弁護士による就業規則チェックポイント③(労働時間、休憩、休日)

 就業規則の作成は社会保険労務士の先生にお願いして作成してもらったり、社長自らがインターネットや書籍などを見ながら作成したりすることが多いようです。

就業規則を作成することは、労務トラブルによるリスクを低減させるためにも非常に有効なことです。

ただ、実際の現場のトラブル、特に労働裁判や労働審判、労働組合による団体交渉、労働基準監督署の介入などといった事例を経験しないことには、どうしても見えてこない視点も存在します。

そこで、厚生労働省が公表しているモデル例を参照しながら、使用者・会社側弁護士の視点で、就業規則のチェックポイントを解説したいと思います。

なお、モデル例は平成25年4月に公表されていたパターンを参照しています。

第4章 労働時間、休憩及び休日

(労働時間及び休憩時間)
第17条 労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。
2 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、前日までに労働者に通知する。
①   一般勤務

始業・終業時刻 休憩時間
 始業  午前          分から    分まで
 終業  午後    


②   交替勤務
(イ)1番(日勤)

始業・終業時刻 休憩時間
 始業  午前          分から    分まで
 終業  午後    


(ロ)2番(準夜勤)

始業・終業時刻 休憩時間
 始業  午前          分から    分まで
 終業  午後    


(ハ)3番(夜勤)

始業・終業時刻 休憩時間
 始業  午前          分から    分まで
 終業  午後    


3 交替勤務における各労働者の勤務は、別に定めるシフト表により、前月の   日までに各労働者に通知する。
4 交替勤務における就業番は原則として   日ごとに   番を   番に、
   番を   番に、   番を   番に転換する。
5 一般勤務から交替勤務へ、交替勤務から一般勤務への勤務形態の変更は、原則として休日又は非番明けに行うものとし、前月の   日前までに    が労働者に通知する。


規定内容はありきたりですが、一週の労働時間に関する特例と休憩の一斉付与に関する勘違いについて触れておきます。

まず、1週間の労働時間の上限は40時間と定められています。但し、特例措置として、商業(労基法別表第1第8号)、映画の製作の事業を除く映画・演劇業(同第10号)、保健衛生業(同第13号)、接客娯楽業(同第14号)の事業であって、労働者数10人未満の事業場(以下「特例措置対象事業場」といいます。)は、1週44時間まで働かせることが認められています(労基法第40条、労基法施行規則第25条の2)。

したがって、上記業種に該当するにもかかわらず、1週間の労働時間を40時間としたうえで賃金体系を構築した場合、当然のことながら40時間超の部分は割増賃金の対象となってしまう可能性がありますので、気を付けるべきです。

次に、意外と意識されていないのが、法律上の大原則論は、休憩の全従業員に対して、一斉に付与しなければならないということです。つまり、お昼休憩中に電話対応のため交代で休憩をとるということが原則認められていません。もし、交代で休憩を取らせたいのであれば労使協定を締結する必要があります

もっとも、運輸交通業(労基法別表第1第4号)、商業(同第8号)、金融・広告業(同第9号)、映画・演劇業(同第10号)、通信業(同第11号)、保健衛生業(同第13号)、接客娯楽業(同第14号)及び官公署の事業について、労使協定なくして一斉に休憩を与えなくてもよい旨が定められています。

このあたりについても注意はしておくべきでしょう。

(休日)
第18条 休日は、次のとおりとする。
①   土曜日及び日曜日
②   国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)
③   年末年始(12月  日~1月  日)
④   夏季休日(    日~  月  日)
⑤   その他会社が指定する日
2 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。

よく見かける条項なのですが、賃金管理のことも考えるのであれば、上記第1項は、法定休日はいつ、法定外休日はいつ…と分けて規定したほうが無難です。

なぜならば、法定休日に出勤した場合は1.35の割増賃金となりますが、法定外休日に出勤した場合は単なる時間外労働ですので1.25の割増賃金となるからです。賃金計算で誤解を与えないためにも、確実に会社が休みであるという日を法定休日として明記するべきでしょう。

あと、上記第2項に関連して、実務上非常に間違われている「振替休日」と「代休」ですが、モデル就業規則の解説にある厚労省の説明文書を以下引用しておきます。

<労働基準法上の振替休日と代休の取扱いの違い」>

① 振替休日は、あらかじめ定められた法定休日を他の日に振り替えることですから、振替前の休日に勤務しても通常の勤務と同じです。したがって、休日労働に対する割増賃金の問題は発生しませんが、振り替えた休日が週をまたがった場合、振替勤務したことにより、当該週の実労働時間が週の法定労働時間を超える場合があります。その場合は時間外労働に対する割増賃金の支払が必要となります。
その一方で、代休は、定められた法定休日に休日労働を行わせた場合ですから、その後に代休を与えても休日労働をさせたことが帳消しにされるものではありませんので、休日労働に対する割増賃金を支払う必要があります。

② 休日は労働者の労働義務のない日ですから、これを振り替える場合は、以下に示す措置が必要となります。
ア.就業規則に振替休日の規程を置くこと。
イ.振替休日は特定すること。
ウ.振替休日は4週4日の休日が確保される範囲のできるだけ近接した日とすること。振替は前日までに通知すること。

(時間外及び休日労働等)
第19条 業務の都合により、第17条の所定労働時間を超え、又は第18条の所定休日に労働させることがある。
2 前項の場合、法定労働時間を超える労働又は法定休日における労働については、あらかじめ会社は労働者の過半数代表者と書面による労使協定を締結するとともに、これを所轄の労働基準監督署長に届け出るものとする。
3 妊娠中の女性、産後1年を経過しない女性労働者(以下「妊産婦」という)であって請求した者及び18歳未満の者については、第2項による時間外労働又は休日若しくは深夜(午後10時から午前5時まで)労働に従事させない。
4 災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合には、第1項から前項までの制限を超えて、所定労働時間外又は休日に労働させることがある。ただし、この場合であっても、請求のあった妊産婦については、所定労働時間外労働又は休日労働に従事させない。

内容的には当たり前のことしか書いていません。

しかし、現場実務では、この規定が不十分であるがために残業や休日出勤を命じることができなかったり、労働者に拒絶された場合に会社として次の対抗措置が講じられなかったりします。

したがって、これらの規定の存在についても十分に注意をするべきです。

なお、上記第2項はいわゆる36(サブロク)協定と呼ばれるものです。時々セミナー等で「なぜ、サブロク協定というのか」と聞かれるのですが、労働基準法36条に基づく協定であることから、条文数から引用してサブロク協定と呼ばれているようです。

※上記はあくまでも一例です。案件ごとにより手順や結果が変わることもありますので、この点はご容赦願います。 

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