【民法改正】第11回 法定利率、債務不履行と損害賠償

【民法改正】第11回 法定利率、債務不履行と損害賠償

 

弁護士:今回の内容ですが、どのようなタイトルにするのかも非常に悩ましかったのですが、やや理屈っぽい話であり、正直分かりづらいかもしれません…。
 
社長:おいおい、いきなりそんなこと言われてもなぁ。。。まぁ、とにかく始めてよ。
 
弁護士:はい、それでは早速ですが、結構ニュースにも取り上げられた「法定利率」から解説をスタートさせますね。
 
社長:あ~、民事上は5%だけど、商事上は6%というやつだね。でも、金融機関からの借入の場合、こんな高い利率で借りたことは無いぞ。もちろん、サラ金などは違うんだろうけど。
 
弁護士:そうですね、今の話から重要なポイントが2つありますので、分けますね。
 まず、5%、6%という点ですが現行法上はその通りです。今回の改正では商事法定利率は廃止され、民事法定利率に統一されます。そして、民事法定利率は3%からスタートし、その後は経済情勢(基本的には短期貸付利率をベースにする)に応じて変動することになります。
 次に、法定利率はあくまでも任意規定です。したがって、当事者間の合意で利率を変更することもできますし、これまで通りの固定利率にすることもできます。なお、利率の上限があることは、一時期話題になった過払いの問題でご存知かと思います(これは利息制限法や出資法の問題です)。
 
社長:なるほどね。法定利率が変動制になるのは聞いたことがあるわ。でも、その都度その都度見直しになるよ、なんだかややこしいような気もするなぁ。
 
弁護士:実はやや誤解が広がっているように感じているのですが、法定利率は変動制に移行となりますが、実際に個々人が権利行使する際に適用される利率は、原則としてその権利に対する利息発生時に適用されている利率となります。つまり、裏を返せば、権利行使によって利息が発生した後に法定利率が変動になったからといって、一緒に利率が変更になるということは原則あり得ないことになります。
 
社長:あ、そうなんだ。特に合意無く、法定利率に基づいた利息がいったん発生したら、その後法定利率が変動となっても、元のままということなんだね。
 
弁護士:その通りです。あとは法定利率の具体的な計算方法などがあるのですが、あまりに細かい話ですので、今回は省略します。
 
社長:了解。法定利率を負えて次に行こう。
 
弁護士:はい。では、これが理屈っぽい話であり分かりづらい内容だと思うのですが、債務不履行(契約違反)に基づく損害賠償の話題に移ります。
 
社長:契約違反があったら損害賠償請求できるというのは、ある意味当然のことなのでは。
 
弁護士:その感覚自体は間違ってはいません。ただ、例えば、売買契約で対象物の引渡しが、運送時の交通渋滞で少し遅れて納品された場合に損害賠償ができるのか、あるいはそもそも契約解除を行っていないのに損害賠償請求ができるのか等、理論上は色々検討するべき事項が実はあったりするのです。
 
社長:細かいことを考えているんだなぁ。
 
弁護士:今回の改正では、①契約違反について、債務者に帰責事由がある場合は損害賠償請求ができる、②(①にさらに追加して)履行不能である場合、履行拒絶の意思表示を明確にしている場合、契約の解除権が発生した場合(解除権を行使したか否かを問わない)は、本来の契約の履行ではなく填補賠償の請求を行なうことができる、という形に整理されました。
 
社長:なるほど。契約内容を実行(履行)するよう求めるのではなく、もう契約の実行(履行)はいいから損害賠償請求で解決してくれ!と主張する場合には、相手の帰責だけではなく、上記のような要件のいずれかを充足させる必要があるということなんだね。
 
弁護士:その通りです。あと、非常に細かい話になるのですが、損害賠償の範囲についても少しだけ修正が入りました。
 
社長:そうだ、その点で聞きたいなぁと思っていた事項があったんだ。よく契約書や約款なんかに、「現実に発生した通常かつ直接の損害の範囲に限定される」といった一部免責条項が入っていたりするんだけど、あれってどういう意味なの?
 
弁護士:裏返し的な解説になってしまうのですが、ある種の損害について、素人感覚では「普通は発生するなんて考えられないよね!」というものであっても、専門的知見を持っている当事者間では「まぁ、発生することもあり得ない訳ではない」といった場合があったとします。素人=一般人であれば予見できない損害については、損害賠償の範囲から外れるというのが法律上の大原則論です。しかし、契約当事者において予見できたという特別の事情があったのであれば、あえて外す必要もないので損害賠償の対象に含まれるという例外が法律にはもうけられています。
 この点については現行法上も損害するのですが、改正法でもやや文言を変更させたものの、その点は維持されています。
 
社長:そうすると、さっき言った一部免責条項というのは、たとえ当事者間で特別な事情を予見できたとしても、その特別事情による損害については損害賠償の対象から外すということになるわけか。まぁ、理屈としては分かるけど、具体的に何を想定すればよいのか分かりづらいなぁ。
 
弁護士:具体例は想定しづらいと思います。典型的には逸失利益と呼ばれる、契約が実行されていたのであれば得られたであろう利益相当額文の損害というものがあげられるのですが、ケースバイケースの判断になってしまうかと思います。
 
社長:なるほどね。そりゃ、こんなこと解説するのは及び腰になるわけだわ(笑)。
 

(平成28年6月7日更新)

 

 

 

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。