「金」に関する契約(金銭消費貸借契約書、分割弁済合意書など)

「金」に関する契約(金銭消費貸借契約書、分割弁済合意書など)

1.IT企業であっても契約書は必要不可欠

 IT企業であるか否かを問わず、事業活動を継続していくためには、仕入れ先への買掛の支払い、従業員への給料支払い、水道光熱費の支払いなど「金」に関する契約が出てきます。

 

 また、逆に色々な事情から、他者にお金を貸し付けたり、お金を貸し付けたことにしたり(典型的には売掛金について準消費貸借契約に巻き直すこと)するなどの契約が生じてきます。
さらに、事業活動のためにお金を借り入れたり、出資を受けたりする契約もあったりします。

 

 これらの「金」にまつわる契約は、特に書面化することで証拠に残すことが重要です。
 というのも、いざ支払いに困った場合、証拠が無いことを良いことに、人間何を言い出すか分からない(裏を返せば何でもあり)というのが実情であり、証拠が無い以上、それがまかり通ってしまうこともあり得るからです。
 その意味で、「金」に関する契約書の作成と締結は、特に注意を払う必要があります。

 

2.お金の貸し借りに関する金銭消費貸借契約書

 悲しいことですが、人は「お金」にまつわる争いとなると、思ってもいないようなことを言い出したりします。
 例えば、口頭で金銭の貸し借りを行ったにもかかわらず、いざ返済を求めたときには、「もらったもの(贈与)だった」、「出資だった」、「そもそも金銭を受け取っていない」などなど、ありとあらゆることを言い出します。

 

 IT企業が従業員に貸し付けたりするのであれば、「借用書」程度でも良いので書面を取っておくべきでしょう。また、返済方法として、いわゆる給料からの天引きを行うのであれば、労働基準法24条違反にならないよう、天引き(相殺)に合意した書面を必ず作成するべきです。

 

 あるいは、IT企業が何かの都合でお金を貸すのであれば、幾ら貸すのか、お金は受領したのか、利息は幾らなのか、返済時期や方法はどういった条件になっているのか、万一返済できない場合の担保はあるのか等々を検討し、その検討結果を反映させた金銭消費貸借契約書を作成・締結することが必須となります。

 

 この契約書の作成を怠ってしまうと、上記のようなありとあらゆる反論を呼び込んでしまい、回収するのに大変な苦労と手間がかかることになります。

 

3.債権管理の観点からも検討するべき弁済合意書

 売掛金の支払いについて、先方の事情により支払い延期となってしまうということは、ビジネスをやっている限り必ず発生してきます。こういった日常的に起こることについても、どれだけぬかりなく書面を締結しておくかで債権回収の実効性が全く違ってきます。

 

 例えば、システム開発に伴う成果物を納入したものの、報酬の支払い延期申請が出て場合、通常であれば、先方の言葉を信じて、延期された支払期日まで待つことが多いのではないかと思います。

 

 これで延期された支払期日に支払ってもらえればもちろん問題は無いのですが、やはりトラブルはつきものです。例えば、後になってシステムにバグ・不具合が発生した、要望通りのシステム機能を充足していない等の理由で支払わないといったことは結構発生したりします。
こうなってしまうと、単純なお金の支払いだけの問題だけにはならず、システム制作に問題がなかったことまで証明しなければならなくなるなど、非常に手間がかかります。

 

 そこで、債権回収を容易にする、つまり債権管理という観点から、未払い額の確定、未払い額発生の原因となる契約関係に不具合が無いことの確認、返済方法の確認といった適切な書面を締結することで債権回収の実効性を確保するのがポイントとなってきます。

 

 なお、完璧な書面を求めて、期限の利益喪失事由を事細かに記載したり、連帯保証人を要求したり、その他色々な取り決め事項をしようと試みる方もいますが、内容が多くなれば多くなるほど、相手方は何だかんだ言ってサインをしなくなってしまいます。

 

 債権管理という観点からは、上記のように、現状争いのない事項だけ確認する書面を徴収しておけば十分です。

 

4.返済義務は無いが別の義務が生じる出資契約書には要注意

 IT企業は、初期投資をかけないことには満足のいくシステム開発などができない場合があります。
この資金を得るために、銀行などから借り入れることができれば良いのですが、金融機関のIT企業に対する与信評価は厳しいものがあり、思った以上にお金を出してもらえないのが実情です。

 

 そこで、IT(ベンチャー)企業向けに支援を行っている投資会社(投資家)を通じて、資金を入れてもらうこともあるかと思うのですが、形式上、投資ですので投資されたお金それ自体は返済義務はありません。
 しかしながら、投資会社(投資家)もリターンを期待して投資するわけですので、お金だけを出して後はほったらかし…ということはあり得ません。株式取得を通じた経営関与はもちろん、役員派遣、決算報告の開示、いざという場合の株式買取義務など、非常に事細かな条件提示を行ってきます。

 

 出資契約は分厚いものが多く、しかも一読しただけでは何を指しているのかよく分からないということがままあるのですが、こういった曖昧模糊とした状況下で出資契約書にサインするのは非常に危険です。

 

 ここは信頼できる弁護士などの専門家にチェックをしてもらい、お金と引き替えにどういった義務や制約が生じるのか、きちんと理解しておくべきです。※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。