売上金を回収するための回収方法⑧(債権執行その1)

売上金を回収するための回収方法⑧(債権執行その1)

※前回より法的手続きによる「強制執行」の解説を行い、そのうちの1つである動産執行について触れました。今回は、債権執行について解説します。なお、債権執行は実務上一番重要ですので、何度かに分けて解説します。


 

4.法的回収方法と強制執行

(4)債権執行

 債権とは、法律上の定義は相手方に請求できる権利の総称を意味します。
 したがって、名誉棄損に対する謝罪広告請求やネット掲示板への削除請求なども債権になりますが、これらは金銭回収には関係のしない債権であるため、ここでは省くこととします。

 

 さて、金銭回収に関係する債権の代表例として考えられるのは、銀行などの金融機関に対する預金払戻し債権、企業経営で生じた取引先への売掛金、他人への貸付金といったところではないかと思われます。債権執行は、このような債務者(金銭支払い義務を負う者)が銀行や取引先、他人(こういった債務者に対して支払い義務を負っているものを第三債務者といいます)に対して有する債権を差押え、第三債務者より直接取り立てる(支払ってもらう)手続きとなります。
 つまり、債務者が支払いを渋るのであれば、債務者と何らかの契約関係のある第三債務者に代わりに支払ってもらうという制度が債権執行となるわけです。
 私の経験上のことにはなってしまいますが、従前ご説明した不動産執行や動産執行よりも、債権執行の方が断然利用頻度は高い手続きとなります。

 

 ただ、債権執行の最大の難点は以前記載した「財産の特定」ができるのかという点です。
 例えば、債務者が銀行預金を持っていることは間違いないという事例を想定してください。この場合、債権執行として預金債権を差押え、その銀行より直接支払ってもらえれば確実な回収を見込むことができます。

 したがって、是が非でも預金債権の差押えを行いたいのですが、銀行預金の差押えを裁判所に申し立てる場合、銀行名と支店名を特定する必要があります(口座番号や種別は不要です)。過去の取引において、債務者が使用している銀行名と支店名が分かるのであれば、そこを狙い撃ちにすればよいかと思います。
 しかし、どこの銀行を使用しているのか分からない、あるいは銀行名は分かっても支店名までは分からない…ということが往々にしてあります。このような場合は債権執行を申し立てたくても、裁判所に受け付けてもらえず手詰まりとなってしまいます。この結果、仕方がありませんので、取引先の周辺の金融機関を片っ端から探し出して(グーグルやヤフーの地図をみればおよそ見当がつきます)、それらの金融機関に対して当てずっぽうで差押えを行うほかありません。当てずっぽうが当たれば、その金融機関より直接支払ってもらえますが、当たらなかった場合は費用の無駄となってしまいます(第三債務者1名=一支店当たり1万円程度の申立費用がかかると考えてください)。
 

 したがって、預金債権の差押えには、「財産の特定」というハードルがあることに留意していただき、日ごろから、取引先の取引銀行はどこなのか意識的に探るくらいの対応が必要かと思います。
 
 

 

 

  ※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。