「X-Tech」ビジネスを始める前の法務戦略(第19回 HomeTech スマート家電、IOT住宅)

1.はじめに

今回はHomeTechについて考察します。HomeTechという用語にはなじみが薄い…という方もいるかもしれませんが、例えばIOT住宅やスマート家電といった例をあげるとイメージができるかもしれません。
色々と検討するべき事項がありますが、概要を見ることができればと思います。

2.プライバシー情報の取得

IOT住宅やスマート家電を利用する主目的として、デバイス(携帯端末)と家電製品等をネットワークで繋ぐことで、ユーザーの嗜好に合わせた自動制御を行う(例えば帰宅時間に合わせて自動的にエアコンが稼働し室温を調整する等)といったものがあげられます。ただ、こういった自動制御を行うためには、ユーザーが制御装置に対してユーザーの情報を提供することが当然の前提となります。
上記のような流れをふまえると、HomeTech事業を営む場合、事業者は必然的にユーザー情報を取得することになり、高度なプライバシー情報、いわゆる機微情報や個人情報保護法にいう要配慮個人情報も含まれることになります。
さて、これらプライバシー情報を取得するとなると、利用目的を明確にすることはもちろん、当該情報の帰属をどうするのかという問題が生じます。「取得した情報は事業者に帰属する」、「企業に帰属することについてユーザーの同意を得る」という発想しか持たない事業者のほうが多いようにも思いますが、法的にはユーザーの同意を得ることでクリアーできるものの、果たして世間一般が受け入れるのかという観点から、情報の帰属について見直しを図るべき時期に差し掛かっているように思われます。特に、ユーザーの特定につながるプライバシー情報やユーザーの趣向・嗜好情報、機微情報、要配慮個人情報について、当然のように事業者に帰属すると定めた場合、昨今の風潮からすると嫌悪感・漠然とした不安感から、いわゆる炎上騒動に発展する可能性があります。
上記のような炎上リスク、一方で高度なプライバシー情報等を果たして企業が保有するメリットがあるのか(利用価値があるのか)、今一度検討してもよいのではないでしょうか。

3.スマート家電と製造物責任法

製造物責任法の製造物には無体物は含まれていません。このため、無体物であるAIプログラムやソフトウェアそれ自体は製造物責任の適用対象外となります。
しかし、これらを内蔵したスマート家電は動産である以上、製造物責任法の適用対象になること注意が必要です。また、IOT住宅それ自体は不動産であるため、不動産も製造物責任法の適用対象外となります。IOT住宅を構成する各種機器が独立の動産といえるのか、個々の検討が必要になる場面が増えていくことが予想されます。
次に、これまで製造物責任法の「欠陥」といえば、設計上の欠陥、製造上の欠陥、指示警告上の欠陥という概念が用いられてきましたが、いずれも物理的なミスを想定した概念だったように思われます。ところが、スマート家電の場合、情報を取得することが前提となっている以上、情報漏洩のリスクを内包することとなります。すなわち、スマート家電上のセキュリティ上の不完全が欠陥と認定される可能性があるのですが、上記の欠陥概念とはやや異質のものとなります。欠陥概念が変化することが予想されることも注意が必要です。

4.その他

スマート家電等のIOT機器は電気用品安全法の規制対象となったり、家庭用品品質表示法に基づき表示規制の対象となる場合があります。また、ネットワークについて独自通信とする場合、電波法の問題をクリアーする必要があります。周辺領域にまたがってリーガルチェックが必要となることにご留意ください。

(2020年3月9日更新)

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。