従業員・労働者が反社会的勢力(暴力団員等)と関係する場合、企業としてどの様に対処するべきか

従業員・労働者が反社会的勢力(暴力団員等)と関係する場合、企業としてどの様に対処するべきか

質問

 最近、某芸能人の引退や暴力団排除条例が施行された影響もあってか、「反社会的勢力」に関する取り組みが重視されています。
 
 ところで、企業外の反社会勢力との接触については色々と目に触れるのですが、企業内、特に従業員が反社会的勢力であるという場合については、あまり見かけません。
 そこで、従業員が暴力団員等の反社会的勢力と関係性を有する場合の企業としての対処について教えて下さい。
 
 

回答

 本稿作成時点(平成23年11月26日)で全てが整理し切れているわけではありませんが、大まかには、

  ・入社時での対応
  ・入社時に見抜けなかった(入社後に判明した)場合の対応
  ・入社後に反社会的勢力と関係を持ってしまった場合の対応


に分けて検討すれば、分かりやすいのではないかと思われます。
 

 

解説

第1 はじめに

 おそらくは、「従業員が暴力団員等の反社会的勢力に所属していた場合」の問題については、従来から想定されうる問題ではあったのではないかと思われますが、改めて考えてみると、色々と微妙な問題があるように思われます。
 場面を分けて検討してみたいと思います。
 
 

第2 各場面別での対応

1 入社時での対策
 「暴力団員などの反社会的勢力はお断り」という会社側の方針を明確にする意味で、内定通知書の内定取消事由及び労働条件通知書に労働契約解除事由(解雇事由)となる旨明記するのが、まずは分かりやすい対応かと思われます。
 
 なお、就業規則等の社内規程が存在する会社においては、「労働者にとって、就業規則より不利な労働条件であるから無効である」とされるリスク(労働契約法12条を参照)を回避するためにも、就業規則等の社内規程の変更を行ったほうが無難と考えられます。
 
 また、入社時に徴収することが多い誓約書の中に、反社会的勢力ではないことの誓約文言と反社会的勢力であることが判明した場合には如何なる処分を受けても異議は無い旨の文言を加筆しておくのも一つの対応策ではないかと思われます。
(但し、実際にこの文言を根拠に懲戒解雇等の処分を行いうるかは別問題ですが…)

 
2 入社時に見抜けなったか(入社後に判明した)場合の対策
 当該従業員が暴力団員等の反社会的勢力であったにもかかわらず、その点を秘匿して入社してきた場合、いわゆる「経歴詐称」の問題として処理することになると思われます。
 
 上記1で記述した通り、会社の方針として「反社会的勢力お断り」というのであれば、重要な経歴詐称として解雇その他懲戒処分の有効性を高めるものと思われます。
 
 一方、上記1のような対応を行っていなかった場合、単に暴力団員等の反社会的勢力であるという属性だけで解雇等の処分を行いうるかは非常に微妙な問題になると言わざるを得ません。
 
 特に、当該従業員の業務遂行状況に特段の問題がなかった場合には、これまでの経歴詐称の裁判例から当職なりに予想する限り、解雇については無効と判断される可能性が高いように思われます。

 
3 入社時は暴力団員等ではなかったが、入社後に暴力団員等となった場合の対策
 入社後に暴力団員等の反社会的勢力に加入するか否かは、業務外のことと言わざるを得ませんので、いわゆる「私生活上の非違行為」の問題として対処することになると考えられます。
 
 ただ、私生活上の非違行為として懲戒処分が可能か否かについては、非常に曖昧であり予見可能性が乏しいのが実情です。
 
 抽象的には「会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合」には懲戒解雇等を含めた懲戒処分も有効と判断されることになります。
 
 しかしながら、例えば、昨今の飲酒運転に対する社会的非難の度合いが高まる中、業務外での飲酒運転による事故発生に対する懲戒解雇処分が有効とされたり無効とされたり、裁判所の判断は揺れ動いていることからもお分かりの通り、必ずしも社会の常識と法律の考え方は連動していません。
 
 犯罪という違法性の強いものと暴力団員等の反社会的勢力に関係しているという属性の問題を並べて考えるわけにはいかないとはいえ、相当慎重な判断をせざるを得ないのが現実ではないかという気がしています。
 
 

第3 暴力団員等の反社会的勢力該当性の調査

1 調査方法について
 結論から申し上げますと、一私人に過ぎない会社が完全な調査を行うことは不可能と言わざるを得ません。
もっとも、取引先が反社会的勢力か否かの調査方法の例から考えると、現状で考え得る手段としては次のようなものになるかと思われます。

・従前の勤務先の商業登記簿謄本の取得と当該登記簿における現任取締役・現任監査役の属性及び旧役員及び大株主の属性
・兼任企業の把握(フロント企業の可能性)
・情報検索(新聞等のメディア情報、警察などの行政当局からの提供情報、リサーチ会社が保有する情報など)

 

 

2 調査する際に留意したい法令
 従業員に関する情報収集で特に気を付けておきたい法令としては、職業安定法個人情報保護法になります。
 ただ、現時点は当職自身も考え方がまとまっていないため、留意点の列挙に止めておきます。

・職業安定法5条の4では、「その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集」と定められているところ、「その業務の目的の達成」と反社会的勢力という問題がどの様に関連づけられるのか。
・個人情報保護法17条では、「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない」と定められているところ、暴力団排除条例が制定された状況下において、反社会的勢力か否かの調査と不正な手段とがどの様に関連づけられるのか。

 
 

第4 結語

 以上の他にも、「反社会的勢力」とはどこまで含むのか、具体的には過去暴力団員等であった者についても同様の考え方が妥当するのかなど、考えれば考えるほど、色々と難しい問題が出てくるかと思われます。

 

 今後の動向に注意しながら、閲覧されている皆様におかれましても、検討を進めていただければと思います。

※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。