売上金回収を行うための債権管理チェック事項③(書面徴収の重要性、書面に記載するべき内容など

売上金回収を行うための債権管理チェック事項③

 書面を徴収する意義として、前々回に「消滅時効の中断」という債権管理上の重要な効果を生むことを解ま

 今回は付加して、せっかく書面を徴収するのであれば、どこまでの内容を記載しておくべきか、さらに付加して公正証書を作成する際の注意点について解説していきます。

 

4 書面の徴収

(1)債務者が協力的であり、書面にサインすることを厭わないというのであれば、やはり債権者にとって都合の良い書面内容にしたいところです。
 弁護士の視点としては、最低限、次のような内容は記載しておくことをお勧めします。


 

・債務の発生原因と金額(元金及び利息)を承認する文言
 
・(売買であれば)商品が引渡し済みでありかつ瑕疵・不具合が無かったことを確認する文言
 
・具体的な支払い方法(支払期限など)を確認する文言
 
・一定条件を充足した場合(2回以上の支払い遅滞など)、期限の利益が喪失することを認める文言
 
・遅延損害金が発生することを承認する文言
 
・担保として連帯保証人をつける文言
 
 
 もっとも、前々回でも記述しましたが、全ての事項を記載した書面を徴収するのは、意外と大変なことです。
 債務者の抵抗が大きいようであれば、最低でも「債務の発生原因と金額(元金及び利息)を承認する文言」だけでも記載した書面を徴収することを目指すべきかと思います。
 
 
(2)次に公正証書を作成する場合ですが、色々と気を付けなければならない事項があります。
 まず、せっかく作成する以上、絶対に忘れてならないのは「強制執行受諾文言」と呼ばれる条項を公正証書内に記載することです。
 公正証書の最大のメリットは、訴訟を経ることなくいきなり強制執行手続き(例:銀行預金の差押え、不動産競売など)を行うことができることにあるといっても過言ではありません。
 
 しかしながら、この「強制執行受諾文言」が記載されていなかった場合、この最大のメリットが失われてしまいます。これでは、何のために費用をかけて公正証書を作成したのか分からなくなってしまいます。
 従って、まずもって「強制執行受諾文言」は忘れないと言うことを覚えておいて頂ければと思います。
 
 次に手続き的なところですが、原則的に債務者本人(連帯保証人がいるのであれば連帯保証人本人)と一緒に公証役場を訪問しなければならないことです。つまり債権者と債務者の両方が公証役場に行かないことには作成しようがないことになります。
 では、債務者本人が忙しくて、あるいは遠方で公証役場を訪問することができない場合はどうするかですが、債務者に委任状を発行してもらうことで対処することが可能となっています。しかしながら、この「委任状」が非常に厳密なものであり、かなり神経を使って作成しないことには全く役に立たない委任状になってしまいかねません。
 
 端的に言うのであればポイントは3点となります。すなわち、


 

① 委任状には自署と実印が必要
 
② 委任状と共に印鑑証明書(3ヵ月以内)が必要
 
③ 委任状の内容は「公正証書作成の件」といった抽象的なものでは無く、一字一句の契約内容の文言を記載した委任状が必要

 

となります。なお、債務者が法人の場合は3ヵ月以内の商業登記簿謄本(又は資格証明書)が必要となります。
 色々と厄介ですが、上記のような書類準備に協力してくれるのであれば、当然、公正証書の作成を行った方がベターです。
 
 
(3)あと、書面を作成するに際して、若干テクニカルなことを解説しておきます。
 前々回に解説した通り、売掛金の消滅時効は2年間とされています。従って、書面を徴収しても2年経過すれば、再度消滅時効の危機にさらされることになります。
 そこで、もっと時効期間を延長できないかと考えるのですが、残念ながら単に当事者間で時効期間を10年とすると定めても、それは法的に無効ですので無意味です。
 
 もっとも、合法的に5年間に延長させる方法はあります。
 それは、準消費貸借という形式に変換してしまうことです。
 要は、書面を徴収する際に、売掛金を金銭の貸し借りに返還する旨合意することは民法588条で認められています。そして、この様な合意(これを準消費貸借といいます)が成立すれば、法律上は貸金債権として取り扱われますので、その結果、商取引の一般債権の消滅時効期間である5年間として取り扱われます
 
 本当に債権者有利で進めることができるのであれば、準消費貸借という形式も検討して良いかと思います。

 

 


 

※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。