弁護士による就業規則チェックポイント④(休暇等)

 就業規則の作成は社会保険労務士の先生にお願いして作成してもらったり、社長自らがインターネットや書籍などを見ながら作成したりすることが多いようです。

就業規則を作成することは、労務トラブルによるリスクを低減させるためにも非常に有効なことです。
ただ、実際の現場のトラブル、特に労働裁判や労働審判、労働組合による団体交渉、労働基準監督署の介入などといった事例を経験しないことには、どうしても見えてこない視点も存在します。

そこで、厚生労働省が公表しているモデル例を参照しながら、使用者・会社側弁護士の視点で、就業規則のチェックポイントを解説したいと思います。

なお、モデル例は平成25年4月に公表されていたパターンを参照しています。

第5章 休暇等

(年次有給休暇)
第20条 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

 勤続期間  6か月  1年
6か月
 2年
6か月
 3年
6か月
 4年
6か月
 5年
6か月
 6年
6か月以上
 付与日数  10日  11日  12日  14日  16日  18日  20日

 

2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

週所定労働日数 1年間の所定労働日数 勤    続    期    間
 6か月  1年
6か月
 2年
6か月
 3年
6か月
 4年
6か月
 5年
6か月
 6年
6か月
以上
 4日  169日~216日  7日  8日  9日  10日  12日  13日  15日
 3日  121日~168日  5日  6日  6日  8日  9日  10日  11日
 2日  73日~120日  3日  4日  4日  5日  6日  6日  7日
 1日  48日~72日  1日  2日  2日  2日  3日  3日  3日

 

3 第1項又は第2項の年次有給休暇は、労働者があらかじめ請求する時季に取得させる。ただし、労働者が請求した時季に年次有給休暇を取得させることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に取得させることがある。
4 前項の規定にかかわらず、労働者代表との書面による協定により、各労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。
5 第1項及び第2項の出勤率の算定に当たっては、下記の期間については出勤したものとして取り扱う。
①   年次有給休暇を取得した期間
②   産前産後の休業期間
③   育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)に基づく育児休業及び介護休業した期間
④   業務上の負傷又は疾病により療養のために休業した期間
6 付与日から1年以内に取得しなかった年次有給休暇は、付与日から2年以内に限り繰り越して取得することができる。
7 前項について、繰り越された年次有給休暇とその後付与された年次有給休暇のいずれも取得できる場合には、繰り越された年次有給休暇から取得させる。
8 会社は、毎月の賃金計算締切日における年次有給休暇の残日数を、当該賃金の支払明細書に記載して各労働者に通知する。

 上記条項は基本的には法令に書いてある内容を就業規則にも反映させてだけに過ぎませんので、特段の問題はありません。
実務上留意したいのは、上記第4項、第6項及び第7項です。

まず、上記第4項ですが、いわゆる「年休・有給の計画的付与」と呼ばれる制度です。計画的付与の制度を導入する義務はないのですが、色々な事情で年休の取得率を向上させる必要性がある企業にとっては、導入のメリットがあると思います。また、賃金管理の観点からは、いわゆるお盆休みや年末年始休暇の時期を計画的付与の導入によって年休扱いにするという方法もあり得るかもしれません。

次に、上記第6項ですが、年次有給休暇の消滅時効に関する規定になります。まず確認ですが、実は法律上、年次有給休暇の消滅時効を真正面に定めた規定は存在しません。解釈上は2年が穏当だろうと考えられているという意味合いに過ぎません。このため、過去2年より前に遡って取得した年休を要求された場合、あるいは退職時に年休の買い取りを要求された場合、対応に苦慮することがあります。そのような場面に備えて、穏当な解釈とされる2年の消滅時効を明記するのはリスクヘッジの観点から望ましいといえます。

さらに、上記第7項ですが、付与された年次有給休暇のどれから消化していくべきかのルールに関する内容となります。これも意外と現場実務では頭を悩ますものであり、残年休日数がいくらかというときに、古いものから消化したのか、新しいものから消化したのかはっきりさせておかないことにはトラブルとなります。なお、どちらから消化するのか特段のルールはありませんので、新しい分から消化していくという形で規定しても、直ちに違法とはならないと考えられます。

 

(年次有給休暇の時間単位での付与) 
第21条 労働者代表との書面による協定に基づき、前条の年次有給休暇の日数のうち、1年について5日の範囲で次により時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という。)を付与する。
(1)時間単位年休付与の対象者は、すべての労働者とする。
(2)時間単位年休を取得する場合の、1日の年次有給休暇に相当する時間数は、以下
のとおりとする。

  ① 所定労働時間が5 時間を超え6 時間以下の者…6 時間
  ② 所定労働時間が6 時間を超え7 時間以下の者…7 時間
  ③ 所定労働時間が7 時間を超え8 時間以下の者…8 時間
(3)時間単位年休は1時間単位で付与する。
(4)本条の時間単位年休に支払われる賃金額は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の1時間当たりの額に、取得した時間単位年休の時間数を乗じた額とする。
(5)上記以外の事項については、前条の年次有給休暇と同様とする。

最近の法改正により認められた制度ですが、福利厚生の充実という意味では導入の価値があるものの、時間管理・賃金管理等の労務管理が非常に面倒なのも事実です。

使用者・会社側弁護士の視点としては、よほど労務管理がしっかりしている企業・事業者以外は、時間単位の年次有給休暇の制度は設けない方がベターではないかと考えます。

(産前産後の休業) 
第22条 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性労働者から請求があったときは、休業させる。
2 産後8週間を経過していない女性労働者は、就業させない。
3 前項の規定にかかわらず、産後6週間を経過した女性労働者から請求があった場合は、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることがある。
(母性健康管理の措置) 
第23条 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、所定労働時間内に、母
子保健法(昭和40年法律第141号)に基づく保健指導又は健康診査を受けるために申出があったときは、次の範囲で時間内通院を認める。
① 産前の場合
妊娠23週まで・・・・・・・・4週に1回
妊娠24週から35週まで ・・・2週に1回
妊娠36週から出産まで ・・・・1週に1回
ただし、医師又は助産師(以下「医師等」という。)がこれと異なる指示をしたときには、その指示により必要な時間
② 産後(1年以内)の場合
医師等の指示により必要な時間
2 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、保健指導又は健康診査に基づき勤務時間等について医師等の指導を受けた旨申出があった場合、次の措置を講ずる。
① 妊娠中の通勤緩和措置として、通勤時の混雑を避けるよう指導された場合は、
原則として1 時間の勤務時間の短縮又は1 時間以内の時差出勤を認める。
② 妊娠中の休憩時間について指導された場合は、適宜休憩時間の延長や休憩の回
数を増やす。
③ 妊娠中又は出産後の女性労働者が、その症状等に関して指導された場合は、医
師等の指導事項を遵守するための作業の軽減や勤務時間の短縮、休業等の措置をとる。

(育児時間及び生理休暇) 
第24条 1歳に満たない子を養育する女性労働者から請求があったときは、休憩時間のほか1日について2回、1回について30分の育児時間を与える。
2 生理日の就業が著しく困難な女性労働者から請求があったときは、必要な期間休暇を与える。

(育児・介護休業、子の看護休暇等) 
第25条 労働者のうち必要のある者は、育児・介護休業法に基づく育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児のための所定外労働の免除、育児・介護のための時間外労働及び深夜業の制限並びに所定労働時間の短縮措置等(以下「育児・介護休業等」という。)の適用を受けることができる。
2 育児休業、介護休業等の取扱いについては、「育児・介護休業等に関する規則」で定める。

 上記規定については、法定通りの条件を明記することがまずもっての対処法になるかと思います。

なお、上記第25条については別規程で定めるとなっていますが、このあたりの内容については大きな法改正が予想されるところであり、柔軟に変更可能となるよう別規程化するのが望ましいように思います。

 

(慶弔休暇)
26 労働者が申請した場合は、次のとおり慶弔休暇を与える。
①   本人が結婚したとき                                         
②   妻が出産したとき                                           
③   配偶者、子又は父母が死亡したとき                                 
④   兄弟姉妹、祖父母、配偶者の父母又は兄弟姉妹が死亡したとき              

 

病気休暇)
27 労働者が私的な負傷又は疾病のため療養する必要があり、その勤務しないことがやむを得ないと認められる場合に、病気休暇を  日与える。

 

 

 

一昔前の就業規則であれば、慶弔休暇や病気休暇を設けた上で、年休とは別に賃金を支給するという形にしてあったのですが、最近ではこのような休暇制度自体設けていないところも多いようです。

法律的にはこういった休暇制度を設ける必要はありませんし、ましてや勤務していないにもかかわらず賃金を支給するというのは、再検討してもよいと思われます。

(裁判員等のための休暇) 
第28条 労働者が裁判員若しくは補充裁判員となった場合又は裁判員候補者となった場合には、次のとおり休暇を与える。
①   裁判員又は補充裁判員となった場合        必要な日数
②   裁判員候補者となった場合              必要な時間

裁判員制度で呼び出しを受けた場合、会社としても協力せざるを得ませんので、こういった規定を設けるのも一案かもしれません。なお、法律上、裁判員休暇中の賃金支払い義務はありませんので、無給としても問題ありません(行政は支給が望ましいとしていますが、法律上の義務ではありません)。

※上記はあくまでも一例です。案件ごとにより手順や結果が変わることもありますので、この点はご容赦願います。 

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