能力不足と解雇

能力不足と解雇

<質問>

 前職も医療機関で勤務していたことから、即戦力として雇用した医療スタッフがいるのですが、物覚えが悪く、他のスタッフのみならず患者さんにも迷惑をかけており、さすがに面倒見きれないと考えるようになりました。今日明日にも解雇したいのですが、問題ないでしょうか。

<回答>

 解雇するのであれば、①解雇手続きに問題が無いか、②解雇理由に正当性があるのか、2つの観点から検討する必要があります。

 

 ①については、就業規則に定める解雇事由に該当するのか、弁明手続き(解雇対象者の言い分を聞く手続き)を行ったか、即時解雇であれば解雇予告手当の支払い準備ができているか、予告解雇であれば30日前の解雇通知がなされているか等がチェック項目になります。

 

 ②については、そもそも解雇理由となった事実関係について、どの程度の裏付けが取れているのか、当該事実関係を前提にした場合、解雇処分が果たして妥当といえるのか(厳しすぎないか)等がチェック項目となります。
【解説】
 解雇を検討するに際してのポイント事項は、上記回答欄に記載した通りです。

 

 ところで、本件のような問題を検討する場合、能力不足というからには、「あるべき能力」と「スタッフの現状」とを比較対照させる必要があるのですが、この「あるべき能力」をどうやって設定し、立証するのかは実は非常に難しいところがあります。なぜならば、必ずしも数値化できるわけではありませんし、客観的な指標を定めることが事実上不可能だからです。

 

 したがって、能力不足で解雇するというのであれば、「あるべき能力」を当該スタッフに分からせるプロセスを経る必要があること、具体的には、注意指導を行うに際して、医療機関側が求める能力はどういうものなのか具体的に明示し、当該スタッフに理解させ、目標(ゴール)として設定することが必要となります。また、1回や2回の注意指導では足りず、繰り返し注意指導を行ったけれども、手の施しようがない…という状態にまで持っていく必要があります。

 

 なお、解雇となると双方にとってリスクがありますので(医療機関側としては不当解雇であるとして後で争われてしまうリスク、労働者側としては職歴に傷がつき再就職に悪影響が出るリスクなど)、上記プロセスの段階で退職勧奨を行い、できる限り合意退職させる方向に持っていくことが望ましいと思われます。