売上金を回収するための回収方法⑩(回収困難な場合の税務処理)

売上金を回収するための回収方法⑩(回収困難な場合の税務処理)

※前回までで、債権回収に関する方法論を解説してきました。今回は、残念ながら回収困難となった場合の処理についてです。
 

 

5 債権回収が困難と判断した場合の処理 


 これまで債権回収の方法論にスポットを当てて説明してきましたが、どうやっても相手方が支払ってくれない、あるいは回収ができないという場面が生じます。


 この場合、やむを得ず回収をあきらめるという選択肢を取らざるを得ないのですが、企業経営者が気を付けなければならないのは、債権(売掛金など)について、どうやって税務処理を行うのかということです。
 なぜ、税務処理について意識しなければならないかというと、債権は資産であり、回収可能性の有無を問わず、原則的には債権の額面通りで利益計上されてしまうからです。裏を返せば、課税対象にされることなく損金処理を行わないことには、現実にお金は入ってこない、しかし、課税されて税金は持っていかれてしまうということになってしまいかねません。
 そこで、税務当局に否認されない、「債権回収をあきらめても仕方がない」という実態をどうやって作出するのか、解説を行っていきたいと思います。
 なお、税務上の問題が絡んできますので、債権を損金処理するに際して、会社の顧問税理士さんに必ず相談するようにしてください。


 さて、「債権回収をあきらめても仕方がない」という実態を作出するのに一番有効な手段は、これまでに解説してきた法的手続きの実行となります。
 

 すなわち、訴訟提起(少額訴訟や支払い督促手続きを含む)を行い、判決を取得したうえで、強制執行手続きを行ったという一連の手続き遂行状況が分かる裁判資料を確保することが、有効な手段となります。ただ、これら一連の手続きを行うためには、それなりの専門的知識が必要となるため時間や労力を必要とします。
 一方で、これらの時間や労力を減らすために弁護士等の専門家に依頼するとなると、どうしても費用が発生してしまいますので、回収困難な債権管理のために費用をかけることは、費用対効果の観点から必ずしも適切とは言えない場合もあります。
 このような費用対効果に難がある場合、税理士さんによっては、回収努力を行う経済的メリットが無いことを証する資料として、弁護士費用の見積書を提出することで損金処理を行う場合もあるようです。当事務所と顧問契約を締結して頂いている事業者様におかれましては、こういった形でも当事務所をご利用いただくことも可能ですので、是非お声かけください。

 

次に、比較的よく耳にする方法ですが、配達証明付き内容証明郵便の送付を試みるという方法です。

 

 内容証明郵便を用いて債権回収を行うということについては既に解説済みですが、ここでの使い方は、配達証明付き内容証明郵便の送付を試みたが、「転居先不明」で配送できなかったという状態を作出することを目的としています。つまり、債権回収したくても、相手方がどこにいるのか不明であり、連絡が取れないので、如何ともしがたいとして「債権回収をあきらめても仕方がない」という実態を作出するということです。もっとも、当職が聞く限り、この手法でOKという税理士さんと、ダメという税理士さんがいらっしゃるようです。したがって、顧問税理士さんがどのような見解をお持ちなのか確認を行ってからの手法になるかと思います。
 
あと、「債権回収をあきらめても仕方がない」という実態作出のために、債権放棄を行うこと(但し、贈与的要素が無いようにする)、貸倒損失の計上(但し、利益操作的な要素が無いようにする)といったものが考えられます。また、強硬な債権回収による倒産招来など社会的非難を受けることが想定されること、といった事情も考慮要素になるようです。ただ、これらの事項については、ケースバイケースの判断になると想像されますので、税理士と弁護士との連携が必須になると思われますので、企業経営者のみで即断することは避けた方がよいかと思います。
 

 

 

 

※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。