ホームページ、WEBサイトに関する著作権の問題について解説
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【ご相談内容】
ホームページ・WEBサイトを自社アピール等の目的で積極的に活用したいのですが、著作権の問題に注意する必要があるとよく耳にします。
具体的にどういった問題があり、どういった点に注意を払えばよいのか教えてください。
【回答】
ホームページ、WEBサイトにまつわる著作権の問題といえば、①ホームページやWEBサイトの基盤となるプログラムと著作権との関係、②ホームページ、WEBサイトの外観であるデザインと著作権との関係、③ホームページ、WEBサイトを構成する個々のコンテンツと著作権との関係を分けて検討するのがよいかと思います。
以下では、上記①から③の分類に従って解説を行います。
また、ホームページ、WEBサイトの制作を第三者に委託した場合の著作権に関する問題についても簡単にポイントを解説します。
【解説】
1.ホームページ、WEBサイトと著作権
ホームページ及びWEBサイトそれ自体に著作権が発生するのかと問われた場合、次のように3つに分類して検討することが有用です。
(1)プログラム
例えば、HTMLやcss等のプログラム言語を用いてホームページ・WEBサイトを制作した場合、そのプログラムについて著作権が発生しないかが問題となります。
この点、たしかに著作権法第10条第1項第9号では、著作物の例示として「プログラムの著作物」が明記されています。このため、ホームページやWEBサイトに用いられたプログラムは著作物に該当するのではと思われるかもしれません。
しかし、著作権法の「プログラムの著作物」には次のようなものは含まれません。
【著作権法第10条第3項】
第一項第九号(※プログラムの著作物のこと)に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
①プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。 ②規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。 ③解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。 |
つまり、プログラム言語それ自体は著作物になりません。あくまでもプログラム言語を用いたことにより、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(著作権法第2条第1項第10号の2)がプログラムの著作物として保護されることになります。
ここまで色々と記載しましたが、裁判例の傾向などを踏まえた現場実務ベースで検討した場合、ホームページやWEBサイトに用いられたプログラムにより表現されたものが著作物に該当する可能性は極めて低いと考えたほうが無難です。
詳しくは、次の記事をご参照ください。
プログラムは著作権法でどこまで保護されるのか。注意点とポイントを解説
ちなみに、最近ではwordpressに代表されるOSSを用いてホームページやWEBサイトが制作されることが多くなっていますので、制作に携わったプログラマーに著作権が帰属するという事態が考えにくい状況です。
(2)デザイン
例えば、ホームページやWEBサイトのレイアウトが著作物に該当しないかが問題となります。
この点、レイアウトとは画像や文章などの素材を配置・配列する作業のことであり、これ自体は表現ではなくアイデアに過ぎない以上、著作物に該当する可能性は低いと言わざるを得ません。
それでは、ディスプレイ等に表示される画面表示(相互に牽連関係のある各表示画面の集合体たる全画面を含む)が著作物に該当すると考えることはできないでしょうか。
理論的には著作物に該当する可能性はあるものの、次のような裁判例が存在します。
【東京地方裁判所平成16年6月30日判決】
コンピュータのディスプレイ上に表示される画面については、〈1〉所定の目的を達成するために、機能的で使いやすい作業手順は、相互に似通ったものとなり、その選択肢が限られること、ユーザの利用を容易にするための各画面の構成要素も相互に類似するものとなり、その選択肢が限られること、〈2〉各表示画面を構成する部品(例えば、ボタン、プルダウンメニュー、ダイアログ等)も、既に一般に使用されて、ありふれたものとなっていることが多いこと、〈3〉特に、既存のアプリケーションソフトウェア等を利用するような場合には、設計上の制約を受けざるを得ないことなどの理由から、表示画面の創作性の有無を判断するに当たっては、これらの諸事情を勘案して、判断する必要がある。 |
上記の裁判例を踏まえる限り、画面表示に機能性を追求すればするほど著作物該当性は低くなると言わざるを得ないこと注意を要します。
なお、あるレイアウトや画面表示が、特定の事業者をイメージできるくらい著名である場合、不正競争防止法違反の問題が別に生じることも押さえておく必要があります。
(3)個々のコンテンツ
上記(1)及び(2)で解説した通り、ホームページやWEBサイトそれ自体で検討した場合、著作権法による保護は原則及ばないと考えられます。
もっとも、ホームページやWEBサイトを構成する個々のコンテンツ、例えば、ホームページやWEBサイトに掲載した写真画像それ自体について「写真の著作物」に該当しないか、あるいは文章について「言語の著作物」に該当しないか、動画であれば「映画の著作物」に該当しないかという問題は起こりえます。
次の2.では、個々のコンテンツのうち、特に事業者がホームページやWEBサイトを運営するにあたって問題となりやすい具体的な事例を取り上げて解説します。
2.ホームページ、WEBサイトに掲載する個々のコンテンツと著作権
最近では制作会社ではなく、ユーザ自らがホームページ・WEBサイトを構成する個々のコンテンツを作成し掲載することが多く行われています。
そこで、動画を掲載する場合、画像を掲載する場合、文章を掲載する場合の3つに分けて問題となりやすい事例につき解説します。
(1)動画を掲載する場合
■他者の動画の構成を真似ることは著作権侵害となるか?
ホームページ・WEBサイト公開用の動画を作成するに当たり、例えば、人気のテレビ番組やYouTube動画等を真似て作成するといったことが行われたりします。
この点、単にコンセプトを真似るだけであれば、表現行為ではなくアイデアに過ぎませんので著作権侵害とはなりません。しかし、背景セットや特有の発言(決まった掛け合いトーク等)といった表現行為を真似た動画を作成し公開した場合、著作権侵害の可能性が出てきます。
結局のところ、動画の構成や進行方法を真似るだけであれはアイデアに留まると考えられますが、一般的には元となる番組・動画等に登場する人物の特徴ある言動やエフェクト表現まで真似ることが多いと思われますので、これらの表現行為が著作物に該当するかを検討し、著作権侵害の成否を判断することになります。
■動画内に他者の著作物が映り込んだ場合は著作権侵害となるか?
ホームページ・WEBサイト公開用の動画を作成するに当たり、例えば、屋外で撮影したところ著名なポスターが映り込んでしまった、有名な音楽が入り込んでしまったといったことが起こり得ます。ポスターや音楽は著作物であることは明らかであるところ、著作権者の許諾なく動画を公開しても大丈夫かという問題があるのですが、この問題については著作権法上の手当てがなされています。
【著作権法第30条の2】
1. 写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随して対象となる事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(当該複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、当該作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物において当該著作物が軽微な構成部分となる場合における当該著作物に限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物において当該付随対象著作物が果たす役割その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2. 前項の規定により利用された付随対象著作物は、当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。 |
非常に長い条文なのですが、次の4つの要件を充足する場合、著作権侵害は成立しません。
①写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為であること
②映り込んだ著作物が軽微と評価されること
③正当な範囲内であること(利益を得る目的の有無、分離の困難性の程度、映り込んだ著作物が果たす役割などを考慮して判断)
④著作権者の利益を不当に害さないこと
4つの要件について簡単なポイント解説を行います。
①の「複製を伴うことなく伝達する行為」とはやや分かりづらい表現なのですが、いわゆる生配信などをイメージすればよいかと思います。
②の「軽微」判断が最大のポイントとなりますが、個別具体的に判断するほかありません。なお、一般的には10~20%程度の映り込みであれば軽微と評価されると言われていますが、あくまでも目安に過ぎません。
③の考慮要素のうち、議論となりやすいのは「分離困難性」です。例えば、意図的に小道具として準備し映り込ませた場合、果たして分離困難と言えるのか判断が分かれます。
④についても個別具体的な判断となりますが、例えば生演奏をメインとする店舗内で動画配信を行った場合、軽微性も当然問題となりますが、入店者以外に演奏を聴かせている点で「利益を不当に害している」と判断される可能性が高いと思われます。
■いわゆる踊ってみた・歌ってみたは著作権侵害となるか?
ホームページ・WEBサイト公開用の動画を作成するに当たり、例えば、会社内の雰囲気を伝えることを目的として、従業員が有名なアーティストやダンサーを真似て歌い、踊った場合、著作権侵害となるのかが問題となります。
結論からいうと、著作権侵害になると考えた方が無難です。
ちなみに、現場実務の感覚からすると、営利目的ではなく影響力の乏しい動画に対し、著作権者が著作権侵害を指摘することは少ないように思われますが、これはあくまでも著作権者の厚意にすぎないと考えるべきです(著作権者にとっても一種の宣伝広告になるという実利もあるため)。
なお、YouTubeであれば、JASRACと包括的な利用許諾契約を締結しているので、著作権侵害の問題は生じないのではと思われるかもしれません。しかし、JASRACは著作隣接権の管理までは行っていませんので、レコード会社が保有する権利などが許諾されているわけではないこと(著作隣接権侵害が成立すること)に注意が必要です。
■第三者より提供を受けた動画を転用することは著作権侵害となるか?
ホームページ・WEBサイト公開用の動画を作成するに当たり、例えば、宣伝広告を兼ねた動画募集キャンペーンを展開し、それに応じてユーザが提供した動画をキャンペーン以外で使用する場合に著作権侵害となるのかが問題となります。
この点、キャンペーンを実施するに当たり、動画の利用目的を記載することが通常と考えられるところ、この利用目的の範囲内か否かによって著作権侵害の成否が決まることになります。もし、利用目的として、キャンペーン以外でも使用する旨記載されており、ユーザの同意を得る形式になっているのであれば、ユーザが提供した動画を転用しても著作権侵害は成立しないと考えられます。
なお、利用目的を記載していない場合、キャンペーン目的で使用するというのが合理的な意思解釈となりますので、ユーザが提供した動画を転用することは著作権侵害が成立すると考えられます。
(2)画像を掲載する場合
■フリー素材とされている画像を自社サイトに掲載することは著作権侵害となるか?
ホームページ・WEBサイト公開用の画像を作成するに当たり、例えば、インターネット上でフリー素材と紹介されている画像を利用する場合、著作権侵害は当然成立しないと考えているかもしれません。
しかし、実はこのフリー素材と称されるものの取扱いは非常に厄介なところがあります。
なぜなら、フリー素材とされている画像等について、フリー素材だと主張している者が正当な著作権者であるのか判断が付かないからです。著作権者に無断でフリー素材と称して画像等を提供しているWEBサイトは複数存在しますので、フリー素材と明記されているからといって安易に信用せず、著作権者であるかの調査が必要であることを意識する必要があります。
次に、著作権者であることが確認できたとしても、フリーの中身を精査する必要があります。これはフリーとは言いつつも、自由に利用できる場面が限定されていることがあるからです。商用利用禁止といった条件が設定されていることも多いので、利用規約等を十分に確認する必要があります。
以上の通り、フリー素材を利用する場合は著作権侵害不成立と断定はできないこと、意識していただきたいところです。
■メーカーの商品画像を自社通販サイトで掲載することは著作権侵害となるか?
ホームページ・WEBサイト公開用の画像を作成するに当たり、例えば、商品製造元が公開している商品画像をコピペして利用する場合、著作権侵害となるのかが問題となります。
単なる商品画像が著作物に該当するのかという疑問を持たれるかもしれませんが、撮影するにあたっては、被写体の選択・組合せ・配置、構図・カメラアングルの設定、光線との関係、陰影の付け方、色彩の配合、背景等の諸要素を総合的に考慮して創作されていることが多いので、著作物に該当すると考えた方が無難です。したがって、形式論としては、商品製造元の商品画像を無断で利用した場合、著作権侵害が成立することになります。
これに対し、単に商品製造元の商品を販売するために利用するに過ぎず、商品製造元に迷惑をかけるわけではない以上、黙示的に承認しているといえないかといった質問を受ける場合がありますが、ケースバイケースではあるものの一般的には黙示的承認があったと認定することは難しいと思われます。特に商品製造元によっては、ネット通販自体を嫌悪している場合や自社と取引のない者による商品販売を不快に思っている場合などもあり、商品画像の無断利用が発覚した場合、積極的に著作権侵害を指摘することもありますので、注意を要します。
■自らが撮影した商品画像を自社通販サイトで掲載することは著作権侵害となるか?
1つ前の設問で、メーカーが公開している商品画像を無断で使用することは著作権侵害となり得ること解説しました。
それでは、対象となる商品を自らで撮影し、その撮影画像を公開すれば著作権侵害とはならないのではないかが問題となります。
たしかに、自らで画像を創作した以上、画像の著作権それ自体は問題となりません。
しかし、撮影対象となった商品それ自体が著作物に該当する場合、画像を作成し保存することは無断複製に該当し、WEB上に公開することは無断での公衆送信となるため、著作権侵害となりえます。
もっとも、対象となる商品が工業製品であれば、著作物に該当する可能性は低いと考えられます(いわゆる応用美術の問題)。
一方、対象となる商品が美術品の場合、著作権法第47条の2に定める条件を満たす限り、著作権侵害とはなりません。詳細は割愛しますが、具体的な内容は著作権法第47条の2で委任されている著作権法施行令第7条の3及び著作権法施行規則第4条の2に定められています。
■従業員が撮影した画像を用いることは著作権侵害となるか?
ホームページ・WEBサイト公開用の画像を作成するに当たり、例えば、従業員が業務時間中に撮影した画像を利用する場合、著作権侵害となるのかが問題となります。
一見すると、業務時間中に撮影したものである以上、事業者が利用しても問題ないのではと思われるかもしれません。しかし、撮影者が従業員である以上、著作者は従業員であるという考え方も成り立ちえます。
この点について、著作権法は次のようなルールを定めています。
【著作権法第15条】
1. 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
(第2項省略) |
いわゆる「職務著作」と呼ばれるものですが、上記の例において、事業者からの指示ではなく個人的に撮影した画像である場合は「発意」がないので、従業員が著作者となります。このため、事業者が、従業員の撮影した画像を勝手に利用すると著作権侵害が成立します。
ホームページ・WEBサイト公開用の画像として用いるのであれば、従業員に業務指示するか、業務指示が無いのであれば従業員の許諾を得るといった対応が必要となります。
(3)文章を掲載する場合
■キャッチコピーを真似ることは著作権侵害となるのか?
ホームページ・WEBサイト公開用の文章を作成するに当たり、例えば、他社のキャッチコピーを真似た場合、著作権侵害となるのかが問題となります。
この点、キャッチコピーが著作物に該当するのか、すなわち創作性があるのかを個別具体的に判断するほかないのですが、一般的には平凡・ありふれた表現と評価されることが多いようです。したがって、著作権侵害が成立する場面は限定されると考えられます。
もっとも、他社が既に用いているキャッチコピーを真似た場合、顧客の混乱を招く場合もあれば、顧客よりパクリ企業といった烙印を押され、かえってマイナスイメージを与えることにもなりかねません。著作権の問題よりもレピュテーションリスクを検討する方が重要といえます。
■第三者作成の文章を参照することは著作権侵害となるのか?
1つ前の設問で、他社のキャッチコピーと著作権侵害の関係について解説しました。それでは、例えば、他社が宣伝広告用に用いている説明文章などを参照しつつ、当方用の宣伝広告文章を作成した上でホームページ・WEBサイト公開した場合、著作権侵害とはならないのではないかが問題となります。
この点、他社作成の文章が著作物に該当するのであれば、その文章を参照した上で当方は作成している以上、原則的には著作権侵害が成立すると言わざるを得ません。
もっとも、他社の説明文章を引用しつつ、自社のアピール文章を展開するといった方法であれば、著作権侵害不成立となる余地があります。著作権法では「引用」につき次のように定められています。
【著作権法第32条】
1. 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
(2項省略) |
引用が認められるためには、当方作成の文章と引用文章とが明瞭に区別されていること(明瞭区別性)と当方作成の文章が主であり、引用文章は従たる位置づけであること(主従性)、引用する文章の出所を明示すること(出所明示)が重要とされています。ただ、近時の裁判例は上記の要件を硬直的に適用するのではなく、総合考慮して引用の有無を判断する傾向があるとされていますので、結局のところはケースバイケースの判断と言わざるを得ません。
いずれにせよ、「引用」に該当するのであれば、著作権侵害は成立しないことになります。
■官公庁作成の文章をそのまま記載するのは著作権侵害となるのか?
ホームページ・WEBサイト公開用の文章を作成するに当たり、例えば、官公庁が作成した文章をコピペし、あたかも当方作成の文章の一部に組込んだ場合、著作権侵害が成立するのかが問題となります。
この問題を検討するに当たっては、一つ前の設問でも解説した著作権法第32条を読み解く必要があります。
【著作権法第32条】
(第1項省略)
2. 国等の周知目的資料は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。 |
この条項だけを見ると、転載禁止の表示がない限り、ホームページ・WEBサイトに公開しても問題ないのではと思われるかもしれません。しかし、あくまでも「刊行物」に限定されていますので、形式的にはホームページ・WEBサイトは除外されていると言わざるを得ません。
したがって、法律の文言に忠実に従う限り、著作権侵害が成立することになります。
もっとも、転載ではなく、引用(著作権法第32条第1項)の要件を満たすのであれば、著作権侵害は成立しません。この点は区別して押さえておく必要があります。
■いわゆる「お客様の声」を用いることは著作権侵害となるのか?
ホームページ・WEBサイト公開用の文章を作成するに当たり、例えば、顧客アンケートに記載されていた内容(いわゆるお客様の声)を用いた場合、著作権侵害が成立するのかが問題となります。
この点、お客様の声の内容にもよりますが、一般的には単なる感想や体験した事実が記載されていることが多いことから、著作物には該当しないと考えられます。したがって、お客様の声の内容をホームページ・WEBサイトに公開することは、原則として著作権侵害にはなりません。
もっとも、顧客アンケートに記載されている氏名や住所・連絡先等まで公開した場合、著作権侵害にはならなくてもプライバシー侵害や個人情報保護法違反の問題が別に生じます。匿名化するといった対策を意識したいところです。
3.ホームページ、WEBサイトの作成を委託する場合と著作権
(1)第三者に制作依頼した場合の著作権の帰属
上記1.及び2.では、ホームページ・WEBサイトを自らが作成することを念頭に解説しましたが、第三者に委託し制作してもらうことも多いと思われます。
では、この場合、著作権は誰に帰属するのでしょうか。
結論から申し上げると、制作者である受託者に著作権が帰属します。
このように記載すると、「制作費用を支払っているのだから、著作権は当然に委託者に移転するのではないか」という質問を受けるのですが、それは間違った考え方となります。お金を支払うことと著作権の帰属(移転)は全く別問題であることを押さえておく必要があります。
また、「職務著作」に該当するのではないかという質問を受けることもあります。しかし、著作権法第15条第1項に定める「法人等の業務に従事する者」とは、従業員を意味し、独立自営の外部業者は含まないと解釈されています。この点も勘違いしないよう、押さえておきたいところです。
第三者にホームページ・WEBサイトの制作を依頼するものの、著作権は委託者に帰属させたいというのであれば、適切な契約書を作成し、著作権の帰属について明確に定めておくことをお勧めします。なお、著作権に関する契約書作成のポイントについては、次の記事をご参照ください。
著作権に関する契約(利用許諾・ライセンス、譲渡、制作)のポイントについて解説
(2)第三者よりクレームが発生した場合の対応
第三者に依頼し、完成したホームページ・WEBサイトを委託者が運営していたところ、第三者より著作権侵害であるとクレームを受けた場合、誰がどのように対応するべきなのか、簡単にまとめておきます。
まず、上記(1)でホームページ・WEBサイトの著作権の帰属について解説しましたが、誰に著作権が帰属するのかに関わらず、第一義的にクレーム対応しなければならないのは運営者(委託者)となります。なぜなら、対外的には運営者(委託者)が問題となっている著作物を利用しているからです。仮に、著作権は制作者に留保されたままであると指摘したところで、第三者からすれば関係のない事項として一蹴されてしまうことに注意を要します。
次に、クレーム対応のために、コンテンツの差替えや損害賠償の支払いなどの負担が発生した場合、運営者(委託者)or制作者(受託者)の誰が負担するのかが問題となります。この点についても、実は誰に著作権が帰属しているかはあまり問題となりません。結局のところ、違法コンテンツを作成することになった原因がどちらにあるのかによって判断することになります。
以上の通り、第三者とのクレーム処理の場面においては、著作権の帰属は重要な問題ではなく、そのような場面を見越して誰がどのように負担処理するのかを契約書に定めておくことが重要であることを押さえて頂ければと思います。
4.当事務所でサポートできること
当事務所は、複数のホームページ・WEBサイト制作会社の顧問弁護士としての活動実績を有し、日常的にホームページ・WEBサイトの著作権に関するご相談等をお受けしています。
著作権侵害の警告を行いたい、逆に警告を受けたので上手く対処したい、著作権法上の問題が生じるのか相談に乗って欲しい…など、様々なお悩み事があるかと思いますが、これまでの実例を通じて得られた知見とノウハウを最大限活用し、ご相談者様が抱える問題を解決できるよう尽力します。
なお、当事務所では、制作会社のみならず、ユーザからのご相談もお受けしておりますので、是非ご利用ください。
<2024年3月執筆>
※上記記載事項は弁護士湯原伸一の個人的見解をまとめたものです。今後の社会事情の変動や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。