<会社取引と金融③>追加担保要求への対応、債権者変更に伴う返済条件変更への対応

【ご相談事項】

会社所有の不動産を担保に銀行融資を受けていたところ、追加担保を要求されました。この要求には応じる必要があるのでしょうか。

また、債権を買い取ったと主張する者より返済条件の変更を求められています。これについても応じる必要があるのでしょうか。

 

【結論】

予め合意した返済条件に従って支払いを行い、かつその他契約違反がないのであれば、追加担保の要求に応じる必要はありません。

また、債権譲渡に伴う債権者の変更であっても、返済条件通り支払っていたのであれば、返済条件の変更に応じる必要はありません。

 

【ポイント】

1.追加担保の要求について

(1)追加担保条項とは

金融機関から融資を受ける場合、融資契約書(金銭消費貸借契約書)を締結することが多いと思われます。小さな字で細々としたことが書いてあるので、熟読したことなどないという方も多いかもしれませんが、追加担保条項と呼ばれる規定が設けられていることが通常です。

債務者(融資を受けている事業者)に信用不安となる事象が生じた、融資金を目的外に使用したといった、融資契約書(金銭消費貸借契約書)に定める一定の事由に該当した場合、金融機関が債務者に対し、何らかの担保を差し出すよう要求できるというものです。

この追加担保要求に応じなかった場合、債務者が銀行に新規融資を申込んでも、金融機関はその申込みを拒絶することが通常です。また、金融機関内の方針が引揚げ(早期回収)に変更となることも多いとされています。

 

(2)追加担保の要求に応じる必要があるのか

融資契約書(金銭消費貸借契約書)に定める事由に該当しているのであれば、追加担保の要求に応じる必要があります。

ただ、実際のところ、金融機関が追加担保の要求を行う場面では、債務者も資金繰りに窮するなどして、担保として差し出せる財産がないこともあったりします。一方、金融機関としても、追加担保条項を根拠に、債務者に対して新たな担保を差し出すよう強制することが難しいことから、それ以上の追及を行わないというのが実情です。

このように記載すると、追加担保の要求に応じなくてもよいのではと考えるかもしれません。しかし、今後の事業継続に与える悪影響は計り知れません。なぜなら、上記(1)で記載したような金融機関の方針変更を招来することはもちろん、期限の利益喪失事由に該当するとして(民法第137条第3号)、一括返済を迫られることにもなりかねないからです。

したがって、金融機関より追加担保の要求があった場合、重大な局面を迎えていると認識し、その代替手段を含め、金融機関と十分に協議を行う必要があります。

 

2.新たな債権者からの返済条件変更要求について

(1)債権者としての正当性確認

債権を買い取ったと主張する者と交渉する前に、まずは確認するべき事項があります。

それは、買い取ったと主張する者が、法律上の債権者に該当するのかという点です。なぜなら、法律上の債権者ではない者と返済条件交渉を行ったところで、真の債権者との間では何らの効力が生じないからです。また、法律上の債権者ではない者に対して支払いを行ったとしても、真の債権者への支払いとはなりませんので、債務者は二重払いのリスクを負うことにもなりかねません。

債権を買い取ったというのであれば、民法第467条に定める債権譲渡手続き、債権譲渡登記に関する特例法に基づく手続きが行われることが一般的ですので、まずは法が定める手続きが行われているのかを確認する必要があります。

 

(2)返済条件の変更要求に応じる必要があるのか

旧債権者と締結した融資契約書(金銭消費貸借契約書)において、債権者の変更が行われた場合は返済条件の変更交渉を行う旨の規定があるのであればともかく、一般的にはそのような規定は設けられていないと思われます。したがって、債務者は当然に返済条件の変更交渉に応じる必要はありません。

また、仮に債権者の変更が行われた場合は返済条件の変更交渉を行うという規定があったとしても、あくまでも協議することに留まると考えられます。したがって、誠実に協議を重ねたものの、交渉がまとまらなかったというのであれば、契約違反にはならないと考えられます。

以上のことから、返済条件の変更を当然に受け入れる必要はありません。

 

(3)変更後の返済条件が有利である場合の注意点

例えば、金融機関が正常な取引先ではないと判断し、サービサーに債権を売却した場合、サービサーよりリスケ等の提案が行われる場合があります。この場合、基本的には前向きに変更交渉を進めてよいと考えられますが、注意点があります。

1つ目は、支払い義務のある債権が、実は消滅時効が完成していないかという点です。現場実務ではよくある話なのですが、新たな債権者は消滅時効が成立していることを分かっていながら、少額でもよいとして債務者に支払いを求めることがあります。この支払いに応じた場合、債務者は消滅時効の成立を後から主張できなくなりますので、注意を要します。

2つ目は、債務者が旧債権者に対して有していた抗弁事由(例えば相殺など)の行使を制限されないかという点です。返済条件変更の合意書の中に、しれっと書かれていることがありますので、当該合意書の内容はよく確認する必要があります。

 

3.まとめ

契約内容を遵守しても、金融機関は、自らの立場が有利になるよう、あの手この手で追加担保や返済条件変更の要求を行ってきます。

本当に応じる必要があるのか、正しい知識を元に判断することが求められます。

 

【当事務所で提供可能なサービス】

上記3.のまとめでも記載しましたが、債務者において「正しい知識」を収集することが難しいことはもちろん、必要十分な情報なのか分からないまま判断することは相当な覚悟が必要になるかと思います。

また、法的には応じる必要がないという判断が正解であったとしても、金融機関の融資姿勢や与信評価に事実上の悪影響を及ぼす可能性も想定する必要があります。

当事務所では、金融機関等より要求が行われた背景事情を探りつつ、適切な対処法を見つけ出し、ご相談者様に解決策のご提案をさせて頂きます。

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