整理解雇(人員削減)を行うには、どの様にすればよいか?

整理解雇(人員削減)を行うには、どの様にすればよいか?

質問

 不況のあおりを受け、売上低下も顕著な状況となり、近い将来に会社経営が難しくなる状況まで追い込まれました。
 やむを得ず人員削減(整理解雇)を行いたいと考えていますが、どの様な点に注意すればよいのでしょうか。
 
 

回答

 「人員削減のための解雇(整理解雇)」については、バブル崩壊後あるいは2008年のリーマンブラザーズ倒産後においてよく耳にする言葉なのですが、実は労働基準法及び労働契約法には規定がありません
 
 このため、どの様な点に注意すべきか検討するためには、数ある裁判例を検討するしかないということになります。
 ただ、これまでの裁判例を検討していくと、整理解雇が有効となるための検討事項として、
 
 ① 人員陣削減の必要性があること
 ② 解雇回避努力が尽くされていること
 ③ 解雇される者の選定が合理的であること(人選の合理性)
 ④ 事前の説明・協議を尽くしていること
 
を総合考慮して判断しているようです。
 
 従って、この4つの要件(要素)を踏まえて検討を行えばよいと言うのが回答になるのですが、具体的にはどのような点に気をつければよいのでしょうか?
 以下、検討したいと思います。

 
① 人員削減の必要性が存在すること
 そもそも人員削減の必要性がないのに、何の問題もない従業員を解雇するわけにはいきません
 従って、人員削減の必要性という要件は当然の前提になるのですが、では、必要性の程度はどの様な場合を言うのでしょうか?
 
 実は、この人員削減の必要性の程度については、企業が倒産必至の状態であることまで必要という見解もあれば、企業の合理的運営上の必要性があれば足りるとする見解もあり、定まった見解が存在していない状況です。
 
 ただ、一般論としてという言い方になりますが、倒産必至までとは言えなくても、高度の経営危機が生じていることまで説明できた方が、対外的な説明はしやすいですし、有効性は高くなると思われます。
 
 そこで、過去3期分程度の決算書、今期の月次決算書などの資料を準備しつつ数字の裏付けを取ること、同時に景気動向、企業の将来予測などを見ながら該当性の検討を行うことになります。

 
② 解雇回避努力が尽くされていること
 日本の法制度上、労働者の解雇は簡単には認められません。
 従って、整理解雇を認めるにしても、解雇の前にまずは代替的な雇用調整手段を取ったかという点が有効性を判断する上での検討材料となります。
 
 この検討材料としては、経費削減(役員報酬のカット等)、新規募集・採用の停止、労働時間の短縮、賃金カット、配転・出向、一時帰休の実施の有無などがあげられますが、比較的重要視されているのは、「希望退職の募集を行ったか」という点です。
 
 これはどういうことかと言いますと、整理解雇の場合、どうしても従業員の意向に反して雇用契約を打ち切ることになってしまうこと、解雇後の補償が必ずしも十分ではないという問題が生じてしまいます。
 
 一方、希望退職の場合、従業員が自ら退職を申し出る以上、従業員の意向もある程度は尊重されますし、希望退職の募集を行うに際しては、会社側も退職後の補償について一定程度行うことが通常ですので(退職金の割り増しなどが代表例です)、まだ従業員のダメージも少ないというデメリットの回避を図ることができます。
 
 この様なことから、「希望退職の募集」を行うと共に、経費削減等の有無・程度を検討の上、該当性の検討を行った方が無難ということになります。

 
③ 解雇される者の選定が合理的であること(人選の合理性)
 「あいつは生意気だから、クビにしよう」といった恣意的な判断は許されません。
 解雇という従業員にとっては重大な効果をもたらす行為を行う以上、何故、その人を対象としたのか合理的に説明できる状態にする必要があります。
 
 そこで、人選基準については、事前に作成することは当然の前提となります(できれば書面化して、取締役会等で決済を取った方が良いでしょう)。
 
 また、具体的な基準内容については、勤務成績・能力等の評価を基準にする場合、勤続年数・売上実績などの会社貢献度を基準とする場合、年齢を基準とする場合、再就職可能性や家族状況などの労働者の属性(生活状況)を基準とする場合、雇用形態(正社員かパートか)を基準とする場合、など色々な組み合わせがあると思います。
 
 この様な基準を事前に設定し、公平に各従業員の該当性を検討の上、対象者を絞り込んでいくということで、該当性の判断を行う必要が生じます。
 
 なお、①とも関連しますが、基準への該当性を検討した結果、該当者が複数生じた場合、全員を整理解雇するのかは、さらに検討を要します。
(人員削減の必要性の検討に際して、削減する人員数を算出するはずです。このため、当該人員数を大きく上回る人員を解雇するとなると、かえって該当者全員を解雇する必要性はないということで整理解雇が結果的に全部無効と判断される可能性が出るからです)。

 
④ 事前の説明・協議を尽くしていること
 上記①~③については、会社(使用者)側で検討することになりますが、対象となる従業員側はほとんど事情を知らないため、ある日突然「整理解雇するので辞めてくれ」と言われても、大変困ることとなります。
 
 そこで、整理解雇を実施するのであれば、事前に労働者、労働組合に対して、なぜ整理解雇が必要なのか、時期・規模・方法といった内容などを説明し協議することで、納得を得られるよう努力する必要が生じます。
 これらの事前の説明・協議の内容を踏まえて、該当性の検討を行うことになります。

 
 以上の通りですが、整理解雇を実施するに際しては、解雇無効のリスクがつきまとうことになりますので、安易な判断は行わず、専門家と相談しながら進めるのがベターかと思います。

(お金がないのに専門家を雇うとなると矛盾に見えるかもしれません。が、解雇無効とされた場合の金銭出費と専門家への依頼費用とがどちらが安く付くのか、最終的には経営者が天秤にかけて判断するしかないと思います)

 

※上記記載事項はあくまでも当職の個人的見解に過ぎず、内容の保証までは致しかねますのでご注意下さい。