売上金を回収するための支払決済方法のチェック事項③(手形、小切手、電子記録債権)

売上金を回収するための支払決済方法のチェック事項③

 最終回の今回は、「手形」、「小切手」、「電子記録債権」について簡単に解説したいと思います。
 
 

4.手形

 製造業などではまだまだ利用されているところもありますが、IT業界ではほとんど利用されていないようで、最近、利用頻度が少なくなってきているようです。
 そのため、手形については中途半端な知識しか有せず、後で現金化に困るという問題があるようです。
 
 まず、手形(ここでは約束手形を前提にします)を受領するに際しては、表面については最低限次の記載事項を確認し、当該事項全てが記載されている手形を決済用として受領するべきです。
 
「約束手形」であることの記載
「金額」と「支払い」の記載
(典型的には、具体的な金額を記入する欄の下に、「上記金額をあなたまたはあなたの指図人へこの約束手形と引替えにお支払いいたします」という文言が記載されています)
支払期日の記載
支払人(銀行名)と当座勘定のある銀行店舗の所在区域の記載
受取人の記載
振出日、振出地の記載
振出人の署名または記名押印の記載
 
 なお、実務上、「白地手形」と呼ばれる後で補充することを前提にした手形が発行されることがあります(むしろ現実の取引ではそちらの方が多いかもしれません)。
 振出人欄や受取人欄の白地部分を手形の所持人が補充することは、実務的には良くあることなので補充することは特に問題は無いかと思われます。しかし、金額欄や支払期日欄については、振出人の資金繰りや支払能力と密接に関係し紛争が生じやすいところですので、必ず記載されたものにするべきです。
 
 また、手形の裏面に次のような文言が入っていた場合は、債権回収に支障を来すことが多いことから、決済用として受領することは回避した方がよいと考えられます。
「取立委任、回収、代理」との記載がある場合(手形上の権利を取得できないため)
「担保のため」、「質入れ」との記載がある場合(第三者に裏書譲渡できないため)
「裏書禁止」との記載がある場合(手形の担保価値が減少しているため)
「支払いを担保しない」との記載がある場合(手形の担保価値が減少しているため)
 
 約束手形については、不渡りによるペナルティ(銀行取引停止処分)が大きいことから、債務者に対する心理的圧力が強く、回収に役立つことが多いのも事実ですが、一方で、かなり厳格な取り決め事項があり、一つでミスしてしまうと回収が不当となってしまうリスクがあります
 約束手形の利用頻度が落ちてきている現状からすると、あえて積極的に決済手段として取り扱うことは避けていった方が良いのかもしれません。

 

5.小切手

 小切手についても使用頻度が減少してきており、回収する側にとっても、正直、「手形と小切手の違いがよく分からない」という声も聞きます。その意味では、十分な知識が無いのであれば、決済手段として用いることは避けた方が良いという選択肢もあり得ますが、約束手形と同じく、確認するべき記載事項をまとめておきます。
 
「小切手」であることの記載
「金額」と「支払い」の記載
(典型的には、具体的な金額を記入する欄の下に、「上記金額をこの小切手と引替えに持参人にお支払いください」という文言が記載されています)
支払人の記載(銀行支店)
支払地の記載(銀行支店名の住所)
振出日、振出地の記載
振出人の署名または記名押印の記載
振出日の記載
 
 上記記載事項と共に、とにかく意識しなければならないことは、「振出日より10日以内に呈示」する必要があるということです。支払期日が小切手上には明記されていないことから、この点は注意が必要です。
 なお、小切手による決済を行うのであれば、回収不能リスクが極めて低い自己宛小切手(振出人欄と支払人欄が同一の銀行で記載されている小切手のこと)を利用するべきかと思います。

 

6.電子記録債権

 手形の解説に関連して、電子記録債権について簡単に触れておこうと思います。
 電子記録債権は、読んで字の如く、債権の内容がコンピュータに記録される債権のことをいいます。電子記録債権が制度として認められた目的ですが、典型的には約束手形の代替手段、すなわち手形の作成や裏書譲渡を電子的記録によって行うことを目的としていると言われています。
 ただ、正直なところ、あまり普及しているとは言い難く、電子記録債権が制度として普及するか否かは、融資を行う銀行が積極的に用いるか否かにかかっているのが実情のようです。
 その意味で、具体的な制度を理解することの手間暇の問題や、まだまだ見えないリスクが多すぎることから、単なる決済手段として電子記録債権を使用することは、現時点では控えた方が良いかもしれません

 

 

 


※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。