【民法改正】第14回 保証①~情報提供義務など

【民法改正】第14回 保証①~情報提供義務など

 

弁護士:今回は、民法改正の目玉とも言うべき「保証」について解説を行いたいと思います。
 
社長:個人が保証人になることについて色々な制限が加わったという話は聞いたことがあるなぁ。これ自体はありがたい話ではあるのだけど、一方で債権者の立場になった場合、個人保証を取れないということになると、これまた弊害が生じることになるので悩ましいなぁ。
 
弁護士:たしかに個人保証を取る場合は、今までのように書面にサインをもらえばよいという訳にはいかないので、債権管理・回収という側面からはかなり意識する必要があるかと思います。
 
社長:まぁ、ポイントを教えてよ。
 
弁護士:保証に関しては色々な改正点があるので、今回は保証に関する通則的な事項と、新たに制定された情報提供義務に関する事項を中心に解説します。そして次回は、個人保証が有効に成立するための要件を中心に解説しようかと思います。
 
社長:じゃ早速はじめてよ。
 
弁護士:まず通則的な事項です。前回の連帯債務の解説とも重複するのですが、連帯保証人に対して生じた事由が主債務者に影響を及ぼすか否かについて、混同のみ絶対効(主債務者に影響が及ぶ)とされています。連帯保証人に対して履行の請求を行った場合、現行民法では主債務者にも請求を行ったことと同じ効力が生じたのですが、改正民法では効力が生じないことになります。この点は債権管理(時効中断など)の上で重要なポイントになりますので、注意が必要です。
 
社長:なるほど。
 
弁護士:では、改正民法で新設される情報提供義務について解説を行います。誰が、どういった地位・属性にある保証人に対して、どういった説明を行うのか、正直ややこしいところがあります。色々なまとめ方があるかと思いますが、①保証人になることの依頼を受けて段階、②保証人になった以降で平常時の段階、③保証人になった以降で主債務者に不安が生じた段階、に分けて解説を行いたいと思います。
 
社長:了解。
 
弁護士:まず、①保証人になることの依頼を受けて段階での情報提供義務です。まとめると以下の通りとなります。
 【どの段階】保証を委託したとき
 【誰が説明】主債務者が
 【何の場合】主たる債務が「事業性」のある場合
 【誰に対し】「委託を受けた」「個人」の保証人に対し
 【何を説明】(1)財産及び収支の状況、(2)主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況、(3)主たる債務の担保として他に提供し又は提供しようとするものがあるときはその旨及びその内容、を説明
 
社長:「主たる債務が事業性のある場合」と「委託のある個人保証人」となっているかど、前者については貸金債務に限定されないということなのかな。また、後者については法人の場合、情報提供義務はないということになるのかな。
 
弁護士:両方ともご指摘の通りです。「主たる債務の事業性」については、例えば事業用で建物賃貸借契約を締結する場合において、賃借人が法人(事業者)、個人が連帯保証人となる場合、情報提供義務が発生するということになります。
 
社長:なるほどね。ここは注意が必要だな。ところで、情報提供義務に違反した場合はどうなるのかな。
 
弁護士:ちょっとややこしいのですが、「債権者」が情報提供義務違反について悪意(知っていた)又は有過失(注意すればわかった)の場合、保証人は保証契約を取り消すことができることになっています。
 
社長:へぇ~、こりゃ大きな変更点だね。じゃ、次の「②保証人になった以降で平常時の段階」はどうなるのかな。
 
弁護士:まとめると以下の通りとなります。
 【どの段階】保証人から請求があったとき
 【誰が説明】債権者が
 【何の場合】主たる債務がある場合
【誰に対し】「委託を受けた」保証人に対し
【何を説明】(1)債務の不履行の有無、(2)債務の残額、(3)債務のうち履行期限が到来しているものの額、を説明
 
社長:えっと…。まず、情報提供義務者が「債権者」に変更になったね。あと主たる債務について「事業性の要件が外れた」ね。さらに保証人の属性について「法人個人を問わない」に変更されているね。
 
弁護士:そうなんです。保証契約後の段階ですので、履行状況については属性に関係なく保証人であればだれでも関心がありますし、債権者より情報提供してもらうのがベターなので、こういった制度設計になっていると考えれば分かりやすいかもしれませんね。
 ちなみに、今回の情報提供義務違反に対しては、何ら制裁効果は定められていません。
 
社長:なるほどね。じゃ最後に「③保証人になった以降で主債務者に不安が生じた段階」について解説してよ。
 
弁護士:これまでと同じく、まとめると以下の通りとなります。
 【どの段階】主たる債務者が、主債務の期限の利益喪失を知ってから2ヵ月以内
 【誰が説明】債権者が
 【何の場合】主たる債務がある場合
 【誰に対し】「個人」の保証人に対し
 【何を説明】主たる債務者が期限の利益を喪失したこと、を説明
 
社長:う~ん…。今度は保証人の属性について「個人」に限定された一方で、「委託を受けた」が無くなったなぁ。
 
弁護士:この辺りは混乱が生じそうなのですが、そういうもんだと割り切るしかないかもしれませんね…。
 
社長:ちなみに、この情報提供義務に違反した場合はどうなるのか。
 
弁護士:主たる債務者が期限の利益を喪失したことについて、実際に説明(通知)を行うまでの間の生じた遅延損害金について、債権者は保証人に対して請求ができないという制裁効果が生じることになります。
 

(平成28年9月8日更新)

 

 

 

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。