試用期間満了と退職(解雇)

試用期間満了と退職(解雇)

<質問>

 試用期間を6ヶ月と定めて医療スタッフを採用しましたが、業務上のミスが多く能力面で不安があります。そこで、正式採用せず、試用期間満了と同時に辞めてもらおうと思っていますが問題ないでしょうか。

<回答>

 試用期間中といえども、労働契約は成立していますので、試用期間満了と同時に従業員を辞めさせるということは「解雇」に該当します。つまり、法的には、試用期間契中の契約と正式採用との契約は別ではなく、一つの労働契約と考えることになります。

 

 したがって、解雇に値するだけの客観的かつ合理的な解雇事由が必要となります。
なお、採用してから14日を越えて雇用されている場合、①即時解雇の場合は30日分以上の解雇予告手当の支給が必要となりますし、②即時解雇しないのであれば30日前の解雇予告(30日間は勤務してもらう)を行う必要があります。
【解説】
 一般的には、試用期間は正式採用決定前の期間であり、当該期間中に労働者の勤務態度、能力、技能などを検証する目的で設定されます。

 

 このような社会通念からすれば、貴院の従業員として不適格である以上、正式採用しないという判断を行っても良いはずなのですが、残念ながら法律的には「解雇」と評価されます。したがって、客観的かつ合理的な解雇事由が求められます。特に、本件のような場合であれば、業務上のミスの程度・回数及び業務遂行上のミスを少なくするための指導措置など貴院の対応も考慮されますので、単にミスが多いという理由だけでは正式採用を拒絶するのは難しいと言わざるを得ないでしょう。

 

 なお、試用期間中の本来の目的を重視して、一般的な解雇よりも広く認められても良いとする裁判例もあります。
しかしながら、何を持って「広く」と解釈して良いかは非常に微妙な判断を伴いますので、弁護士等の専門家に相談した方がよいでしょう。

 

 ちなみに、当該スタッフの能力や適性等を判断するために、試用期間中に相当する期間を有期雇用契約として締結する方法も考えられます。たしかに、有期雇用契約である以上、契約期間(=試用期間)満了とともに契約を打ち切ることで、合法的に辞めてもらうことができると考えられるかもしれません。もっとも、実質的に試用期間に過ぎないというのであれば、単なる解雇規制の潜脱となってしまいますし、実際の裁判例でも実質的には解雇であると判断した事例も存在しますので、その方策の立て方には注意が必要です。