SaaSの利用規約について調べると、「どんな条項を入れるべきか」「一般的な書き方は何か」といった定め方の解説は多く見つかります。しかし、実務でトラブルを減らす上でのポイントは、条項の定め方は当然のこととして、その条文をどう運用し、ユーザの出方にどう対処するかに重きが置かれます。
たとえば「未払いなら停止できる」と規約に書いてあっても、督促の順序や停止のタイミング、復旧条件が社内で決まっていなければ、現場は例外対応に追われ、結局は規約通りに「停止できなない」事態に陥ります。SLAも同様で、「稼働率99.5%」と掲げても、計測方法や除外(計画停止)の定義、障害時の説明の型(ステータスページや報告書)がなければ、未達時に信頼を失い、補償交渉が泥沼化します。データ条項も、「帰属は利用者」と書くだけでは足りず、ログや統計の扱い、再委託先の管理、終了時の持ち出しと削除まで決めて初めて揉めない状況を作り出すことが可能となります。
本記事は、単なる利用規約の条文解説にとどまりません。SaaS提供者(運営者)側の視点で、
・条項をどう書くか(典型条項の例)
・どう運用すれば事故が減るか(ワンポイントの運用アドバイス)
・ユーザが何を指摘してくるのか(想定される要求)
・SaaS提供者としてどう返すか(対処法の整理)
までを包括して解説します。
本記事を参照することで、法律論だけにとどまらず、現場が回り、クレームや未回収を減らし、契約交渉もスムーズにする「実装可能なルール」を導入して頂ければと思います。
目次
- 1 SaaS提供者が定めておきたい条項と運用上のポイント
- 1.1 (1)文書体系の設計(契約関係を構成する文書の整理)
- 1.2 (2)契約当事者・アカウント・権限設計
- 1.3 (3)利用範囲と提供条件
- 1.4 (4)SLA・サポート
- 1.5 (5)料金・課金・請求・未払い
- 1.6 (6)仕様変更・アップデート・サービス終了
- 1.7 (7)禁止行為・利用停止・アカウント制裁
- 1.8 (8)データの帰属・利活用
- 1.9 (9)セキュリティ・個人情報・再委託
- 1.10 (10)知的財産・第三者権利侵害
- 1.11 (11)免責・保証・損害賠償・責任制限
- 1.12 (12)契約終了・解約・サービス停止・サービス終了
- 1.13 (13)紛争対応の設計
- 1.14 (14)運用ガバナンス(利用規約等の改定)
- 2 ソフトウェアの不正使用トラブルを弁護士に相談・依頼するメリット
- 3 リーガルブレスD法律事務所によるサポート内容
SaaS提供者が定めておきたい条項と運用上のポイント
(1)文書体系の設計(契約関係を構成する文書の整理)
SaaSの利用規約作成で最初に押さえるべきは、「利用規約だけで、すべてを抱え込まない」ことです。
現場実務では、料金(プラン/従量/初期費用)、SLA、サポート範囲、セキュリティ要件、データ取扱い(再委託・国外移転を含む)などが頻繁に改定されます。これらを利用規約本文に一体化すると、改定のたびに利用規約変更手続きを実施することになり、告知・同意取得・版管理が煩雑になります。
そこで、例えば、①基本ルール(利用規約)、②可変情報(料金表・機能一覧・制限値・サポートポリシー)、③品質・可用性(SLA)、④個人情報・委託(プライバシーポリシー/データ処理(DPA)/サブプロセッサ一覧)といった文書群に分けた上で、「契約に組み込まれるもの」「矛盾したときの優劣」などを明記するといった、現場運用の工夫が求められます。
この趣旨を表現した条項例は次の通りです。
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1. 本サービスに関する契約は、本利用規約、申込画面・注文書、当社が別途定める料金表、SLA、サポートポリシーおよびプライバシーポリシーにより構成されます。これらの内容が矛盾抵触する場合、注文書(申込内容)→SLA→料金表→本利用規約の順に優先します。 2. 当社は、料金表・SLA・サポートポリシー等を変更することがあり、当社所定の方法で事前に通知し、通知後にユーザが本サービスを利用した場合、当該変更に同意したものとみなします。 |
【運用上の注意点】
次の3点を押さえたいところです。
・クリック同意の証拠化(同意者、同意日時、同意対象となった版)を行うこと。なお、旧版の保管も必須です。
・営業資料、管理画面表示、FAQが規約と矛盾しないか確認すること(改定時は横断レビューが必須です)
・変更の周知を実効化する通知を設計すること(メール/管理画面掲示/ダッシュボード告知など複数個所で通知する。なお、重大変更は同意更新も検討)
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「どの文書までが契約か」「料金表やSLAが一方的に変わるのでは」「優先順位が不明で不利益になる」という懸念を示すことがあります。
これに対しSaaS提供者は、文書体系・優先順位・変更手続(通知方法、施行日、重大変更時の同意)を条文化し、かつ実運用(証拠化と整合管理)で裏付けることにより懸念を払拭すると共に、紛争予防に備えることがポイントです。
(2)契約当事者・アカウント・権限設計
SaaSの紛争は「機能」や「料金」だけでなく、誰が契約当事者で、誰がどの権限で使っていたのかという分野でも生じます。
そこで、SaaS提供者側として最初に設計すべきは、①契約主体(法人/個人/代理店経由)、②ユーザの範囲(社員、役員、派遣、委託先、グループ会社等)、③権限者(管理者・一般ユーザ・請求担当など)の三点です。ここを曖昧にした場合、退職者アカウントの放置、委託先へのID共有、グループ会社への横展開などが常態化し、情報漏えい・不正利用・料金未払い・責任の所在不明につながります。
この点を考慮した条項例は次の通りです。
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1. ユーザは、本サービスをユーザに所属する役員及び従業員(派遣労働者は含まない)その他当社が承認した者に利用させることができます。ユーザは、ユーザによる本サービスの利用について一切の責任を負います。 2. ユーザは、管理者アカウントを通じてユーザの追加・削除・権限付与を行い、ユーザの退職・異動等があった場合、遅滞なく当該ユーザのアクセス権限を停止します。 3. ユーザは、ID・パスワードを第三者に共有・貸与してはならず、当社は不正利用のおそれがある場合、事前通知なく当該アカウントを停止できるものとします。 |
【運用上の注意点】
運用上の注意点は、利用規約だけでなく管理画面設計とセットで回すことです。
具体的には、(a)管理者の二要素認証、(b)権限ロール(閲覧/編集/請求/監査)の切り分け、(c)監査ログ(管理者操作ログ・ログイン履歴)の保持です。
なお、法人契約では「代表者/管理者/請求担当」の役割が混在しやすいことから、申込時に担当者情報を分離し、請求・通知の宛先を明確化することをお勧めします。
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「委託先やグループ会社も実質同じ会社だから使わせたい」「ID共有がダメなら現場が回らない」「退職者の操作は会社の責任か」といった指摘をすることがあります。
SaaS提供者側は、利用範囲(誰に使わせてよいか)を定義し、ID共有禁止の根拠をセキュリティと責任分界で説明できる形にしつつ、一方で「追加ユーザ枠」「外部委託先オプション」「ゲスト権限」など運用で吸収する設計を用意しておくと、ユーザの不満を解消しやすくなります。
(3)利用範囲と提供条件
SaaS提供者にとって「利用範囲」の設計は、価格と責任の前提を定める作業となります。
ここが曖昧な場合、想定外の大量利用による負荷・障害、用途逸脱(再販・競合サービスの開発・違法利用)、国外利用に伴う規制対応やセキュリティ事故が発生しても、アカウントの停止や制限措置、あるいは追加料金の請求などをしづらくなります。
提供条件は「禁止する」だけでなく、「どこまでなら許容し、超えたらどう扱うか(制限/追加料金/停止)」までをルール化することがポイントです。
これらを考慮した条項例は次の通りです。
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1. ユーザは、本サービスを、当社が別途定める利用条件(機能・APIの利用制限、同時接続数、データ容量、リクエスト回数等)および料金表に従い利用します。 2. ユーザは、本サービスを、(i) 法令または公序良俗に反する目的、(ii) 第三者への再販売・再許諾、(iii) 競合サービスの開発・解析(リバース等を含む)目的、(iv) 当社または第三者の権利を侵害する目的で利用してはなりません。 3. 当社は、ユーザによる利用が当社所定の制限を超過し、または当社システムに過度な負荷を与えるおそれがある場合、事前通知のうえ利用の制限、プラン変更の要請、または一時停止を行うことができます。緊急の場合は事前通知なく行うことがあります。 4. 本サービスは日本国内での利用を前提とし、ユーザが国外で利用する場合、当社が別途定める条件に従うものとします。 |
【運用上の注意点】
運用上の注意点としては、
・制限値を「規約本文」ではなく機能一覧、料金表、APIドキュメント等の可変文書で管理し、改定手続を整えること
・超過検知(レートリミット、容量アラート、異常トラフィック)と段階的制御(警告→制限→停止)を実装すること
・制裁の公平性を維持すること(例外が生じる場合は、例外を承認する条件を整備し、記録を残すこと)
と考えられます。特に、停止・制限は可能と書くだけではなく、通知文面・異議申立て窓口・復旧条件まで用意しておくと、ユーザとの交渉環境を整えやすくなります。
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「利用条件が抽象的で恣意的に制限される」「上限が後出しで変わる」「海外拠点や委託先から使えないのは困る」「従量課金の根拠が不透明」と指摘することがあります。
SaaS提供者側は、制限値の所在(料金表・仕様書への委任)、制限・停止の要件(過度負荷等)と手続(原則通知、緊急例外)、超過時の取扱い(追加料金/上位プラン誘導)を明文化し、管理画面でメーター表示や利用実績エクスポートを提供するなど透明性を補強することで、ユーザとの関係性を構築しやすくなります。
(4)SLA・サポート
SaaSの紛争は「障害が起きた」こと自体ではなく、「どこまでがSaaS提供者の責任で、障害時に何をして、何が救済になるのか」が曖昧なときに大きな問題となります。SLA(可用性・性能等の約束)とサポート(問い合わせ対応の約束)は、SaaS提供者のリスク上限を画しつつ、ユーザに予見可能性を与える指標となります。過度に重い責任は運用破綻を招き、軽すぎる責任は受注・継続率を下げます。
重要なのは、①指標(稼働率・応答時間等)、②対象外(計画停止・ユーザ起因・第三者回線等)、③計測方法、④救済(サービスクレジット等)をセットで定義することです。
これらを考慮した条項例は次の通りです。
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1. 当社は、別紙SLAに定めるとおり、本サービスの月間稼働率を99.5%とするよう合理的努力を行います。稼働率の算定方法、計画メンテナンス時間、ユーザ設備・第三者サービスに起因する停止等の除外事由は別紙SLAの定めによります。 2. 稼働率がSLAを下回った場合、ユーザは別紙SLAに定めるサービスクレジットを申請でき、これが当社の唯一かつ排他的な救済となります。 3. 当社のサポート対応時間、受付チャネル、初動目標および対応範囲はサポートポリシーの定めによります。 |
【運用上の注意点】
運用上の注意点として次の4点が考えられます。
・計測と証拠(稼働率の計測基盤、インシデント履歴、ステータスページの運用など)
・稼働率算定からの除外事由の明記(計画停止を「事前告知・上限時間・時間帯」で定義し除外事由として明記すると共に、当該定義と運用実態とを乖離させないなど)
・サポートの線引き(ベストエフォートに含まれる範囲を明確化し、例えば環境依存調査、設定代行、個別開発などは有償メニューとなることを明示するなど)
・救済設計(クレジット申請期限、算定単位、請求相殺の運用を請求フローに組込むなど)
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「SLA未達の損害(逸失利益等)も補償すべき」「障害の原因がどちらか不明」「サポートが遅い」と指摘します。
SaaS提供者側は、SLA指標と除外事由、救済をクレジットに限定する旨(責任制限との整合)、一次回答の目標とエスカレーション、障害時の通知・報告(初報の内容・頻度)を定義し、運用(ステータスページとインシデント報告)で透明性を担保することで、ユーザとの関係性を構築することになります。
(5)料金・課金・請求・未払い
SaaS提供者にとって、料金・課金・請求は売上の中枢である一方、運用事故(トラブル・炎上・未回収)の最多領域でもあります。典型例は、無料トライアルからの自動課金に対する不満、プラン変更・従量課金の算定根拠を巡る争い、解約時の「いつまで課金されるのか」問題、請求書発行・支払遅滞後の停止対応などです。ここを曖昧にしたままサービス運用を始めると、CSの例外対応が積み上がり、結果として「規約はあるが現場実務で守れない」状態になります。
SaaS提供者側は、①課金単位・算定方法、②契約期間と更新、③料金改定の手続、④支払遅滞時の段階対応(督促→制限→停止→解除)を、文書とシステムの両面で設計しておくべきです。
この点を考慮した条項例は次の通りです。
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1. ユーザは、当社が別途定める料金表に従い利用料金を支払うものとします。利用料金は、契約プラン、ユーザ数、利用量(APIリクエスト数、データ容量等)その他当社所定の算定方法により計算します。算定に用いる利用実績は当社システムの計測結果を優先します。 2. 本サービスは月額課金とし、契約期間満了日の○日前までに解約手続がない場合、同一条件で自動更新されます。 3. 当社は、料金表を変更することがあり、変更内容および適用開始日を事前に通知します。ユーザが適用開始日以降に本サービスを利用した場合、当該変更に同意したものとみなします。 4. ユーザが支払期限を経過しても支払わない場合、当社は催告のうえ本サービスの提供を停止し、相当期間内に支払がないときは契約を解除できます。 |
【運用上の注意点】
次の4点が運用上の注意事項になると考えられます。
・透明性(管理画面で利用量メーター、課金見込み、過去実績のエクスポートを提供するなど)
・自動課金(トライアルの終了日、課金開始日、解約導線を申込画面とメール等で明確化し、同意の証拠を残すなど)
・解約条件(日割り計算の有無、即時停止の可否、データ保持期間との連動を、UIと規約で一致させるなど)
・未払い対応(督促のテンプレ、停止タイミング、復旧条件(入金確認・手数料等)を標準化するなど)
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「従量課金の根拠が不明」「知らないうちに上位プラン相当の請求が来た」「解約したのに請求が続く」「利用停止により業務が止まった損害を補償しろ」と主張する場合があります。
SaaS提供者側は、算定指標と計測の優先(システム計測を基準とする旨)、上限・アラート・レート制限等の事前抑止策、料金改定の告知方法、未払い時の停止・解除手続(猶予と緊急停止の整理)を条文化し、運用で見える化を徹底することで、ユーザの不満を解消することになります。
(6)仕様変更・アップデート・サービス終了
SaaSの提供者側で揉めやすいのが、仕様変更・アップデート・サービス終了です。SaaSは継続的に改良される一方、ユーザは業務フローや他システム連携(API、CSV、SSO等)を前提に運用しているため、仕様が変わると実害が出ます。典型的には、機能の廃止・挙動変更、APIの互換性破壊、UI変更、サポート対象環境の打切り、プラン再編、そしてサービス終了です。
SaaS提供者としては迅速に改善する自由度を確保したい一方、ユーザ側からは「後出し」「ベンダーロックイン」「出口がない」と批判されやすい領域です。したがって、①変更の範囲(軽微/重要)、②通知・猶予、③代替手段、④終了時のデータ移行(出口設計)を過不足なく定義し、運用とUIで裏付ける必要があります。
この点を考慮した条項例は次の通りです。
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1. 当社は、本サービスの内容を随時変更・追加・改良することができます。ユーザの利用に重大な影響を及ぼす変更(主要機能の廃止、API仕様の互換性破壊等)を行う場合、当社は合理的な期間を設けて事前に通知します。ただし、セキュリティ上の理由その他緊急の必要がある場合はこの限りではありません。 2. 当社が本サービスの提供を終了する場合、当社は終了予定日の○日前までに通知し、当社所定の方法によりユーザがデータを取得できる機会を提供します。終了後、当社は別途定める期間データを保持した後、削除します。 |
【運用上の注意点】
運用の注意点として、次の4点が考えられます。
・変更管理(変更の区分(軽微/重要)と社内承認フロー、告知チャネル(管理画面・メール・リリースノート・ステータスページ)を定型化するなど)
・互換性(APIはバージョニング、廃止予告と移行ガイドを用意し、期限・影響範囲を明示するなど)
・出口設計(データエクスポート(CSV/JSON)、証跡(ログ)、設定の出力、移行支援の有償メニュー等を整備し、「いつまで」「どの形式で」持ち出せるかを明確化するなど)
・UI整合(規約の通知ルールと、実際の通知・同意(重要変更時の再同意)が一致しているかを点検することなど)
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「業務が止まる変更を一方的にされた」「API廃止で連携が壊れた」「サービス終了時にデータを出せない」「ロックインだ」と指摘する場合があります。
SaaS提供者側は、重大変更の定義、通知・猶予、緊急例外、代替提供の方針(旧機能の並行提供期間等)を条文化し、終了時のデータ返還・保持・削除を具体化することで、ユーザに予見可能性を付与し、関係性の構築を図ることになります。
なお、B2Bでは、特に出口設計(データ形式・保持期間・移行支援)が重要となる傾向があるので、押さえておきたいところです。
(7)禁止行為・利用停止・アカウント制裁
SaaS運営で最もユーザとの対立を招くのが、禁止行為を理由とする利用停止(アカウント制裁)です。SaaS提供者側は、セキュリティ確保やプラットフォーム健全性のために停止権限を持つ必要がありますが、手続が粗いと「一方的に止められた」「根拠が不明」「損害を補償しろ」という紛争に直結します。したがって、禁止行為の定義(何がアウトか)だけでなく、停止・解除に至るプロセス(通知・弁明機会・緊急例外・復旧条件)までを、条項と運用で整備することが重要です。
この点については次のような条項例が考えられます。
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1. ユーザは、(i) 法令または公序良俗に反する行為、(ii) 不正アクセス、脆弱性探索、過度な負荷を与える行為、(iii) ID・パスワードの共有・不正使用、(iv) 第三者の権利侵害、(v) 本サービスの解析・リバースエンジニアリング、(vi) 反社会的勢力への利用、(vii) 料金不払いその他当社が別途定める禁止行為を行ってはなりません。 2. 当社は、ユーザが前項に違反し、またはそのおそれがあると合理的に判断した場合、事前に通知し、相当期間を定めて是正を求めたうえで、本サービスの全部または一部の利用を停止できます。ただし、緊急に必要がある場合(不正アクセス・情報漏えいのおそれ等)は、事前通知なく停止できるものとします。 3. 当社は、利用停止後も違反が是正されない場合、または重大な違反がある場合、契約を解除できます。 |
【運用上の注意点】
運用上の注意点として次の5つが考えられます。
・合理的判断の裏付け(ログ、アラート、通報内容、社内判断記録を残すなど)
・段階的な制裁の検討(警告→一部制限→全面停止→解除を原則フローとしつつ、例外基準も明確にするなど)
・通知文面の工夫(停止理由を必要最小限かつ具体的に示し、是正方法・期限・問い合わせ窓口・異議申立て(再審査)の導線を付けるなど)
・復旧条件の明確化(本人確認、パスワードリセット、設定変更、支払完了等、復旧に必要な条件を標準化するなど)
・緊急停止の濫用防止(緊急要件を社内規程で定義し、後追い通知・レビューを必須化するなど)
なお、ユーザデータの凍結・削除は別問題なので、停止とデータ取扱い(保持・返還・削除)を切り分けて設計するのが望ましいと考えられます。
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「停止の要件が広すぎる」「弁明機会がない」「利用停止で業務が止まった場合の損害はどうする」「不正利用が社内の誰の行為か分からない」と主張してきます。
SaaS提供者側は、違反類型を具体化し、原則は事前通知+是正期間を置く一方、セキュリティ上の緊急例外を限定して明記し理解を得るよう努めます。
なお、救済手続き(復旧条件・再審査)を用意し、責任制限条項と整合させることで、制裁権を実務で行使しても、紛争をSaaS提供者側の想定内でコントロールできるようにする体制構築も重要です。
(8)データの帰属・利活用
SaaSにおけるデータ条項は、単なる「個人情報対応」にとどまりません。運営者側から見れば、①ユーザが投入するデータ(顧客データ等)、②運営上必然的に生成されるログ(アクセスログ、操作ログ、エラーログ)、③サービス改善のための統計・分析結果、④(生成AI機能がある場合)学習・評価に用いるデータ…などを切り分け、帰属と利用範囲を定義することが不可欠です。
ここが曖昧となった場合、ユーザから「勝手に二次利用された」「秘密情報が吸い上げられた」「退会後も残っている」と追及されやすく、またSaaS提供者側も改善・不正検知・品質維持ができなくなります。ポイントは、ユーザのコアデータは守りつつ、ログ・統計は運営に必要な範囲で確保するという線引きです。
この趣旨を表現した条項例として、次のようなものがあります。
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1. ユーザが本サービスに入力・送信・保存するデータ(以下「ユーザデータ」という)の権利はユーザに留保されます。当社は、ユーザデータを、本サービスの提供、保守、障害対応、不正利用の検知、問い合わせ対応のために必要な範囲で取り扱います。 2. 当社は、本サービスの提供に伴い取得するログ等(利用状況、アクセス情報、操作履歴等)を、本サービスの維持・改善、セキュリティ確保、不正防止、統計分析のために利用できます。これらを統計化・匿名化した情報は、ユーザを識別できない形で利用・公表できるものとします。
(※生成AI機能がある場合) 3. 当社は、ユーザデータを学習に利用しません。ただし、ユーザが明示的に同意した場合または当社所定の方法でオプトインした場合はこの限りではありません。 |
【運用上の注意点】
次の4点が運用上の注意点と考えられます。
・データ区分の可視化(ユーザデータ/ログ/統計の定義を、規約・プライバシーポリシー・管理画面表示で一致させるなど)
・取得/アクセス可能データの最小化とアクセス管理(社内の閲覧権限、委託先アクセス、マスキング、監査ログの整備など)
・保存期間(ログ・バックアップ・終了後保持の期間を明確化し、削除手続(復元不能化、削除対象の範囲)を実装するなど)
・学習利用(生成AIが絡む場合は、学習の有無、オプトイン/オプトアウト、学習対象外設定、第三者モデル提供の有無まで整理し、誤解を生まない説明(FAQ・申込画面)を整えることなど)
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「データの所有権は誰にあるのか」「ログや統計に機密が混ざらないか」「退会後に消えるのか」「AI学習に使われるのでは」と指摘してきます。
SaaS提供者側は、ユーザデータの権利留保を明確にしつつ、運営に不可欠なログ取得・分析の根拠(セキュリティ、品質維持)を条文化します。また、統計化・匿名化の要件、保持期間、削除の範囲、学習利用は原則しない(するなら明示同意)といった線引きを提示することで、ユーザ側との関係性構築を図ることになります。
(9)セキュリティ・個人情報・再委託
SaaSでユーザの信頼を左右するのは、「セキュリティ」「個人情報(個人データ)」「再委託(サブプロセッサ)」の三点を、契約と運用で一貫させられているかです。特にB2Bでは、ユーザは自社の社内規程・監査要件に照らして、SaaS提供者の安全管理措置、委託先管理、事故時対応(通知・再発防止)を厳しく確認します。
ここを利用規約本文だけで処理しようとすると抽象化しがちなので、実務上は「利用規約+DPA(データ処理条項)+サブプロセッサ一覧+セキュリティ概要(別紙)」という文書体系で、責任分界と手続きを具体化するのが安全です。
これらについては次のような条項例が考えられます。
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1. 当社は、本サービスの提供にあたり、ユーザデータ(個人データを含む)について、技術的・組織的安全管理措置を講じます。安全管理措置の概要は別紙(またはセキュリティページ)に定めます。 2. 当社は、本サービスの提供に必要な範囲で再委託先(サブプロセッサ)を利用できるものとし、サブプロセッサ一覧を公表します。当社は一覧の追加・変更を行う場合、事前に通知し、ユーザは合理的な理由があるときは所定の期間内に異議を申し立てることができます。 3. 当社は、ユーザデータに関するセキュリティインシデントを認知した場合、合理的な範囲で速やかにユーザへ通知し、調査・封じ込め・再発防止に協力します。 |
【運用上の注意点】
運用上の注意点として次の4つが考えられます。
・「別紙に書く」だけで終わらせず、実体としての統制(権限管理、暗号化、脆弱性対応、ログ監査、従業員教育)を整備し、年次で更新すること
・サブプロセッサを契約管理すること(秘密保持、セキュリティ条項、再委託の連鎖把握、国外所在・データ保存場所の把握など)
・インシデント対応はテンプレ化(初報に含める事項、続報頻度、窓口、復旧見込み、原因・再発防止)し、SLA・責任制限とも矛盾させないこと
・ユーザの監査要望には、個別立入監査を広く認めるのではなく、SOC2等の第三者報告書、セキュリティ質問票、年次レポートで代替できる設計にすること
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「再委託先が増えても止められないのか」「国外移転やクラウド基盤はどこか」「事故通知が「速やかに」だと遅い」「監査できないのは困る」と要請してきます。
SaaS提供者側は、サブプロセッサ一覧の公開+変更通知+異議申立て(または解除)という手続、通知のトリガー(認知時点等)と初報内容、監査代替手段(第三者保証・質問票対応)を条文化し、実運用(台帳・テンプレ・証跡)で裏付けることで、ユーザの納得を得ることになります。
(10)知的財産・第三者権利侵害
SaaSの知的財産条項は、単に「当社に権利がある」と宣言するだけでは足りません。運営者側としては、①SaaS本体(ソフトウェア・画面・ドキュメント)の権利帰属、②ユーザが投入するデータ/生成物の取扱い、③フィードバック(改善提案)の扱い、④第三者権利侵害が疑われた場合のプロセス、⑤OSS(オープンソース)利用の説明責任などを整理し、責任範囲と救済を過不足なく設計することが重要です。
ここが曖昧になった場合、ユーザから「成果物の権利は誰のものか」「権利侵害で差止になったらどうする」「OSSの義務違反に巻き込まれる」といった不安を突かれ、契約交渉が長期化します。
この点に配慮した条項例は次の通りです。
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1. 本サービスに関する著作権その他一切の知的財産権は当社または正当な権利者に帰属します。ユーザには、本利用規約に従い本サービスを利用する非独占的かつ譲渡不能の権利のみが許諾されます。 2. ユーザが本サービスに入力・送信するデータ(ユーザデータ)の権利はユーザに留保されます。 3. ユーザが当社に対して提供した意見・提案等(フィードバック)は、当社が無償で制限なく利用できるものとします(ユーザの秘密情報を含む場合を除く)。 4. 当社は、本サービスが第三者の権利を侵害すると判断した場合、(i) 侵害の回避または代替提供、(ii) 当該機能の停止または変更、(iii) 料金の一部返還その他合理的な措置を講じます。 |
【運用上の注意点】
運用上の注意点として次の3点が考えられます。
・権利侵害対応の社内手順(通報窓口、一次調査、機能停止判断、顧客通知、ログ保全)をテンプレ化し、停止・仕様変更条項と整合させること
・OSSライセンス条件を遵守すること(SBOMの整備、ライセンス表示、改変・再配布の有無、依存ライブラリ更新)
・生成AI機能を提供する場合は、出力物の権利帰属、第三者権利侵害リスクの注意喚起、ユーザの確認義務(素材の権利処理)を、利用規約/UI/ヘルプで一貫させること
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「SaaS利用で作った成果は自社のものか」「第三者から差止・クレームが来たら補償してくれるのか」「OSS義務違反のリスクはないか」と聞いてきます。
SaaS提供者側は、SaaS本体の権利帰属と利用許諾の限定、ユーザデータ・成果の扱い(留保の明確化)、権利侵害時の救済メニュー(回避・代替・停止・返金等)と責任上限(責任制限条項とのリンク)、OSS対応方針(表記・管理体制)を条文化し、運用証跡(SBOM、表示、対応フロー)で裏付けることで、ユーザからの疑問解消に努めることになります。
(11)免責・保証・損害賠償・責任制限
SaaSの免責・保証・損害賠償・責任制限は、SaaS提供者側のリスク上限を画す要となりますが、SaaS提供者都合だけを考えて規定を設けても法的有効性を担保できません。特にB2C(消費者契約)では、消費者契約法により、一定の免責・責任制限条項が当然に無効となり得ます(典型は、債務不履行による損害賠償責任の全部免除等)。
したがって、①B2BとB2Cで条項を分岐させる、②免責よりも「保証の範囲」「損害の類型」「上限」「手続(通知・調査協力)」を組み合わせる、③運用(障害報告・返金・クレジット)と整合させる、といった方策を講じたほうが現実的です。
この点については、次のような条項例が考えられます。
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1. 当社は、本サービスについて、特定目的適合性、完全性、正確性、有用性等を含め、明示又は黙示を問わず何らの保証もしません。 2. 当社がユーザに対して損害賠償責任を負う場合、当社の責任は、当該損害の直接かつ通常の範囲に限られ、逸失利益、間接損害、特別損害等について責任を負いません。また、当社の損害賠償責任の総額は、直近○か月にユーザが当社に支払った利用料金総額を上限とします。ただし、当社の故意又は重大な過失による場合はこの限りではありません。 |
【運用上の注意点】
運用上の注意点として次の3点が考えられます。
・返金/クレジット運用との整合(SLAクレジット/返金の条件・申請期限・算定方法を、請求フローとCSテンプレに反映させるなど)
・重要機能停止・アカウント停止との整合性確認(停止・解除が絡むと損害主張が膨らむため、停止要件・通知・復旧条件と責任制限が矛盾しないようにするなど)
・B2Cは「解約料・違約金」を定めることに配慮が必要(解約料・キャンセル料は、平均的損害を超える部分が無効となるため)
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「「一切責任を負わない」は無効では」「上限が低すぎる」「障害で事業損害が出ても泣き寝入りなのか」と指摘する場合があります。
SaaS提供者側は、全部免責は避けつつ、損害類型の限定(間接損害等)、上限の合理性(サービス価格・提供態様との均衡)、故意重過失などの例外、SLA/返金といった救済策でユーザの納得が得られるよう努めることになります。
(12)契約終了・解約・サービス停止・サービス終了
SaaSの紛争は、導入時よりも「出口」(解約・停止・終了)で顕在化しがちです。SaaS提供者側が最も避けたいのは、①未払い等で利用停止処分にしたところ「業務が止まった損害を補償しろ」と逆にクレームを受ける、②解約後に「データを返せ/消せ」といった要求を受ける、③サービス終了時に「移行できない」「ベンダーロックインだ」と言われてしまう、というパターンです。
出口設計の要点は、①終了類型(任意解約/更新不更新/解除/停止/終了)を分け、②手続(通知・猶予・復旧条件)を定型化し、③データの取扱い(返還・保持・削除)を具体化することです。
これらを考慮した条項例は次の通りです。
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1. ユーザは、当社所定の方法によりいつでも本契約を解約できます。解約の効力は申請日から○日経過後に発生し、日割り計算の有無は料金表の定めによります。 2. 当社は、ユーザが本規約に違反し、相当期間を定めて是正を求めても是正されない場合、本契約を解除できます。料金不払いその他緊急の必要がある場合、当社は事前通知なく本サービスの提供を停止できるものとします。 3. 本契約が終了した場合、当社は、終了日から○日間、ユーザデータのエクスポート機能を提供し、当該期間経過後、当社所定の方法によりユーザデータを削除します(法令上または運用上必要なバックアップ・ログの保持を除く)。 4. 当社が本サービスの提供を終了する場合、当社は終了予定日の○日前までに通知します。 |
【運用上の注意点】
運用上の注意点は、出口設計を「条文→画面→CS対応」で揃えることです。具体的には
・解約導線と証拠化(申請日時、解約日、誰が申請したか)を管理画面に実装し、メールでも確認通知を出す
・データの入手法を事前に用意する(エクスポート形式、対象範囲、保持期間、移行支援の有償メニューなど)
・未払い停止は段階運用(督促→一部制限→全面停止→解除)と復旧条件(入金確認、手数料、再発防止)をテンプレ化し、現場運用を統一すること
などが挙げられます。
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「解約したのに請求が続く」「停止されたらデータにアクセスできない」「データをいつまでに、どの形式で出せるのか不明」「サービス終了時の移行猶予が短い」と指摘します。
SaaS提供者側は、解約の効力発生日と課金関係、停止・解除の要件と手続(原則通知、緊急例外、復旧条件)、終了時データの返還・保持・削除のルール、サービス終了時の通知・猶予期間といった出口機能を条文化し、管理画面と運用で「ユーザが実行できる形」に落とすことで、ユーザとの軋轢を解消することになります。
(13)紛争対応の設計
SaaSの紛争対応条項は、単に「最後に付ける雛形」ではありません。
SaaS提供者側で特に重要なのは、①準拠法・管轄(どこで、どの法律で争うか)、②通知(改定・停止・請求などの重要連絡をどう到達させるか)、③言語(多言語展開時の優先言語)を具体化し、実運用(メール配信・管理画面掲示・同意履歴)と整合させることです。ここが曖昧な場合、海外ユーザとの紛争で想定外の法域に引き込まれたり、「通知を見ていない」「英語版と日本語版で違う」といった争点が増えます。
この点を考慮した条項例は次の通りです。
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1. 本契約は日本法を準拠法とし、本サービスに関して紛争が生じた場合、当社本店所在地を管轄する○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とします。 2. 当社からユーザへの通知は、当社がユーザから届け出を受けたメールアドレスへの送信、または管理画面への掲示その他当社所定の方法により行い、当社が送信または掲示した時点で到達したものとみなします。ユーザは、メールアドレスその他登録情報を最新に保つものとします。 3. 本利用規約を多言語で提供する場合、日本語版を正文とし、翻訳版との間に齟齬があるときは日本語版が優先します。 |
【運用上の注意点】
運用上の注意点は3点考えられます。
・通知の実効性を担保すること(「到達みなし」を定めても、実際にメールが送られていない/バウンスしている/管理画面掲示が埋もれていると説得力が落ちます。重要通知は、メール+管理画面+(必要に応じて)アプリ内ポップアップ等、複線で実装し、送信ログ・掲示ログを残すなどの工夫を講じるべきです)
・準拠法と管轄は、提供対象(国内B2B/国内B2C/越境)と整合させること(なお、越境の場合、現地強行法規や消費者保護の適用余地が残るため、条項は万能ではないことに注意)
・言語優先は、UI・ヘルプ・注文画面の表示言語とも合わせること
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「メールは届いていない」「担当者が退職して見ていない」「英語版では違う説明だった」「遠方裁判は不合理」と指摘します。
SaaS提供者側は、通知手段と登録情報更新義務、証拠(送信・掲示ログ、同意履歴、版管理)を条文化し、運用で裏付けることで説得可能な状態にします。
(14)運用ガバナンス(利用規約等の改定)
SaaSの利用規約は、作成した瞬間から「陳腐化リスク」と「運用乖離リスク」が始まります。機能追加、料金改定、サブプロセッサ変更、セキュリティ要件の更新、法令・ガイドライン対応など、改定が必要になる局面は必ず来るため、SaaS提供者側は「利用規約等の改定を実行するためのルール」を先に作っておくべきです。
これを作成しない場合、営業資料や管理画面表示、CSの案内が規約と食い違う等の事態が発生し、いざ紛争になると収拾がつかない状態にもなりかねません。
運用ガバナンスの要点は、①改定の必要性を検知し、②社内で審査・合意し、③ユーザへの告知・同意を取り、④旧版・同意証拠を保全する一連のサイクルを標準化することです。
この趣旨を反映させた条項例は次の通りです。
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1. 当社は、本規約を変更することがあります。当社は、変更内容および効力発生日を、当社所定の方法(メール送信、管理画面掲示等)により事前に通知します。ユーザが効力発生日以降に本サービスを利用した場合、当該変更に同意したものとみなします。 2. 当社は、重要な変更について、別途当社所定の方法によりユーザの明示同意を求めることがあります。 |
【運用上の注意点】
運用上の注意点として次の5点が考えられます。
・改定トリガーの定義(機能・API変更、料金表変更、SLA変更、データ利活用方針変更、サブプロセッサ追加、停止・制裁運用変更など、改定が必要な変更をチェックリスト化するなど)
・区分と承認フロー(軽微変更(誤記・表現修正)/通常変更/重要変更(ユーザ不利益が大きい、料金・データ・停止・責任制限等)に区分し、法務・CS・開発・営業・経営の承認ルートとリードタイムを固定するなど)
・文書整合の横断レビュー(利用規約本文だけでなく、料金表、SLA、サポートポリシー、プライバシーポリシー、ヘルプ、申込画面、営業資料、管理画面表示を同時に更新する更新対象台帳を作成するなど)
・告知、同意、証拠化(告知チャネル(メール/管理画面/アプリ内)を選定し、送信ログ・掲示ログ・同意日時・同意版を保全する。なお、重要変更は再同意を原則化する)
・CSテンプレと例外管理(改定FAQ、反対・クレーム時の回答テンプレ、経過措置(旧プラン猶予等)、例外承認の基準と記録を整備するなど)
【ユーザとの交渉対応】
ユーザ側は「いつの間にか規約が変わっている」「重要変更なのに同意していない」「営業説明と違う」と主張してきます。
SaaS提供者側は、改定の区分(重要変更の定義)、告知の実効性、再同意の基準、旧版・同意証跡の保全の社内ルールを作成した上で、ユーザに対して統一的な説明行い、ユーザの納得が得られるようにします。
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ソフトウェアの不正使用トラブルを弁護士に相談・依頼するメリット
利用規約はテンプレを流用して終わりでは、運用で必ず綻びます。
弁護士に相談・依頼することで、法的に破綻しない条項設計はもちろん、SLA・課金・停止・データといったトラブルが生じやすい事象対応まで見据えた運用ルールを短時間で整備できます。
【弁護士に相談・依頼するメリット】
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①事業モデルに合わせて「揉めどころ」を先回りできる 同じSaaSでも、B2B/B2C、無料トライアル、従量課金、API連携、委託・再販の有無でリスクは変わります。弁護士が前提を整理し、争点化しやすい領域(課金、停止、データ等)を優先して条項と手続を設計します。
②「書面」だけでなく、画面・運用・証拠まで整合させられる 規約が正しくても、申込画面の表示、解約導線、請求フロー、ステータス通知がズレると紛争になります。弁護士が文書体系(規約・料金表・SLA・DPA等)と運用証拠(同意履歴、通知ログ、インシデント報告)を一体で点検し、相互に矛盾が生じないように反映させます。
③クレーム・交渉時に「通る落とし所」を作り、対応を標準化できる 「一方的変更」「SLA未達」「停止の正当性」「データ持ち出し」などは、相手の出方次第で泥沼化します。弁護士が想定問答とテンプレ(督促、停止通知、例外承認、報告書等)を整備し、現場判断のブレを減らして交渉コストと炎上リスクを下げます。 |
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リーガルブレスD法律事務所によるサポート内容
SaaSの利用規約は、ひな形を整えるだけでは足りません。課金・解約、停止対応、データの取扱い、SLAや再委託など、運用局面で揉めるポイントを先回りして設計し、現場で回るルールに落とすことが重要です。
利用規約の作成から運用設計まで、リーガルブレスD法律事務所にご相談ください。
■リーガルブレスD法律事務所の特徴
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【特徴1】SaaS運営の“契約書以外”まで射程に入れたリスク設計 利用規約だけでなく、申込画面の同意文言、サポート返信テンプレ、障害時の告知文、仕様変更の案内など、トラブルの起点になりやすい「運営文面・表示」を含めて点検・整備します。規約と現場の言い回しのズレを減らし、炎上・解約・未払いの芽を早期に潰します。
【特徴2】IT/SaaSの契約実務に即した“交渉で使える”条項設計 B2B SaaSで実際に争点になりやすい、SLA(計測・除外・救済)、データ(ログ・統計・再委託)、仕様変更(互換性・廃止予告)、責任制限(例外設計)などを、契約審査や顧客の法務レビューで通りやすい構造で提示します。単に強い条文ではなく、ビジネスを止めない落とし所を作ります。
【特徴3】変化前提のSaaSに合わせた「改定・証跡」設計に強い 機能追加、料金改定、再委託先変更、生成AI機能の追加など、SaaSは頻繁に前提が変わります。改定履歴の残し方、同意取得の証跡、通知ログの取り方、重要変更時の再同意など、後から説明できる証拠の設計までセットで整え、長期運営での契約リスクを下げます。 |
(1)法律相談サービス
リーガルブレスD法律事務所では、これまでにお取引のない事業者様からのご相談を積極的に受け入れています。
早めのご相談であればあるほど、ダメージの少ない解決策をご提案することが可能です。
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ご相談内容例 |
・自社SaaSの事業モデルを前提に、利用規約で揉めやすいポイントの優先順位を整理したい ・現行の利用規約(+料金表/SLA等)について、危ない条項、足りない条項を短時間で洗い出したい ・未払い、解約、アカウント停止、データ持ち出し等の運用トラブルに対して、初動方針を決めたい |
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サポート内容例 |
・ヒアリング+論点マップ作成 B2B/B2C、課金方式、提供範囲、データ種別、再委託の有無などを前提に、優先度の高い論点(課金・停止・データ・SLA・仕様変更等)を絞り込み、次に打つべき手立てを整理します
・重要条項に絞ったクイック診断 90分で全条文を精査するのではなく、事故になりやすい条項群(料金・更新/責任制限/データ・再委託/停止・解除/変更・終了)を中心に、リスクと改善方針を具体的に提示します
・ケース別の対応方針整理 未払い督促→停止の手順、停止時にデータアクセスをどう扱うか、解約の効力発生と課金の境界、データ返還・削除の説明の仕方など、実務で迷いやすい点について判断軸を作ります |
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相談者が得られるメリット |
・短時間で「今いちばん危ない論点」と「次にやるべき作業」が明確になります(やることが散らばらず、優先順位を付けて進められます) ・顧客審査、クレームで突かれやすい条項を重要部分から先に手当てできます(全面改訂の前に、火種を最小コストで減らせます) ・運用トラブル時の判断がぶれにくくなります(停止・解約・データ対応などで、社内の対応が統一され、炎上や例外対応の連鎖を抑えられます) |
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弁護士費用 |
1回90分以内で15,000円(税別) |
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実施方法 |
①ご予約(お問い合わせフォーム又はお電話にて日程調整) ②事前準備(関係資料を共有いただきます) ③相談実施(オンライン又は対面) ④解決策提示(リスク診断、交渉方針などを具体的にご提示) ⑤アフターフォロー(別途契約の上、交渉代理や訴訟対応、継続支援へ移行) |
お問い合わせフォームへのリンク
(2)その他サービス(法律相談以外のサービス)
リーガルブレスD法律事務所では、法律相談サービス以外にも様々なサービスをご提供しています。
ここでは一例として、SaaS提供者内で従業員の出入りが激しく、ノウハウ等の漏洩防止や競業禁止の必要性が高い事業者向けの労務書式パックサービスをご案内します。
■労務書式パックサービス
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ご依頼内容例 |
・入社時に締結すべき書類(雇用・業務委託)を最小セットで整えたい ・退職/離職時の情報持ち出しやアカウント管理のルールを作りたい ・副業/競業、発明/著作権、秘密情報の取り扱いについて、社内の統一ルールを決めたい |
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サポート内容例 |
・入社時書類の整備 雇用契約書/労働条件通知書、秘密保持・発明帰属条項、業務委託契約(成果物帰属・OSS混入・再委託・検収)などから、貴社の採用形態に合わせて「必要最小限のセット」を選定し、使える形に調整します。
・退職/離職の出口設計コンサルティング 返却物、アクセス権限剥奪(ID、クラウド、リポジトリ、SaaS管理画面等)、データ持ち出し禁止の再確認、機密情報の保持、顧客対応の引継ぎなどを、チェックリストと社内手順書として整備します。
・社内ルールの一本化 副業申請、競業判断の基準、発明/著作権の扱い、秘密情報の定義と取り扱い、端末・クラウド利用の最低限ルール等を、A4数枚程度の社内規程として整理し、社員向けの説明文(よくある質問)もあわせて用意します。 |
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依頼者が得られるメリット |
・SaaSの資産(コード・仕様・顧客情報・ノウハウ)の流出リスクを、最小コストで下げられる ・採用スピードを落とさずに、入社から退職までの手続きを定型化できる(属人化を減らせる) ・雇用、業務委託の境界や成果物帰属が明確になり、後から揉めるポイントを先に潰せる ・社員、外注に対して指摘できることが揃い、運用のブレや例外対応が減る |
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弁護士費用 |
15万円(税別)~ 「労務書式パックサービス」は、スポット相談(時間課金)ではなく、入社から退職までの最低限の書類と運用セットを整備する納品型サービスです。納品するべき書式数や作業量、難易度に応じて変動します。 |
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実施方法 |
①オンラインヒアリング(30分程度、無料)を実施し、課題の抽出とご要望事項を確認します ②実施計画案とお見積りを提示します ③ご依頼者様にて検証して頂き、ご要望を踏まえて実施計画を確定させます ④実施計画に沿って、順次作業を進めていきます |
お問い合わせフォームへのリンク
(3)法律顧問プラン(顧問弁護士サービス)のご案内
リーガルブレスD法律事務所では、SaaS利用規約の作成及び運営に関する対応に加えて、日々の経営判断で生じるリスクや停滞を減らすために、継続的に伴走する顧問弁護士サービスを提供しています。
単発の相談では対応しにくい「事業の前進」と「リスク管理」を、同じ窓口でまとめて進めたい企業に適したサービスです。
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ご依頼内容例 |
・利用規約、料金表、SLA、DPA等の継続改定を、事業変更に合わせて常時回したい ・顧客審査(大手・上場企業等)の契約交渉を、スピードを落とさず継続的に進めたい ・インシデント、不正利用、未払い等の運営トラブルに備え、社内ルールとテンプレ運用を整備し続けたい |
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サポート内容例 |
・改定ガバナンスの運用支援 機能追加、料金改定、サブプロセッサ変更、生成AI機能追加などのたびに、改定要否と影響範囲を判断し、告知・同意・証跡の取り方まで含めて更新が回る体制構築の支援を行います
・契約交渉の伴走 相手方の雛形、セキュリティ質問票、DPA要請、責任制限の修正要求などに対し、受注スピードを意識しつつ、譲れる点/譲れない点と代替案を提示し、継続的に交渉を進められるよう支援します
・運用テンプレと社内ルールの継続整備 インシデント報告、ステータス更新、利用停止・解除の通知、未払い督促、違反調査の進め方などをテンプレ化すると共に、実際の事案の対応に当たって属人化しないよう支援します |
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依頼者が得られるメリット |
・改定、交渉、運用が継続して回り、法務がボトルネックになりにくくなります(スピードと安全性を両立) ・大手顧客の審査、契約交渉の往復が減り、受注までの時間が短くなります(落とし所とセールストークが一貫する) ・トラブル対応がテンプレ化され、現場判断のブレや炎上リスクが下がります(証拠・説明・再発防止まで含めて整理できる) |
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実施方法 |
①お問い合わせ後、オンライン面談(30分程度、無料)を実施し、ご要望事項の聞き取りやプランの説明を行います ②ご提案書(見積書)の提示 ③顧問契約の締結 ④窓口の開設(専用メール、チャットの提供) ⑤サービス開始 ・日常的な対応(契約書レビュー、相談に即応(即日~数日以内対応可)) ・ミーティング(必要に応じて経営課題、法務リスクを総点検) ・追加支援(必要に応じて交渉代理、訴訟対応、研修実施などを提供) |
<2026年1月執筆>
※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。