ノウハウライセンス契約の解説・チェック事項

ライセンス契約の場合、別項目で解説した「業務提携契約」のような情報の交換が行われる場合は少なく、情報発信(開示)者が保有する情報を情報受領者に対して、一定の条件にて使用許諾させる以上、情報の移動が一方通行になります。

そして、業務提携契約では「成果」という形で情報が具現化しましたが、ライセンス契約の場合は「改良発明」といった形で具現化することがありますので、この場合の権利処理を契約上行っておく必要が生じます。

 

ノウハウライセンス契約に関する条約

第a条(著作権等の帰属及びライセンス)
1 甲が提供する本ノウハウに関する一切の知的財産権(著作権、特許又は実用新案を受ける権利、営業秘密、その他法律上の権利及び地位。以下まとめて「著作権等」という)は、甲に帰属するものとする。
2 甲は乙に対し、本ノウハウの著作権等を非独占的に使用することを許諾する。

情報、特にノウハウについては権利化することが困難であるため、発信する情報・ノウハウについては誰に帰属するのか、その許諾態様はどういったものなのかは明記しておく必要があります。

特に、第1項が存在しない場合、情報・ノウハウが発信(開示・提供)された途端、情報受領者にも帰属するかのような誤解を与えることにもなりかねず要注意です。

 

第b条(禁止事項)
乙は、本ノウハウについて次の行為を行ってはならない。
①甲以外の第三者に転売、交換、提供、公表、伝達、閲覧させる行為
②複製及び転写・転載する行為
③内容の修正、改ざん、変更を行う行為
④本ノウハウを記載した媒体物と同一又は類似するものの作成・販売
⑤出版及び電子メディアによる配信又は一般公開
⑥著作権法又は不正競争防止法に違反する行為

前述のとおり、情報・ノウハウについては権利化することが困難であるため、発信(開示・提供)することで、情報受領者側自らはもちろん、第三者を通じて自由に利用できてしまうのが実情です。

自由に使われてしまうことはノウハウとしての価値を減殺してしまいますので、ライセンスする条件をできる限り具体的に契約内容として明記しておくべきです。

この具体化する際のポイントは、第三者に開示されてしまうことによるノウハウ価値の減殺防止と、ライセンシー自らの利用によるノウハウ価値減殺の防止という2つの視点から検討すればまとめやすいのではないかと考えます。

 

 

第c条(本ノウハウに基づく改良ノウハウの取扱い)
1 本ノウハウに基づき、乙において改良ノウハウを考案した場合、甲は乙に対し、乙の本契約内容の遵守及び乙自らの使用に限定されることを条件として、著作権等の権利を主張しないものとする。
2 乙が、本ノウハウに基づき発明、考案等の知的財産権の出願又は設定登録の申請を行う場合は、事前に甲に通知し甲の承諾を得た上で行うものとする。

発信(開示)したノウハウを応用することで亜種又は新規のノウハウ(ここでは改良ノウハウと呼んでいます)が生み出されることがあります。

もともとのベースになっているのは情報開示者が発信(開示・提供)したノウハウとはいえ、こうした改良ノウハウについて誰に権利帰属するのか、その使用条件はどうするのか等については法律上の決まり事はありません。

したがって、契約上に定めておかないことには、改良ノウハウは情報受領者のものであることを理由として、もともとのノウハウが拡散してしまい、ノウハウ価値の減殺をもたらしてしまう場合があります。

上記サンプル条項では、改良ノウハウの帰属は情報受領者側に帰属することを認めた上で、権利化手続を行うことに制限を課すことでバランスを図っています。

なお、情報受領者側に帰属させる代わりに、情報発信者に対する無償ライセンスを付与するという形にしておくのも一案かもしれません。

 

※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。