売上金を回収するための回収方法②(商品引揚げ)

売上金を回収するための回収方法②(商品引揚げ)

 

※前回は、売上金を回収するための回収方法の「法的手続きを用いずに回収を行う方法」として内容証明郵便について解説を行いました。今回は「法的手続きを用いずに回収を行う方法」の続きとして、商品引き揚げについて解説します。

 

 

 

商品引き揚げ

 

相手に対して「モノ」を売り渡している場合であれば、自社商品の引き揚げを検討することも多いかと思います。もちろん、その場合もありますが、自社がサービス業であっても、相手方が他社商品を取り扱っているのであれば、当該他社商品を引き揚げることで回収を図るという方法も考えられます。

 

さて、商品引き揚げを行うに際し、相手方の協力はもちろん必要ですが、引き揚げを正当化する法的根拠はどうするのかという視点を持つことが重要です。相手方への協力を促すための説得材料という意味もありますが、後で文句を言われない(後日の返還要求トラブルに巻き込まれない)ことも考えておかなければならないからです。

 

 

 

 

①自社製品の場合

まず、相手方と売買取引基本契約書を締結しているのであれば、所有権の移転時期はいつと定められているのかチェックして下さい。もし、「代金決済時に所有権が移転する」となっているのであれば、これは所有権留保と呼ばれる状態ですので、所有権に基づき商品を引き揚げることが可能となります。

 

 では、所有権留保が付いていない、又は所有権は相手方にあるという場合は対処法が無いのでしょうか。

結論から申し上げると、「あり」ます。ただ、若干テクニカルになります。
例えば、代金支払いが滞っていることを理由に売買契約を解除するという法的構成を取ることで、解除に基づく原状回復請求(イメージ的には、解除→再び当方に所有権帰属→所有権に基づく返還請求です)により、未決済となっている商品の引き揚げを行うことが可能です。

また、相手方との協議がまとまるのであれば、買戻しの合意商品の再売買代金と売掛金を相殺する。なお、解除という法的構成の場合、決済済みの商品を引き揚げることができませんので、買戻しという別の法的構成を検討する必要が生じます)ということも考えられるかもしれません。

さらに、厳密には裁判所の手続きを介する必要がありますが、動産売買先取特権という担保権(=商品を販売した場合、実は先取特権という担保権が法律上当然に取得することになっています)に基づき、商品の返還を受けることも可能です(ただし、法的にはその後競売申立を行う必要が生じますので、裁判所の関与が出てきます)。

上記のような法的根拠を上手く組み合わせながら、回収を図ることとなります。

 

 

 

 

②他社商品の場合

 

これについては相手方の協力が絶対不可欠となってしますのですが、代物弁済契約による回収を検討することが一案となります。

よくある事例としては、相手方が在庫商品を抱えており売り先が見つかっていない、一方当方は当該在庫商品の売り先を知っている(あるいは若干たたき売りとはなってしまうが現金化できる業者を知っている)という場合、両社の利害が一致しますので代物弁済契約を締結するというパターンがあります。
ただ、注意をしておかなければならいのは、このパターンの回収の場合、売掛金を全額回収することは非常に困難であるという実情があると言うことです。どういうことかと言いますと、売れ残った在庫商品ですので、通常は「市場価値>相手方の仕入額」という関係になります。相手方は当然仕入額を回収したいと考えるでしょうから、代物弁済による売買代金は仕入額に近い金額になってきますので、その分の売掛金と相殺勘定することになります。その結果、代物弁済により取得した商品を現金化したときには、「売掛金の額面>商品売却による現金」となってしまうことが非常に多いのです。
上記の通り、実質的には売掛金の額面を下回る回収しかできないことにはなりますが、モノは考えようで、「全くのゼロ回収よりはマシ」という考え方も成り立ち得ます。よく当職は「明日の100万より、今日の10万」なんていう例え話をするのですが、相手方の状況に応じて、少しでもキャッシュを得るという方針を採るのであれば、十分検討に値するのではないかと思います。

 

 

 

 

③留意点

 

上記の通り、商品引き揚げによる回収方法を解説しましたが、これについては大きな制限が生じる場合があります。典型的には、相手方が法的倒産手続き(破産、民事再生、会社更生など)に入った場合ですが、詐害行為取消権という厄介な制度も存在します。
これらの制度のことまで意識しながら回収を行うことは正直難しいところもありますが、可能な限り、弁護士などの専門家によりリスクの少ない手段を取ることが肝要です。

 

 

 

 

 

 

 

※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。