広告・表示と独占禁止法の関係は?

広告・表示と独占禁止法の関係は?

 前回は広告・表示等に関するルールの概観を見ていきましたが、今回はその中でも総本山の法律とも言うべき「独占禁止法」について概観したいと思います。

 

1.独占禁止法と表示の関係は?

 実は、表示関係の問題で独占禁止法が適用されることは多くありません。
 これは、独占禁止法の特別法として「景品表示法」という法律があり、これが表示の問題をカバーしているからです。
 
 ところで、景品表示法は、消費者に対する表示(※但し一景品表示法の「表示」に該当しない場合は独占禁止法の適用対象となります)について適用されます

 従って、独占禁止法が適用されるのは、基本的には、
① 事業者に対する表示に問題がある場合
② 景品表示法の適用対象とならない消費者に対する表示の問題がある場合
となります。

 

2.「ぎまん的顧客誘引」と「不当な利益による顧客誘引」

 独占禁止法は、具体的にどのような行為が「不公正な取引方法」に該当するのか公正取引委員会の指定に委ねています。これを受け、公正取引委員会は15項目を定めているのですが、これを「一般指定」と呼んでいます。
 この中でも表示との関係が問題となるのは次の2項目です。

(1)一般指定8項

 一般指定8項とは、「ぎまん的顧客誘引」と呼ばれるものです。
 これの具体例としてはネットワークビジネスにおける勧誘方法が問題となった「ベルギーダイアモンド事件」があります。

 ネットワークビジネスについてはご存じの通り、自らが利益を得るためには傘下会員を新規に獲得しなければならないのですが、これが非常に難しいのは周知の事実かと思われます。しかし、会員の勧誘に当たり、あたかも簡単に、努力次第では誰でも高額収入可能と説明していたことが、「ぎまん的顧客誘引」に当たるとされました(ちなみに、ネットワークビジネスの場合、建前上BtoB取引になりますので、消費者保護を前提とする景品表示法等の適用が難しかったのではないかと推測されます)。

 また、公正取引委員会では、抽象的な独占禁止法について、なるべく運用体系を明関するべく、具体的な運用方法をガイドラインという形で公表しています。色々なガイドラインが公表されているのですが、その中でも「ぎまん的顧客誘引」について触れているのが、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」と「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」です。

 フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方については、例えば、売上予測等を過大に計上し、他社よりも有利性をアピールすることで加盟店募集を行うことが「ぎまん的顧客誘引」に該当するとされています。
 また、知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針では、例えば、保有する技術の機能・効用を他社より優れたものであると誇大に説明し、ライセンス契約等を行うことが「ぎまん的顧客誘引」に該当するとされています。
 要は、虚偽・誇大な表示は独禁法違反になるということです。

(2)一般指定9項

 一般指定9項とは、「不当な利益による顧客誘引」と呼ばれるものです。
 この具体例についても上記ベルギーダイアモンド事件が代表的ですが、ピラミッド型組織の上位会員となれば、傘下の下位会員の販売活動によるマージンも得られるので、誰でも高額所得が得られるとして会員勧誘を行っていたことが、「不当な利益による顧客誘引」に該当するとされています。

 また、上記例以外にも、証券会社が特定顧客に対して損失補填を行うことで顧客離れを食い止めようとした例(ちなみに今では損失補填は金融商品取引法で禁止されています)、顧客に対して過剰なまでの景品を付けて商品を販売する販促活動の結果、他社の販売活動に影響が出た例があげられます(なお、この問題は、景品表示法の問題と重複してきます)。
 要は、ありもしない又は度を超したニンジン(=利益をぶらさげて、顧客を釣ろうとすることは独禁法に違反するということです。

 

3.まとめ

 平成21年9月に消費者庁が発足したことを受け、BtoC取引では、虚偽・誇大な広告はコンプライアンス上大きな問題があるという認識が広まってくると思われますが、BtoB取引では、商取引である以上、「多少の大袈裟は許される…」という考え方が一部残っているようです。
 確かに、ある程度のセールストークは許されますが、その線引きは難しいのが実情です。
たとえBtoB取引であっても、ふと一歩立ち止まって、直感的に「危ないのでは?」と思ったら、専門家に相談してみた方が良いと思います。


※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。