼者が得られるメリット

・契約と付随資料、運用手続をテンプレとして整備し、案件ごとの品質を平準化することができます

・現場判断が先行して後日精算で揉める構図を減らし、追加費用・納期見直しを手続として運用しやすくなります

・不具合と追加要望の線引きが維持され、無償対応の範囲が拡張しにくくなります

・重要案件での争点整理と説明方針が早期に定まり、交渉の見通しを立てやすくなります

・記録の残し方と合意の固定が組織に蓄積され、担当者交代があっても対応品質を保ちやすくなります

実施方法

①お問い合わせ後、オンライン面談(30分程度、無料)を実施し、ご要望事項の聞き取りやプランの説明を行います

②ご提案書(見積書)の提示

③顧問契約の締結

④窓口の開設(専用メール、チャットの提供)

⑤サービス開始

・日常的な対応(契約書レビュー、相談に即応(即日~数日以内対応可))

・ミーティング(必要に応じて経営課題、法務リスクを総点検)

・追加支援(必要に応じて交渉代理、訴訟対応、研修実施などを提供)

 

お問い合わせ

20261月執筆>

※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

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