人事トラブルを回避する法律実務の基礎 ~労働時間問題、賃金から退職、解雇まで~

このページでは、人事トラブルを回避する法律実務の基礎 をクイズ形式でご紹介しています。
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※平成29年末時点での法令に基づいた解説集であることにご留意願います。

 

1.労働時間・賃金に関するトラブルと解決の視点

2.退職・解雇に関するトラブルと解決の視点

 

1.労働時間・賃金に関するトラブルと解決の視点

 

Q:タイムカードを導入しないことによって…

 

① 出退勤時間が不明確になることから、残業代請求の抑制策につながる。
② 特に会社にとって残業代請求への対応に変化が生じるわけではない以上、メリットもデメリットも生じない。
③ 正確な出退勤時間を把握できないことになり、後々の裁判等で労働者の言い分に沿った出退勤時間がまかり通ってしまうリスクがある。

 

 

Q:賃金支払いの対象となる労働時間とは…

① 就業規則や労働契約書に定めている始業時間から終業時間のことをいう。
② タイムカードに打刻又は勤怠管理表に記載されている時間のことをいう。
③ 使用者(会社・事業主)の指揮命令下に置かれている時間のことをいう。

 

 

 

 

Q:労働者全員に一斉に休憩時間を付与しなかった場合…

① 休憩時間を付与したことにはならない。
② 労使協定の締結など法律上の要件を満たす場合は休憩時間を付与したことになる。
③ 使用者の指揮命令下にない限り、休憩時間を付与したことになる。

 

 

 

Q:来客するまでの手待ち時間や仮眠時間は…

① 労務を提供しているわけではない以上、休憩時間に該当する。
② 原則として休憩時間に該当しないが、就業規則に定めることで休憩時間とみなすことができる。
③ 休憩時間に該当しない。

 

 

 

Q:予め定められた始業時刻前に、労働者が朝一番の会議のための資料作成のために早出した場合…

 

① 早出した時間が労働時間の開始時刻となる。

② 定刻前である以上、始業時刻が労働時間の開始時刻となる。

③ 原則として始業時刻から労働時間の開始時刻となるが、始業開始前に資料作成をすることが使用者より義務付けられていた場合は、早出した時間から労働時間の開始時刻となる。

 

 

 

Q:所定労働時間終了後、会社内で行われている英会話研修に参加した場合…

 

① 会社内で行われている以上、英会話研修終了時間をもって労働時間の終了時刻として取り扱う。
② 所定労働時間終了後の研修である以上、所定労働時間の終了時間をもって労働時間の終了時刻として取り扱う。
③ 英会話研修への参加が義務付けられている場合に限り、英会話研修終了時間をもって労働時間の終了時刻として取り扱う。

 

 

 

Q:社内ルールでは残業許可制になっているにもかかわらず、上司の許可を得ずに残業した場合…

 

① 所定労働時間の終了時間をもって労働時間の終了時刻とする。
② 残業が終了した時間をもって労働時間の終了時刻とする。
③ 残業に際して上司の許可が絶対条件となっており、かつ上司の許可が必要である運用が形骸化していないのであれば、所定労働時間の終了時間をもって労働時間の終了時刻と取り扱ってよい。

 

 

 

 

Q:終日、社外での業務遂行を行った場合…

 

① 常に「事業場外のみなし制度」が適用される結果、原則として所定労働時間を労働したものとしてカウントされる。
② 現代社会では携帯電話やスマートフォンで常に連絡を取ることができる以上、「事業場外のみなし制度」の適用は無く、現場ごとでの業務遂行時間を労働時間としてカウントする必要がある。
③ 使用者において労働時間を算定しがたい事由が存在する限り、「事業場外のみなし制度」の適用はある。

 

 

 

 

Q:自宅に持ち帰って仕事を行った(いわゆる風呂敷残業)場合…

 

① 「事業場外のみなし制度」が適用された上で、労働時間としてカウントされることになる。
② 自宅での業務遂行時間がそのまま労働時間としてカウントされることになる。
③ 原則として労働時間にカウントされることは無い。

 

 

 

 

 

Q:年俸制を採用していることを理由に、何時間働いても残業代を支払わないと主張することは…

 

① 適法なものである。
② 原則的には違法な主張であるが、一定額以上の賃金を支払っているのであれば残業代を支払う必要はない。
③ 明らかな間違いであり、法律が定める労働時間を超えた場合は残業代を支払う必要がある。

 

 

 

 

Q:他の従業員と比較して1.5倍以上の給料を支払っていることを理由に、時間無制限で残業代が含まれていると主張することは…

 

① 適法なものである。
② 給料が多いことと引き換えに残業代込みであることを合意している限り、適法である。
③ 明らかに間違いであり、法律が定める労働時間を超えた場合は残業代を支払う必要がある。

 

 

 

 

Q:いわゆる定額残業代(固定残業代、みなし残業代)は…

 

① 定額残業代(固定残業代、みなし残業代)という名称の手当で支給しない限り、残業代として支給したことにはならない。
② 名称に制限はなく、定額残業代(固定残業代、みなし残業代)の支払いさえ行えば、当然に残業代を支払ったことになる。
③ 基本給に残業代込みとする形の定額残業代はほぼ認められない可能性が高く、基本給とは別の手当として支給する形の方がよい。

 

 

 

Q:社内階級として部長職や課長職に就任している者に対し、何時間働いても残業代を支払わないと主張することは…

 

① 適法である。
② 原則違法であるが、管理職手当を支払っている限りは残業代支払い義務がなくなる。
③ 労働基準法上の管理監督者に該当すれば残業代の支払い義務はないが、該当することは稀であり、基本的には残業代支払い義務

が生じると考えたほうが良い。

 

 

 

2.退職・解雇に関するトラブルと解決の視点

 

Q:内心では解雇するつもりがなくても、社長が「明日から来なくていい!」と労働者に対して言ってしまった場合…

 

① 内心では解雇するつもりはなかった以上、解雇したことにはならない。
② 「解雇する」と言ったわけではない以上、解雇したことにはならない。
③ 外部的に表示した言葉から判断する以上、解雇したといわれる可能性が高い。

 

 

 

 

 

Q:就業規則が存在しない、または就業規則や労働契約書等に解雇に関する規定が無い場合…

① 普通解雇、懲戒解雇を問わず、一切解雇を行なうことはできない。
② 解雇することは可能である。
③ 懲戒解雇はできないが、普通解雇は可能な場合がある。

 

 

 

Q:事業主・会社が労働者に対し、退職をお願いすることは…

① 違法である。
② 労働基準法及び労働契約法に従った手続きを満たす限り、適法である。
③ 法律上の制限はなく、全く自由である。

 

 

 

Q:退職勧奨を行う際、特定の労働者に対してのみ行うことは…

① 違法である。
② 全く問題ない。
③ 原則問題は無いが、例えば、労働組合嫌悪による組合差別として退職勧奨するといった事例の場合は法律上問題になる。

 

 

 

Q:退職勧奨に応じない労働者に対し、繰り返し説得することは…

① 全く問題ない。
② 労働者本人が一度でも拒否した以上は、一切退職勧奨を行ってはならない。
③ 必要に応じて再度説得することは問題ないが、行き過ぎると退職強要として違法行為となり得る。

 

 

 

Q:一定期間の無断欠勤や、私傷病休職の期間満了時点において復職しない場合に、自動的に退職扱いとすることは…

 

① 退職扱いにすることはできず、必ず解雇手続きを行う必要がある。
② 自己都合による退職扱いとしても何ら問題ない。
③ 就業規則等に退職扱いとして取扱う旨明記されているのであれば原則問題ないが、特に定めが無い場合は解雇手続きを行う必要がある。

 

 

 

Q:勤務成績不良による解雇を行うことは…

① 会社が設定した目標に達していないのであれば解雇しても問題はない。
② 会社が期待する事項を予め労働者に告知したにもかかわらず、期待に応えることができなかったというのであれば解雇しても問題はない。
③ 会社が期待する能力について労働者と認識共有し、期待値を下回っても何度も指導を繰り返し、それでも改善が見込まれない段階に至って初めて解雇が可能となる。

 

 

 

Q:いわゆる試用期間中の労働者に辞めてもらう場合…

① 試用期間の途中に辞めてもらう場合は解雇となるが、試用期間満了時に辞めてもらう場合は契約期間の終了に過ぎない以上、解雇にならない。
② 解雇予告手当の支給は不要である。
③ 法律上は普通解雇手続きとなるので、解雇予告手続き又は解雇予告手当の支払い、解雇の正当性(客観的かつ合理的な理由の存在と社会通念上の相当性)等を検討する必要がある。

 

 

 

Q:労働者への賃金支払いに苦労するほど会社経営が苦しい場合…

① 30日前に解雇の予告通知を行なえばよい。
② 平均賃金30日分以上の解雇予告手当を支払えばよい。
③ 解雇の予告通知または解雇予告手当の支払いのみならず、内容・原因を踏まえた解雇の正当性(客観的かつ合理的な理由の存在と社会通念上の相当性)が最低限必要となる。

 

 

 

Q:法律上有効な解雇とするためには、

① 30日前に解雇の予告通知を行なえばよい。
② 平均賃金30日分以上の解雇予告手当を支払えばよい。
③ 解雇の予告通知または解雇予告手当の支払いのみならず、内容・原因を踏まえた解雇の正当性(客観的かつ合理的な理由の存在と社会通念上の相当性)が最低限必要となる。

 

 

 

Q:懲戒解雇手続きを選択する場合…

① 就業規則等に定める懲戒解雇事由に該当する限り、懲戒解雇手続きを実行しても問題ない。
② 降格や賃金カット等の懲戒処分を行った後であっても、同一事由で懲戒解雇手続きを実施することが可能である。
③ 形式的に懲戒解雇事由に該当しても、やむにやむを得ない(重大かつ悪質)ものといえる場合のみに限定して、慎重に懲戒解雇手続きを実施したほうが良い。

Q:解雇予告手当の除外認定手続きを選択する場合…

① 懲戒解雇事由の有無によって除外認定の可否が決まるので、懲戒解雇事由の存在を証明できるよう、準備するべきである。

② 懲戒解雇手続き実施と同時に除外認定の申請手続きを行った方が良い。
③ 懲戒解雇事由と除外認定事由とは異なることを意識しつつ、懲戒解雇手続きを実施する前に、除外認定手続きを行うことが望ましい。

 

 

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