不当廉売

質問

当社は小売事業者です。当社と商圏・顧客層等が重複する競合の近隣事業者が、極端な安値販売(当社の仕入れ価格を下回る額)を仕掛けています。このような安値販売を止めさせたいのですが、どうすればいいのでしょうか。

 

回答

 「不当廉売」(独占禁止法2条9号3号、一般指定6項)に該当するのであれば、独占禁止法に基づく差止請求を行うこと、公正取引委員会に措置を講じてもらうよう申告することが、対応方法として考えられます。

 

解説

 不当廉売という言葉はどこかで聞いたことがあるかもしれません。独占禁止法では次のように定義されています。

 

「正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」

 

 ご相談者のような小売業者の場合、真っ先に検討する事項が「供給に要する費用」に該当するか否かです。

これは、仕入れ価格を下回るか否かが重要な判断要素となります。ただ、ご相談者の仕入れ価格ではなく、本件で近隣事業者の仕入れ価格が判断要素となるため、ご相談者にとっては分かりづらい判別しづらいところがあるかもしれません。

 

 もっとも、同じ商品であれば、仕入れルートも同一である可能性が高いことから、当該仕入れルートを通じて情報収集することも検討してよいかと思います(なお、この情報収集の過程でご相談者と近隣事業者との間で仕入れ価格が異なっていた場合、仕入れ価格の減額交渉材料になることはもちろん、場合によっては独占禁止法2条9項2号に定める「差別対価」の問題が生じるかもしれません)。

 

 次に、「正当な理由」の有無に関する検討ですが、例えば賞味・消費期限切れが近い期限生鮮食品、販売最盛期を過ぎた季節商品のように、見切り販売の必要性がある者については正当性ありと判断されます。あるいは、いわゆる訳あり品(キズモノ商品など)についても、キズがあるから市場価格が下がることも有り得る話ですので正当性が認められやすいのではないかと考えられます。

 逆に、上記のような事情が無いにもかかわらず、仕入れ原価を下回って販売する場合には正当性は無く、不当廉売に該当する可能性は高くなると考えられます。

 最後に、「他の事業者の事業活動を困難」という点ですが、現に事業活動が困難になっていることまで求められるわけではなく、蓋然性が高い場合にも要件該当性が認められると考えられています。

 

 不当廉売については、公正取引印階が「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」というガイドラインを公表していますので、こちらもご参照ください。

http://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/futorenbai.html

<現場担当者が知っておきたいポイント>

◆安売りで影響を受ける側
⇒不当廉売に該当しないか調査を行うと共に、自社仕入れ価格の交渉材料にもならないか(差別対価)、情報収集を徹底するようにしましょう。
◆安売りを仕掛ける側
⇒不当廉売と言われないよう仕入れ価格や廉売期間の設定などを調整しつつ、自社の利益確保も考えながら戦略を練るようにしましょう。

 

※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。

 

「企業間取引と独占禁止法」で取り上げた相談内容の目次です。

■再販売価格維持

■販売地域の制限

■販売方法の制限(インターネット)

■販売方法の制限(ライバル商品取扱いの禁止)

■リベートを取引先ごとに変更してよいか

■同業他社への取引妨害

■下請代金の減額禁止

■下請法の適用範囲(資本金)

■下請法の適用範囲(製造委託・修理委託)

■下請法の適用範囲(情報成果物作成委託・役務提供委託)

■下請法の効果(親事業への義務①)

■下請法の効果(親事業者への義務②)

■不当廉売

■カルテルについて①

■カルテルについて②