賃金・給料を相殺控除することができるか?

賃金・給料を相殺控除することができるか?

質問

 従業員が不注意で交通事故を起こし、通行人に怪我をさせてしまいました。
 通行人への損害賠償は弊社が既に支払いましたので、弊社が負担した相当額と賃金とを相殺し、残額を支給しようと思っていますが許されるでしょうか。

 

回答

 労働基準法における賃金の大原則として、賃金は労働者に対し、全額支払う必要がある旨規定されています。
 なお、法令に別段の定めがある場合または労使協定がある場合は控除して良いとされていますが、損害賠償金の相殺については該当しないと解釈されます。

 

 したがって、貴社が一方的に相殺控除して賃金を支払うことはできません。
 
 
【ポイント】
 労働基準法上、賃金については、①通貨で支払うこと②労働者に直接支払うこと③全額支払うこと④毎月1回以上支払うこと、が原則とされています。

 

 本件では、「③賃金全額を支払うこと」に違反することになるので、雇い主側が一方的に賃金と相殺することはできないという結論となります。

 

 ところで、裁判例上、労働者が任意で相殺することに同意している場合には相殺可能とされています。
しかしながら、任意か否かは後々争われることが多いことから、最低限、労働者の署名押印のある相殺同意書面を入手しておく必要があります。

 

 なお、民法上、使用者が支払った損害賠償金を従業員に対して請求(求償)する場合、全額認められることはまずあり得ないと考えて下さい。

 業務遂行中の単なる過失により事故が生じたというのであれば、裁判例の傾向からして、2~3割程度しか認められないと予想されます。

 

 このため、労働者が相殺に同意しているとしても、損害賠償金の全額を相殺することは「やり過ぎ」と判断される可能性もありますので(公序良俗違反による無効の可能性)、具体的な負担額についても検討が必要です。


 

※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。