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【講義録】メンタルヘルス対策とパワハラについて

はじめに

 平成23年12月6日にオール日本スーパーマーケット協会にて開催された、「メンタルヘルス対策とパワハラ」に関する講演内容を、加筆修正した形でWEB上にアップしました。

 内容については以下の通りです。

 

 第1 メンタルヘルスとは
 第2 メンタルヘルス不調の原因
 第3 パワーハラスメント
 第4 メンタルヘルスに対する体制作り
 第5 メンタルヘルス不調者への対応
 第6 休職手続き
 第7 復職
 第8 メンタルヘルスと労働災害


 

第1 メンタルヘルスとは

 

1 対策の必要性

・安全配慮義務違反(最判昭和59年4月10日)→労働契約法5条
 
 「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

 

2 メンタルヘルス不調の種類

・うつ病、躁うつ病、適応障害、統合失調症、不眠症、パニック障害…

 


 あえて、直訳すると精神衛生への世話とでもなるのですが、「心の問題」といった方が分かりやすいかもしれません。

 ところで、平成23年6月14日に厚生労働省が公表した資料によると、精神障害による労災請求件数が過去最高になったとのことです。

 今後はメンタルヘルスケアに関する問題に介入する専門家の増加や訴訟の増加も懸念されるところ、概して企業側の準備は不十分のようです。

 

 そして、裁判となった場合、残念ながら企業が無傷には済まないのが実情です(損害賠償額の支払い問題はもちろん、悪意を持った報道などによるリピュテーションリスク、訴訟対応に要する労力・時間・費用など様々な影響が出てきます)。

 

 さて、精神医学的なことは当職自身もよく分かりません。また、参考程度に調べた限りでも、精神医学界でも確たる判断基準は無いようで、また治療法も確立されたとは言い難いようです。

 この様な状況のため、会社としても対応に苦慮する、といいますか「手のつけようがない」というジレンマを抱えているようです。 


 

 

第2 メンタルヘルス不調の原因

 

1 原因と考えられるもの

 ① パワーハラスメント、セクシャルハラスメント(最近ではモラルハラスメントも)
 ② 長時間労働
 

 ・労働時間については会社が把握するべき(平成13年4月6日付け基発第339号)

 ・労働安全衛生法→長時間労働者への医師面接指導(同法66条の8など

 ③ 未経験、経験不足等による対応困難業務
 ④ 異動、転勤による職場環境の変化

 

2 「こころの耳」 ※厚生労働省の「おまとめ」サイト


 メンタルヘルス不調の原因は様々にあるようですが、労務管理というカテゴリにおける紛争事例を分析していくと、大まかには上記のような4つに分類できるのではないかと思います。

 会社内でメンタルヘルス不調者を出さないためには、まずは上記4点について検討しながら人事管理を行うことが必要となります。

 

 ところで、労働時間の把握に関する通達を記載しておきましたが、この通達は最近、色々と会社にとっては厄介な存在になっているように感じます。

 

 本日のテーマから外れますが、最近多発している「未払い残業代」の問題を検討した場合にはこの通達が必ず壁になってきます。

 すなわち、この通達による労働時間把握義務が会社にあることを根拠に、会社が十分な労働時間を立証できない場合、労働者側の主張がほぼ認められてしまう(ノートのメモ書き程度でも証拠とされてしまう)傾向が生じているからです。

 もう10年も前の通達ですが、今一度、この通達の重要性を認識して頂ければと思います。

 

 さて、話はそれてしまいましたが、メンタルヘルス全般に関しては、厚生労働省のおまとめサイトでも言うべき「心の窓」というWEBが非常によくまとまっています。

 このWEBサイトの存在は知っておいて損はないかと思いますので、是非、お気に入り等の登録を検討してみて下さい。

 

 今日は時間の都合上、全てをご説明することは困難ですし、与えられたテーマが「パワーハラスメント」となっていますので、次に、パワハラについて解説を行いたいと思います。



 

第3 パワーハラスメント

 

 1 法律上の定義が存在しない(→平成24131日追記有り。後述を参照)

   ※広辞苑第6版では、「職場で上司がその地位や権威を利用して部下に行ういじめや嫌がらせ」と定義 

 

 2 「上司の『いじめ』による精神障害等の業務上外の認定について」(平成20年2月6日付け基労補発第0206001号)

 

 3 裁判例

 (1)いじめ


裁判例

会社としての責務

東京高判H15.3.25

(イジメによる自殺について会社の責任を認めた事例)

 

・上司(直属の上司)はイジメを制止し、加害者らにも謝罪させるなど精神的負荷を和らげる等の適切な処置を執る必要がある(※しかし上司も一緒になっていじめに加担していた)
 
・(直属の上司のさらに上司に当たる者についても、被害者から申告があった以上)イジメの事実の有無を積極的に調査し、速やかに善後策(防止策、加害者等関係者に対する適切な処置、被害者と加害者を隔離するための配転等)を講じるべきであったのに講じなかった。 
 



(2)報復的な降格


裁判例


会社としての責務等

東京地判H7.12.4


 銀行が、社員を総務課受付へ配置転換した措置は、勤続33年に及び課長まで経験した者に相応しい職務であるとは到底いえず、元管理職をこのような職務に就かせ、働きがいを失わせるとともに、行内外の人々の衆目にさらし、違和感を抱かせ、やがて退職に追いやる意図をもってなされたものであり、銀行に許された裁量権を逸脱する違法なものであって不法行為を構成するというべきである。

神戸地判H16.8.31

 

・従業員を適切に就労させ、不当な処遇をしてその人格の尊厳を傷つけないよう配慮すべき義務を負っている。
 
・退職勧奨の一環として、職務内容の変更及び賃金減額を伴う配置転換の実施や、社内のネットワークから廃除するなど、退職に追い込むべく不安を煽り、屈辱感を与えるなどの精神的圧力を掛けることは違法である。

 
(3)仕事を与えない


裁判例

会社としての責務等

神戸地判H6.11.4


 即席飲料の製造販売等を業とする会社の講買部包装資材課タイピストであった女性社員が、出張所への配転命令を拒否したところ、約1年間にわたって仕事を取り上げられ、種々の嫌がらせをされた事案につき、右行為は、同人に対する加害の意図をもってなされ、合理的な裁量の範囲を逸脱する不法行為を構成するものであるとされた事例。

※約一年にわたり、当該従業員に仕事をさせず、同僚に仕事の話かけをさせなかったこと、当該従業員に対し、「会社のノートを使うな」、「トイレ以外はうろうろするな」等繰り返し嫌みをいい、電話の取り次ぎにも口をはさみ、最後には電話を取り外してしまうなどしたこと

 
(4)退職勧奨


裁判例


会社としての責務等

最判S55.7.10


 地方公務員たる市立高校教員に対する退職勧奨が、短期間内に多数回、長時間にわたり執擁に行われ、かつ同人が退職しないかぎり所属組合の宿直廃止、欠員補充要求にも応じないとの態度を示すなどした点で、違法とされ、損害賠償請求が認められた事例

※約4ヵ月の間に1213回、1回当たり2060分、1~4名で繰り返しの退職勧奨。「あなたが辞めたら2、3人は雇えます」と発言

 

(5)逸脱した業務上の指導・叱責


裁判例

問題となった上司の言動

東京地判H19.10.15

(部下に対する暴言と精神障害発症、自殺との業務起因性を認めた事例)


・存在が目障りだ。居るだけでみんなが迷惑している。おまえのカミさんも気がしれん、お願いだから消えてくれ。

 
・車のガソリン代がもったいない。
 
・何処へ飛ばされようと俺は仕事をしない奴だと言いふらしたる。
 
・お前は会社を食い物にしている、給料泥棒。
 
・お前は対人恐怖症やろ。
 
・誰かがやってくれるだろうと思っているから、何も耐えていないし、顔色一つ代わっていない。
 
・病院のまわり方が分からないのか。勘弁してよ。そんなことまで言わなきゃならないの(※注:労働者の職業はMR)
 
・肩にフケがベターとついている。お前病気と違うか。

名古屋地判H19.10.31

(長時間労働に加えて上司の言動が問題とされて、自殺との業務起因性が認められた事例)

 

・「主任失格」「お前なんか、いてもいなくても同じだ」(※感情的な叱責)
 
・「目障りだから、そんなちゃらちゃらした物(=結婚指輪)はつけるな。指輪は外せ」(※結婚指輪を身につけることが仕事に対する集中力低下の原因となると上司は考えていた)



大阪地判H19.11.12

(長時間労働に加えて、本来相談に乗るべき上司が突き放すような態度を取り続けたことから、自殺との業務起因性が認められた事例)

・ 俺が仲人をしたのに…頭が良いのだができが悪い。

 
・何をやらしてもアカン。
 
・配偶者(妻)から内緒で、「主人の相談に乗って欲しい」と電話があったことを皆の前で暴露。


 

 まず、パワーハラスメントの問題に対処するに際し、大きな壁となるのが、パワハラについての法律上正式な定義がないということです。

 このため、「何をもってパワハラというのか」その輪郭が不明確であり、正直よく分からない状況です。

 

 そして、パワハラ問題に気を遣えば遣うほど、上司は部下からの「パワハラ」という攻撃に過剰反応してしまい、適切な注意指導ができず組織が崩壊しているというところもあるようです。

 

 なお、ご参考までに、広辞苑でパワーハラスメントを調べたところ、レジュメに記載したような定義が出てきました。

 

 これはこれで、一つの参考になるかと思うのですが、「上司から部下」という一方通行だけでハラスメントの問題を捉えるべきではないのが昨今状況です。

 例えば、2年前の平成21年5月頃に、部下による誹謗中傷で上司が自殺した件につき、労災が認められたという報道が行われていました。

 

 したがって、必ずしも上司から部下への嫌がらせだけが問題になるわけではないことにご留意頂ければと思います。

 

 

※平成24131日追記

平成24130日、厚労省は「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」において、パワーハラスメントについて、次のような行為類型を発表しました。

(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)

(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)

(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)

(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 詳細は、平成24130日付「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」をご参照下さい。

 

 さて、本日は、裁判例として会社に責任が認められた事例または労災請求が認められた事例の一部を紹介しますので、ご参考にして頂ければと思います。

 

 ちなみに、(5)のみ、「問題となった上司の言動」として具体的な発言などを記載していますので、普段の業務において、このような言動等が無いか、今一度ご確認ください。

 

 なお、このレジュメに記載した裁判例を見ると、正直な感想として、「そりゃ言い過ぎだな…」と思うのではないでしょうか。

 たしかに、その感覚は間違ってはいないのですが、暗数とでも言いましょうか、判決に至らず、和解で終了しているパワハラ裁判も相当数あるはずです。

 行われている可能性は十分にあるかと思います。

 

そこで、当職の乏しい経験とはなりますが、法律上責任を負いやすい言動といえば、大まかには次のような3パターンがあるように考えています。

 ① 自己の価値観で一方的に相手を否定する。

 ② 相手を受け入れずにだめ出しする。

 ③ 仕事上の注意に止まらず、相手の性格やくせなどの人格をも問題にする。

 

また、紛争になりやすい言動としては次のようなものがあります。

 ① 相手の立場や環境を全く考慮せずに叱る。

 ② ミスは絶対に許さないという対応。

 ③ 場合によっては相手がダメになっても仕方がないと突き放す厳しい指導。

 

 以上申し上げたような事項にご留意頂きながら、部下への指導等を行って頂ければと思うのですが、私個人が部下に対して叱咤激励する場合に意識していることは、まず一呼吸し、あえてゆっくりしゃべる…ということです。

 不思議なもので、意識的にゆっくりしゃべると、感情的な発言はある程度回避できるように思います。

 個々人で感情のコントロールの仕方はあるかと思いますが、ご参考までに紹介しておきます。

 

※平成24316日追記

平成24315日に厚生労働省が発表した「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ」と題する資料を公表しています。

こちらもご参照下さい。


 

※平成24年12月14日追記

平成24年12月12日に厚生労働省が「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」と題する報告書を公表しています。

 

 

第4 メンタルヘルスに対する体制作り

 

1 法令等

・労働安全衛生法→長時間労働者への医師面接指導(66条の8、66条の9、104条)
 
 
 

 

2 何から優先するべきか?
(1)就業規則の整備

 ① 私傷病休職制度の適用対象者

 ② メンタルヘルス不調疑義者に対する受診命令(なお、名古屋地判平成18年1月18日に留意)

 ③ 出勤停止措置

 ④ 私傷病休職命令の要件

 ⑤ 休職期間中の診断書提出義務

 ⑥ 復職の判断基準

 ⑦ リハビリ出社・リハビリ出勤(連動して賃金規程も要検討)

 ⑧ 休職期間の通算

 

(2)精神科医の確保

・産業医で対応可能か


 

3 どうやって気づくべきか?

・うつ病の場合、早朝覚醒(不眠傾向であること)、日内変動(朝が弱く遅刻が目立つこと)、意欲低下、集中力低下、興味・関心の喪失、自責感、自殺念慮の傾向が出ると言われている。
 
・人格障害の場合、極端な対人関係、衝動的言動、猜疑的言動、自暴自棄の傾向が出ると言われている。
 

 

1について

 まず、メンタルヘルス対策については、法律で真正面から規定されている訳ではなく、厚生労働省からの通達や報道発表等で注意喚起が行われているのが現状です。

 このため、レジュメに記載したような色々な通達や報道発表が行われており、情報収集が大変なところがあります。

 

 効率よく最新の情報収集するためには、このレジュメでは記載していませんが、例えば、厚生労働省のおまとめサイトである「職場におけるメンタルヘルス対策等」WEBは通達関係がまとめてあるので、比較的便利ではないかと思います。


 

2について

 まずもって重要なのは、会社として対応するための根拠が無いことには、如何ともしがたい状況となります。

 例えば、メンタルヘルス不調者が出た場合に休職命令を出したくても根拠がないため出せないという場合に陥ってしまうこともあります。

 

 おそらくは就業規則を制定している会社においては、「休職制度」それ自体は存在していると思います。

 ここでは、さらに使い勝手を良くするために、当職なりに思う、見直しておきたいポイントを8つあげてみました。


 

 ①については、例えば新入社員が入社して1ヵ月程度で休んでしまう状況となった場合にまで、休職制度を適用するべきかという問題です。

 昔であれば五月病といって放っておけばそのうち出社してくるという感覚で良かったのですが、どうも今はその感覚ではマズイのではないかというのが当職の感覚です。

 

 試用期間中の従業員も正社員と同様の休職制度を認めるべきか、例えば休職期間をもっと短期にするべきではないか等検討しても良いのではと思います。

 また、同様の観点から、正社員=期間の定めのない従業員と非正規雇用者とでも別々の休職規定を設けるべきではないかと思われます。

 

 そこで、次のような規定を設けるべきではないか要検討かと思います。

試用期間中の者、期間を定めて雇用される者には適用が無い


 

 ②については、採用時や年1回の定期健康診断以外においても会社の裁量により受診命令を出すことができる旨明記するという趣旨です。

 

 もちろん会社は安全配慮義務を負っていますので、規定が無くても業務命令として受診命令を出せる場合もあろうかと思いますが、やはり規程上の根拠を明確にした方が従業員を説得しやすいのではないかと思われます。

 なお、法定外検診となりますので、労働安全衛生法66条5項但書を根拠に会社の指定医とすることも検討して良いかと思います。

 

 ところで、裁判例をあげていますが、これは直接争点となったわけではないのですが、「精神科医の受診を命じることはプライバシー侵害の可能性が高い」と触れています。

 したがって、規定を設け、いざ受診命令を行うにしても、周囲に分からない様な配慮をしながらの受診命令が必要となるのではないかと思われます。

会社は従業員に対し、定時又は随時に会社指定医による健康診断を行う


 

 ③については、受診命令を拒否する等して休職制度を適用することに躊躇がある場合、とりあえず本人への配慮及び周囲の従業員の業務への支障等を勘案して、業務命令として出勤停止措置を行うための根拠規定です。

 なお、業務命令としての出勤停止ですので、賃金支払義務は生じるものと考えられます。

「会社の命じる健康診断を受けない場合、会社は次の措置を取ることができる。

  ・就業を一定期間禁止又は制限する

  ・配置転換を行う

  ・その他必要な措置」


 

 ④については、休職命令を出すに際し、就業規則上「業務外の傷病により欠勤が引き続き○ヵ月に達し」という継続的な欠勤を要件としていることが一般的なようです。

 しかしながら、メンタルヘルス不調者の特徴として、出勤と欠勤を断続的に繰り返すことが多いのが実情であり、断続的な出勤・欠勤を繰り返された場合はいつまで経っても休職命令を発令できないという事態となっています。

 

 従って、継続的な欠勤ではなく、例えば「直近3ヵ月で○日欠勤した場合」とするのが一案ではないかと思います。また、欠勤扱いを免れる為に、出社して直ぐに帰社するということも想定されますので、出勤の定義(例えば6時間以上勤務したこと)を定めることも一案ではないかと思われます。

 ところで、昔からの会社に多いようですが、私傷病休職の場合に賃金を支給する旨の規定を設けている会社もあるようです。

 しかしながら、今後は悪用される恐れも多いことから、ノーワークノーペイの原則に基づき、無給とするのが筋論ではないかと思います。

 「会社の従業員が次の各号の一に該当する場合、休職を命じることができる。

  ・直近○ヶ月で○日以上欠勤した場合

   前項1号の適用においては、○時間以上の就業をもって出勤扱いとする。」


 

 ⑤については、詐病対策として、休職期間中に定期的に診断書を提出させる等の条項を盛り込む趣旨です。

 

 なお、あまりよくない事例であることは百も承知なのですが、3月11日に発生しました東日本大震災後において、外国人を中心に一斉にうつ病の診断書が提出されて私傷病の休職申請を受けたという事例を経験しました。

 たしかに、放射能漏れ等の被害が想定される中で、「仕事どころではない」という気持ちも分からなくもありませんが、真面目に勤務している従業員との関係上、詐病を許すわけにはいきませんので、やはりこうした条項を入れておく必要性があるのではないかと感じています。

  「休職期間中の者は、会社から指示があった場合、医師の診断書を提出しなければならない」

 

 ⑥については、復職の判断については会社がイニシアチブを持っていること、つまり会社が復職の可否についての判断権があることを明示するという趣旨となります。

 

 そして、会社が判断する材料を得るためにも、会社指定医の受診義務や主治医のヒアリングを行うことの告知(予めの承諾については法的には疑義有り)についても定めておくのが無難かと思います。

 「休職の事由が私傷病による場合、従業員が提出する会社指定医の診断書をもとに会社が判断する」


 

 ⑦については、そもそも規定を設けるべきか否か議論があるかと思うのですが、厚生労働省はリハビリ出社・出勤について、義務ではないものの制度設計を呼びかけていますので、ある程度は対応した方が良いのではないかと思われます。

 

 ちなみに、概要については、厚生労働省が平成21年に「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」改訂版を公表していますので、そちらをご参照ください。

 

 ちなみに、詳細なリハビリ出社・出勤に関する規定を設ける余裕がない場合であっても、「業務上の都合等により、休職前の職務とは異なる職務に配置することがある」と定めておき、柔軟性を持たせることも一案かもしれません。

 

 なお、(  )で賃金規程も要検討と書きましたが、これは、リハビリ出勤の場合軽作業を行わせることが多いところ、軽作業であるにもかかわらず、休職前の賃金満額を支払うのでは、どうも釣り合いが取れない可能性が出てくるからです。

 従って、リハビリ出勤の場合については、最低賃金に反しない範囲で別途定めることができる旨の規定を設けるべきではないかと思われます。

 「・私傷病休職期間中、従業員からの申し出により一定条件下において、復帰準備のための出社又は勤務を認めることがある。

  ・前項の出社・勤務における諸条件については、会社と従業員が協議の上、会社が決定する。」


 

 ⑧については、メンタルヘルス不調者の傾向として、再発する蓋然性が高いことから、再び断続的な出勤・欠勤になりやすいことへの対応策として見直した方が良いという趣旨です。

 最近では対処している就業規則も見られるようになりましたが、具体的には「復職後6ヵ月以内に、同一又は類似の傷病により欠勤した場合には、その欠勤開始日より再休職とみなし、前回の休職期間と通算する」等の規定になります。

「私傷病休職で復帰後1年以内に同一若しくは類似の傷病により欠勤した場合には、その欠勤開始日より再休職とみなし、前回の休職期間と通算するものとする」

 

 

 次に、(2)についてですが、そもそも産業医がいない会社も多いかと思います。

 が、産業医がいるからといって安心できるという訳ではありません。

 といいますのも、産業医は内科医や外科医であることが多いのですが、必ずしも精神医学に強いとは限らず、会社としても判断を仰ぎたくても対応不可という場合があり得るからです。

 

 この様な場で情報交換する、ネットで探す、医師紹介会社にあっせんしてもらう等々手段はあるかと思いますが、平常時に見つけておく方が良いことは言うまでもありません。

 ちなみに、平成23年10月25日に報道されていましたが、大阪地裁において、医師がメンタルヘルスの不調を訴えている患者に対し、「病気やない。甘えるな」「薬を飲まずに頑張れ」等と発言し、その結果、病状が悪化し復帰が遅れたことについて医師に60万円の慰謝料等の損害賠償を命じる判決が出ているようです。

 

 この様に、医師と言えども、やはり専門外のことについてはなかなか適切な指導ができないのが実情なのかもしれません。


 

3.について 

 私もそうですが、企業のご担当者様におかれましても、精神科医でもありませんし、精神医学に明るいわけではないかと思います。

 

 ただ、例えば「うつ状態」の場合であれば、早朝覚醒(不眠傾向であること)、日内変動(朝が弱く遅刻が目立つこと)、意欲低下、集中力低下、興味・関心の喪失、自責感、自殺念慮などの症状が出ますので、これらを徴表を見逃さないという意識が必要かと思います。

 

 また、「人格障害」の場合、極端な対人関係、衝動的言動、猜疑的言動、自暴自棄の傾向などが見られるようです。

 こういった症状が1つでも見受けられる場合には、担当者としては、まずは一声かけて上げるのが必要かもしれません。

 

 あと、一般的によく言われるものとしては、身体的な変化(急に痩せた・太った、顔色が悪くなった等)、言動面の変化(無口になった、自己否定を繰り返すようになった、服装に清潔感が無くなった、喜怒哀楽が無くなった)というのもありますので、ご参考にしてください。


 

第5 メンタルヘルス不調者への対応

 

1 不調の原因
(1)業務が原因の場合と私傷病が原因の場合とでの相違点
  ・労災申請(業務災害)
  ・会社の安全配慮義務違反による損害賠償義務
  ・解雇制限


(2)労災の認定基準に関する通達など

「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」(平成11年9月14日付け基発第544

 
 
 
 
 
 
 
(参考)
 
 
 


2 就労の可否
  ・診断書の提出
  ・主治医からのヒアリング(または会社指定医の診断)

 

3 解雇の可否
  ・休職を経ずに解雇可能か

 

※(追記)

セミナー開催後の動きとして、平成23年12月26日に厚生労働省が心理的負荷による精神障害の労災認定基準を新たに定め、都道府県労働局長宛て通知したと報道されています。

セミナーでは一切触れていませんので、追加情報としてご参照ください。

◆心理的負荷による精神障害の労災認定基準を策定~うつ病など精神障害の認定基準が分かりやすくなります~◆

  

 まず、大前提としてご理解いただきたいのが、「業務が原因での休職(業務災害)」となると、私傷病ではありませんので、休職させて、休職期間満了後に自然退職させるという訳にはいきません。

 

 大まかにはここに記載した3点が異なってくるのですが、いきなり従業員から診断書を提出されて、業務災害だと言われても、会社としては判断しようがないかと思います。

 最終的には、主治医または会社指定医の診断を参照しながら判断することとなりますが、会社側で知っておきたい通達をレジュメに掲載しておきます。

 

 上から7つは、今日のテーマであるメンタルヘルス関係のもの、「参考」の1つ目はセクハラ、2つ目は長時間労働に関する労災の判断基準です。

 これらを参照しながらの判断を行うことになるのですが、あえて若干混乱させるようなことを申し上げます。

 

 業務災害として労災申請が認められたから、直ちに会社業務が原因で損害賠償責任を負うという訳ではありません。

 

 もちろん、労災申請が認められたら、会社が安全配慮義務違反により損害賠償責任を負う可能性は極めて高いのですが、平成22年12月8日に仙台高裁で労災は認められたが、会社の責任は否定された裁判例が存在します。時間の都合上詳しくご説明することはできませんが、長時間労働によるうつ病発症、そして過労自殺(過労死ではない)という案件のようです。

 

 一方で、労災申請が認められなかったから休職期間満了による解雇を行った事例につき、業務上の事由によりうつ病が発生したとして解雇無効と判断された東京地判平成20年4月22日というのもあります。

 

 いずれにせよ、まずは労災認定基準を参照しつつも、労務管理が十分だったのかという視点は持ち合わせた方が良いのではないかと思われます。 

  

 次に、休職を認めるか否かに際しては、最初が肝心ということで、レジュメに記載したよう対処を取ることが望ましいように思われます。

 もちろん様々な事情があるため、うまく入手できないこともあるかと思いますが、時間をかけてでも対処するべきではないかと思います。 

  

 最後に、原則論と言いますか、私傷病休職制度を設けている以上は、休職制度を適用せずにいきなり解雇という手続きは回避するべきかと思われます。

 ちなみに、東京地判平成14年4月24日のような休職期間を適用せずに解雇が有効とされた事例もあることはありますが、事例判断であり、あまり過大視することはできないかと思われます(休職期間経過後であっても就労不能と診断されている等のレアケース)。



第6 休職手続き

 

1 休職命令

 

2 休職中の報告・行動制限
  cf 大阪地判平成19年12月20日(休職中に療養に専念しなかったことに対して懲戒解雇したところ、結論として無効とされた事例)

 

3 休職期間満了前の準備

・「心の健康問題により休業した職場復帰支援の手引き」(平成16年厚労省報道発表)
 
・「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の改訂について(平成21年3月23日厚労省報道発表)

 

4 復職可否の判断

 

5 自然退職・解雇する場合の留意点 

・軽作業可、配置転換可or業務遂行不能
 
・業務上or私傷病
 
・自然退職or解雇

 

 

1について 

 本人からの休職申請の場合、私傷病か否かの判断はともかく、比較的休職措置を取りやすいと思われます。

 

 しかしながら、本人がメンタルヘルス不調であること否認する場合、説得することはもちろんですが、やはり最終的には、休職命令を出すこと自体躊躇せざるを得ないことがあります。

 現状の取りうる対応としては、

 

① 休職命令の包括条項を用いる
 
② 就業規則上の根拠があれば受診命令、受診命令に反するようであれば出勤停止等の懲戒処分を行う
 
③ 業務上の支障が出ている、服務規律違反を理由とした出勤停止等の懲戒処分を行う
 
④ 業務命令としての自宅待機処分を行う(但しこの場合は賃金支払義務が生じる)

等で対応するしかないのが現状です。

 

 なお、正当に休職命令を発令したにもかかわらず当該従業員が従わない場合、説得を試みることはもちろんですが、最終的には業務命令違反を理由とした懲戒処分を検討するほか無いと思われます。

 

 

2について 

 休職中の報告義務については、就業規則で手当を行うべき点は先ほどご説明申し上げた通りです。

 

 なお、レジュメに参考裁判例をあげましたが、これは療養期間中に大学院を卒業するための論文を制作していたとして懲戒解雇したところ、無効と判断された事例です。

 

 療養期間中に論文制作を行ったということで、おそらく会社側は詐病を疑ったのではないかと推測しますが、懲戒解雇は行き過ぎと判断されています。

 

 

3について

 まず、念のための準備として、休職期間満了の2週間から1ヵ月くらい前までに、休職期間満了の期日、復職不能の場合は退職(解雇)となること、復職を申し出るのであれば医師の診断書等を準備の上提出すること、等々の通知文書を従業員に送付するのが無難ではないかと思われます。

 たしかに、就業規則上にこれらのことは書いてある以上はあえて知らせるべきではない、メンタルヘルス不調者に対する刺激が強いのではないか等の反対意見もあるかと思いますが、「知らなかった」というクレームは結構多いような印象を持っています。

 したがって、念には念をということで、当職個人としては薦めているのが実情です。

 

 次に、復職の可否に関連して、再休職命令(休職の延期を含む)を行うべきか、配転を考慮するべきか等色々な裁判例があります。

 例えば、復帰を認めずに再休職命令が不当と判断された東京高判平成7年8月30日、再休職させずになした解雇を無効と判断した東京地判平成17年2月18日、配転を検討せずになした休職命令を無効とした最判平成10年4月9日などが存在します。

 さらに、ここに記載した厚労省発表資料にも書いてありますが、リハビリ出社・リハビリ出勤に備えた受け入れ職場の確保、処遇等も検討しておく必要があります。

 

 いずれにせよ、安易に期間の経過による自然退職(解雇)は回避するべきと思われます。


 

4について 

 絶対視することはできませんが、従業員が提出した診断書において「復職可」と記載されていた場合、主治医の判断を重視するのが大原則です。

 それでもなお、復職不可と会社が判断するのであれば、主治医へのヒアリング調査の過程で診断を撤回してもらうか、別の医師による「復職不可」の診断書を用意する等の根拠がないことには、会社として闘いようがないことを十分に肝に銘じて欲しいと思います。

 

 なお、ご承知の通り、「復職」という用語の意味については、基本的には休職期間前の業務を遂行できる程度に回復したことを意味しますが、昨今の裁判例によって、この定義は崩れてきています。


 例えば、復職拒否が無効であるとした裁判例として


・復職不能の判断が誤っていると判断された札幌地判平成11年9月21日(※2~3ヵ月で100%の稼働が可能という認定がされています)

・配転を検討せずに自然退職扱いを無効と判断した大阪地判平成11年10月4日

・復職時の関連会社での勤務の提案は配転を検討したことにならないとした大阪地判平成14年4月10日(※同一会社内での配転をまず検討するべきと指摘されています)

・休職期間満了直後に従前の業務への復帰できずとも,短期の準備期間であれば復帰出る場合には復職拒否は不当と判断された大阪地判平成13年11月9日

 

等があります。

 もちろん、有効と判断した裁判例も存在します。


・東京地判平成16年3月26日(※事例判断)

・休職後、診断書を提出せずに復職を求める従業員の解雇を有効と判断した大阪地判平成15年4月16日

 

 ところで、実務上悩ましいのは「軽作業であれば復職可」と診断書に記載されていた場合です。
 これは軽作業という業務内容をどの様に設定するのか、リハビリ出勤の制度構築とも関連する問題となりますが、たしかに、軽作業ということは休職前の業務遂行ができないことを意味するものの、近時の裁判例は配置転換を含めた配慮を求めていますので、よほどのことがない限り復職を拒否するという対応はリスクが高すぎるかと思います。

 

  

5について

 上記裁判例でも指摘した通り、安易に業務遂行不可と判断し、会社から去ってもらうという判断はしない方がベターです。
 したがって、休職期間満了に際しては、今一度、ここに記載したようなチェック事項を確認して欲しいと思います。

 なお、メンタルヘルス不調が業務上という場合は、労基法19条1項による解雇制限がありますので、そもそも辞めさせること自体できません(但し、治癒・症状固定していた場合は除く)。また、偶に見かけるのですが、就業規則上「休職期間満了をもって解雇とする」となっていた場合、解雇予告手当の支払が必要になるのではないかと疑義が生じます。
 したがって、退職扱いと明記するのが無難かと思います。

 

 

第7 復職

 

1 リハビリ出社・リハビリ出勤

 

・「心の健康問題により休業した職場復帰支援の手引き」(平成16年厚労省報道発表)
 
・「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の改訂について(平成21年3月23日厚労省報道発表)
 

2 人事処分としての降格、配置転換と賃金減額

 

3 再休職

 

 

1について 

 一般用語としてどこまで浸透しているのか分からないのですが、「リハビリ出社」は出社しても業務遂行せず会社の雰囲気に慣れてもらうための措置、「リハビリ出勤」は一定の軽作業を行うため業務遂行するという相違点があると言われています。端的に申し上げれば、リハビリ出社の場合は賃金支払義務無し、リハビリ出勤の場合は賃金支払義務ありとなります。

 なお、厚労省の立場はともかく、法律的にはリハビリ出社・リハビリ出勤を絶対に行わなければならない義務はありません。
 ただ、「ものは使いよう」なところがあり、最近では、あえてリハビリ出勤で軽作業を行わせ、それでも出勤できないとなった場合には復職不可であることは明らかであるという証拠作りのために利用されているところもあるようです。これはこれで、色々な考え方はあるかと思うのですが…。 

 

 

2について 

 降格にも色々ありますが、実務的に問題になるのは、役職・職位の降格と賃金減額の可否、職能資格引き下げによる賃金減額の可否かと思います。

 この点、役職・職位の降格については人事権の行使として、基本的には可能と考えられます(但し、役職・職位が限定された労働契約の場合は困難)。ただ、役職・職位と賃金が連動しているのか、例えば当該役職・職位によって手当支給の有無が定まっているのであれば問題ありませんが、連動していないのであれば賃金減額が可能かは別途検討が必要となります。

 一方、職能資格については就業規則等の根拠無く行うことができないというのが裁判所の立場です。職能=職務遂行能力=経験値と位置付けられますので、一度身についた能力が何故下がるのかという根本的な問題が潜んでいるように思います。
 したがって、職能資格の引き下げ及び職能資格と連動する賃金規程の2つが整備されていない限り、降格も賃金減額も不可能と言うことになるかと思います。

 次に、配置転換についてですが、いわゆる職務の限定が契約内容となっていない限り、配置転換自体は会社が有する人事権行使の一つして行うことは可能です。配置転換に伴い賃金減額ができるか否かについては、業務(職務)による賃金規程が定められている否かによります。要は、業務(職務)によって賃金が異なるというのであれば、その賃金規程に当てはめることで対処可能となりますが、特段の定めがないのであれば、やはり個別同意をもらわないことには賃金減額は困難と言わざるを得ません。

 

 

3について 

 メンタルヘルス不調者の場合、出勤しては休み、出勤しては休みと言うことを繰り返すパターンが多いと言われています。そうなった場合、休職明けに少し出勤してきたが、また休んでしまったという場合に、果たして新たな休職命令が出せるまで待たなければならないのかという疑問が生じます。
 要は、復職前の休職の延長として取り扱うことができないかという問題に帰着するのですが、結局のところ、この問題についても就業規則の定め方1つとなってしまいます。
 すなわち、私傷病による休職を経て復職した後、一定期間内に同一の私傷病によって欠勤する場合には、前回の休職と通算するという旨の規定があれば、復職前の休職の延長として取り扱うことが可能、この結果、休職期間満了時を早くすることができるという対処が可能となります。

 

 

 

第8 メンタルヘルスと労災(労働災害)手続き

 

1 労災申請への協力

 

2 労災認定と会社の責任
(1)過重労働によるうつ病発症
   ・東京高判平成21728日(数少ない否定例)
(2)いじめ・パワハラとうつ病発症

    ・高松高判平成21年4月23日(原審の高松地裁では会社の責任が肯定されていたが、高裁で会社側が逆転勝訴した珍しい事例)

(3)業務災害が認められたが、会社の責任が否定された事例
   ・仙台高裁平成22128

 

(参考)「精神障害等の労災補償について」 厚生労働省のおまとめサイト

 

 

1について 

 労災申請の手続き自体は、労働者本人が行いうる手続である以上、無碍に断っても仕方がないと思われます。
 したがって、少なくとも手続き面では協力することはやむを得ないと考えますが、この際に注意するべきは「事業主の証明」欄、特に「災害の原因及び発生状況」への記載内容です。この欄は、従業員本人が自己の主張を元に記載してあることが多いのですが、この点について、何ら異議を挟まずに会社側で「事業主の証明」欄にサインした場合、後々、特に労災では填補されない慰謝料等の民事訴訟の場面において、従業員の主張内容を認めたと言われかねない、不利な状況に追い込まれてしまいます。
 この観点からすれば、会社の認識とは異なる部分がある場合、「●●は除く」と異議を出した上でサインすることが必要となります。

 次に、労災申請が行われた場合、必ず労基署の担当官より連絡があり、ヒアリング調査はもちろん資料の提出等を求められます。会社側としては煩わしいこと、この上無いと思われるかもしれません。
 が、労災申請手続きに協力しなければしないで、今度は労災隠しとして変に問題を拡大させてしまう場合もありますので、基本的には協力する、しかしながら従業員の言い分と会社の認識が異なる場合には迎合しないという是々非々のスタンスで臨むのがベターではないかと思います。

 

 

2について 

 業務災害として労災申請が認められたから、直ちに会社業務が原因で損害賠償責任を負うという訳ではありません。
 もちろん、労災申請が認められたら、会社が安全配慮義務違反により損害賠償責任を負う可能性は極めて高いのですが、平成22年12月8日に仙台高裁で労災は認められたが、会社の責任は否定された裁判例が存在します。時間の都合上詳しくご説明することはできませんが、長時間労働によるうつ病発症、そして過労自殺(過労死ではない)という案件のようです。

 

 

 本日は、メンタルヘルス不調者が発生してからの一連の流れに沿って解説を試みたつもりですが、ボリュームが多く、なかなか一日で全てを理解することは困難かと思います。
 もし、手っ取り早く、自社がどの程度メンタルヘルス対策に取り組んでいるか座標軸が知りたいというのであれば、
中央労働災害防止協会「メンタルヘルス対策に係る自主点検票」をチェックすることをお勧めし、本日の講演を終了させていただきます。
 ご静聴ありがとうございました。

 

 

 

<ご注意>
この記事は平成23年12月6日に開催されたセミナーの講義録を元に作成したものです。できる限り内容は正確になるよう努めましたが、当職の勉強不足により誤っている部分があるかもしれません。従いまして、個別の事案の解決に際しては、必ず当該記事のみから判断せず、専門家にご相談の上、ご判断頂きますようお願い申し上げます。

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