「X-Tech」ビジネスを始める前の法務戦略(第14回 HRTech① 人事採用に際して)

1.はじめに

今回からはHRTech(ヒューマンリソーステック)と呼ばれる人事労務分野でのAI利用に関する法的問題を検討していきます。HRTechの1回目は、採用段階に関する事項です。

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2.求職者の適正分析を行った上での求職者情報の提供

HRTechの代表例として、求職者に関するSNS上の投稿情報などを収集しAIで分析した上で求人会社との適正を判断し、その判断情報とともに求職者情報を提供するというサービスがあります。このような情報提供サービスを事業として行う場合、まず気にしなければならないのは有料職業紹介事業に該当するか、という点です。有料職業紹介事業に該当する場合、職業安定法に基づく許認可が必要となります(なお、有料職業紹介事業に該当しない場合であっても、「募集情報等提供事業」として2018年1月1日より一定の規制が行われることになった点は注意が必要です)。
この点を検討するに際して、まず手掛かりとなるのは厚生労働省が公表している「民間企業が行うインターネットによる求人情報・求職者情報提供と職業紹介との区分に関する基準」というガイドラインとなります。詳細については厚生労働省のWEB等で確認していただくとして、有料職業紹介事業に該当するか否かについて、当該ガイドラインを踏まえると、「求人会社と求職者と直接連絡を取り合える状態であること」及び「情報提供事業者が求人会社と求職者との連絡に介入することはないこと」を最低限満たさないことには、有料職業紹介事業に該当すると判断され、許認可がないことには事業ができないということになってしまいます。裏を返せば、事業者としては、あくまでも求人企業に対して求職者情報とそれに付随する分析情報を提供しているだけにすぎず、それをどうやって用いるか(採否の判断はもちろん、求職者に連絡を取るのか等の一切の採用活動について)はすべて求人企業の判断である、という立ち位置を徹しないことには職業安定法違反のリスクが生じることになります。

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3.求職者のSNS情報取得

上記2.で記載したようなサービスを展開するに際し、求職者のSNS上の投稿情報を収集するといったことが行われます。たしかに、SNS上の投稿情報は一般的には公開されているため、公開情報を取得することについて特に問題はないという感覚を持たれるかもしれません。ただ、公開情報とはいえ、投稿されている情報が個人情報に該当する場合は、当然のことながら個人情報保護法に従った対処を行う必要があります。
また、事業者が展開するサービスが有料職業紹介事業に該当する場合であればもちろん、仮に該当しない場合であっても、昨今のプライバシー・権利意識の向上等の社会風潮を踏まえるのであれば、求職者がエントリーするに際し、SNS上の投稿情報を取得することの明示と承諾を得ることが必要と考えるべきです。
なお、SNS上の投稿情報と一口で言っても、いわいる機微情報と呼ばれるものや、個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当するもの、採用判断に際しては関係のないと思われる情報など様々なものが含まれることになります。果たしてこれらの情報を機械的に自動取得してよいものなのか、また求職者から承諾を得たからといって無制限に取得してよいものなのかは、別途検討する必要があります。すなわち、サービス事業者側において、取得する情報についてあらかじめ制限をかける等のプログラムが必要になってくるのではないかと思われます。

4.求人会社側における求職者情報の利用

求人会社における採用の自由を踏まえると、基本的には上記までに記載したような求職者情報(適正判断を含む情報を)を用いて採否の検討を行うことは問題にならないと考えられます。ただ、サービス事業者側における情報取得に何らかの問題があった場合、求人会社において当該情報を用いることが果たして妥当なのかという問題は避けて通れないこと、あらかじめ注意する必要があります。

(2019年10月11日更新)

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。