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【間違えやすい賃金実務②】 賃金からの控除

 

「賃金全額払いの原則」があると聞いているのですが、次の場合、賃金から控除することは問題無いのでしょうか。

 ① 社員旅行の積立金

 ② 賃金過払いが生じた場合の過払い分

 ③ 労働者の不法行為に基づき被った会社の損害

 

 


回答

① 労使の書面による協定があれば控除可能です。
② 過払い賃金を翌月以降の賃金で清算することは原則許されると考えられます。
③ 会社(使用者)が一方的に天引きすることはできません。

 

解説

1.社員旅行の積立金について

 賃金全額払いの原則については、労働基準法24条1項で例外が定められており、「労使の書面による協定」がある場合には、賃金の一部を控除しても良いとされています。

 

 さて、この「労使の書面による協定」とは、いわゆる労使協定のことを指すのですが、この様式や記載事項については、労働基準法上の定めはありません。

 

 もっとも、行政解釈(昭和27年9月20日基発675)によれば、「購買代金、社宅、寮その他の福利厚生施設の費用、労務用物資の代金、組合費等、事理明白なものについてのみ」控除可能と示していますので、これに該当するか否かの検討が必要になります。

 

 この点、社員旅行の積立金は上記に含まれることで解釈上争いがないようですので、労使協定があれば控除可能という結論になります。

 なお、いわゆる36協定と異なり、この労使協定については行政官庁への届出は不要とされています。


 

2.賃金過払いが生じた場合の過払い分

 これについては最高裁判所の判例が存在します(最判昭和44年12月18日)。

 この判例によれば、「許されるべき相殺は、過払いのあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない」とされています。

 

 ところで、具体的な控除額については、行政解釈として、民事執行法152条に基づき、賃金総額の4分の3に相当する部分については相殺することができない旨示されていますので、この点は注意が必要です。

 なお、前述1との関係で、労使協定は無くてもよいのか?と思われるかもしれません。

 

 この点については行政解釈があり、前月分の過払い賃金を翌月分で精算する程度は、賃金それ自体の計算に関するものであるとして、労働基準法24条違反にはならないと示されています。

 

3.労働者の不法行為に基づき被った会社の損害
 これについても最高裁判所の判例が存在します(最大判昭和36年5月31日)。
 この判例では、「労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者が労働者に対して有する債権を持って相殺することを許さないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である。このことは、その債権が不法行為を原因としたものであっても変わりはない」としています。
 
 もっとも、一方的に控除することは禁止されているとしても、労働者が同意している場合(合意相殺)は、労働基準法24条の適用の場面ではありませんので、原則問題はありません。
 
 ただし、最判平成2年11月26日等が指摘する通り、労働者の自由な意思に基づく同意か否かは減額かつ慎重に行う必要がありますので、最低でも書面による同意を取り付けるのが実務的対応になると思われます。

 

 



※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。

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