「X-Tech」ビジネスを始める前の法務戦略(第13回HealthTech③ 遠隔診療)

1.はじめに

Health Techの3回目は遠隔診療について検討を行います。遠隔診療については従前より議論がありますが、IT普及に伴い特にオンライン診療が注目を集めています。

 

2.遠隔診療に関する基本的な考え方について

本原稿を作成した2019年7月1日現在、遠隔診療に関する基本原則は、従前どおり「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」(平成9年12月24日付け健政発第1075号厚生省健康政策局長通知)をベースにするべきです。その骨子は次のようなものとなります。
『患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせて行うこと』
上記内容からも分かるかと思いますが、遠隔診療について全面解禁されているとは言えません。対面診療を原則としつつ、患者側との意思疎通を図ったうえで遠隔診療を許す、というのが厚生労働省の立場であると理解できます。

 

3.遠隔診療の拡大

上記2.で記載した通り、遠隔診療が全面的に解禁となったと考えることはできませんが、政府としては遠隔診療を積極的に推進していく立場を明確にしていることから、遠隔診療の適用範囲は今後拡大していくことは間違いありません。
そして、平成30年10月29日に厚生労働省が公表した「オンライン医療の推進について」では次のように整理されています(以下、引用です)。
◆患者合意と本人確認
・医師は患者に合意を得る際に、触診等を行えない等の理由によりオンライン診療で得られる情報は限られており対面診療を組み合わせる必要があることや、オンライン診療を実施する都度、医師がオンライン診療の実施の可否を判断すること等を説明する。
・医師が医師免許を保有していることを患者が確認できる環境を整えておくこと。
◆適用対象と診療計画
・直接の対面診察に代替し得る程度の患者の心身の状態に関する有用な情報をオンライン診療により得ること。
・初診及び急病急変患者は、原則として直接の対面による診療を行うこと。例外として、患者がすぐに 適切な医療を受けられない状況にある場合などにおいて、患者のために速やかにオンライン診療を行う必要性が認められる場合には、医師の判断の下、オンライン診療を行うことは許容され得ること。ただし、この場合であっても、オンライン診療の後に、原則、直接の対面診療を行うこと。
・医師はオンライン診療を行う前に、直接の対面診療により十分な医学的評価を行い、その評価に基 づいて、オンライン診療で行う具体的な診療内容や診療にあたってのルール等を含む診療計画を定めること。
◆診察方法と薬剤
・オンライン診療では、可能な限り多くの診療情報を得るために、リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報通信手段を採用すること。
・現にオンライン診療を行っている疾患の延長とされる症状に対応するために必要な医薬品は、医師の判断によりオンライン診療による処方が可能。ただし原則として、新たな疾患に対して医薬品の処方を行う場合は、直接の対面診療に基づきなされること(引用終わり)
なお、紙幅の都合上、1点のみにとどめますが、「視覚及び聴覚」による情報収集を重視していることからすると、いわゆるメールやチャット等の文字(視覚)情報のみで遠隔診療を行うことはNGと考えられます。IT事業者が商品開発を行うに際しては注意が必要です。

(2019年9月10日更新)

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。