【民法改正】第10回 消滅時効

【民法改正】第10回 消滅時効

 

 
社長:今回の解説でちょうど10回目なんだけど、今回は何か特別ネタでもあるのかな? 
 
弁護士:いや、そういったことは特に…。ただ、民法改正で比較的話題になっている「消滅時効」について今回は取り上げたいと思います。
 
社長:一定の期間放置しちゃうと、支払ってもらえないという制度のことだな。
 
弁護士:概要はその通りです。さて、現行民法の消滅時効制度は、10年、5年、3年、2年、1年と様々な時効期間が設定されており、正直弁護士でもよく分からない制度となっていました。
 
社長:ふ~ん、、、たしかに5種類もあると何が何だか分からなくなるなぁ。
 
弁護士:そこで、改正民法では原則として、「権利行使することができることを知った時から5年」と「権利行使することができる時から10年」のうち、先に時効期間が満了したものを優先するという形に修正されました。
 
社長:普通は、「権利行使することができることを知った時」と「権利行使することができる時」は一致するから、原則5年で消滅時効が成立すると考えておけば、ほぼ対応できると思っていいのかな。
 
弁護士:その通りです。基本は5年と考えておけば、まず間違いありません。
 
社長:で、例外はどうなっているのかな。
 
弁護士:現行民法と比較すると、非常にシンプルになっています。
まず、不法行為に基づく損害賠償請求の場合は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間、不法行為の時から20年間で時効が完成することになります。なお、時効期間だけでいえば現行民法と同じなのですが、20年間については除斥期間と解釈されていた法的性質が消滅時効に改められました。
次に、不法行為、債務不履行(契約違反)を問わず、生命・身体の侵害による損害賠償請求の場合は、被害者が損害及び加害者を知った時から5年間、不法行為の時から20年間に改められました。
 まとめると、次のような内容となります。
原則 不法行為 生命・身体の特則
主観(知った時) 5年 3年 5年
客観(行為の時) 10年 20年 20年
 
社長:大雑把には、契約違反の場合は5年、契約関係が無い不法行為の場合は3年、但し、生命身体損害の場合は5年に延長と考えておけば、とりあえずは対処可能だね。
 
弁護士:通常はそのような認識で大丈夫かと思います。あと、今回の民法改正で影響が大きいと言われているのが、現行民法でいう「時効の中断」、改正民法でいう「時効の完成猶予」になります。
 
社長:どういうこと?
 
弁護士:まず「時効の中断」「時効の完成猶予」ですが、時効期間が満了する前に一定の事由が生じた場合にはリセットされる、とイメージして頂ければと思います。
 
社長:あ~、よく飲食店でのツケについて、「今度払うから」と客が言ったら、その時点で債務承認になり、新たに時効期間が経過しないことにはチャラにできないと言われているものだね。
 
弁護士:一例としてはその通りです。今回の民法改正では、次のように整理されました。
 
【時効の完成猶予(時効の中断)】
・裁判上の請求、支払督促、調停申立、倒産手続参加⇒手続き中は時効完成が猶予される。手続きが途中終了した場合、終了後6カ月間は時効完成が猶予される。
・強制執行等⇒強制執行等の手続終了時より、新たに時効が進行する。
なお、取下げ等により手続きが途中で終了した場合は6カ月間の時効の完成猶予。
・仮差押え、仮処分⇒6カ月間の時効の完成猶予(※新たな時効進行とならないことに注意)
・催告⇒6カ月間の時効の完成猶予。
・協議による時効の完成猶予⇒1年を超えない範囲で書面合意することで、その期間中は時効完成が猶予される。また、書面合意中において、協議続行を拒絶する書面を通知した場合は、その通知の時から6カ月間は時効の完成が猶予される。
なお、再度の合意は可能であるが、本来の時効期間満了時より通算5年を超えての合意は不可。
 
【時効の更新】
・債務承認(現行民法と同じ)
・裁判上の請求支払督促、調停申立、倒産手続参加⇒手続きにより確定判決(確定判決と同じ効力を有するものを含む)を得た場合は、そのときから新たに10年間の時効が進行する。
 
社長:目玉は「協議による時効の完成猶予」なのかなぁ。
 
弁護士:そうですね。あと、細かい話をすれば、「仮差押え、仮処分」について取り扱いが変わったのですが、普通は仮差押え・仮処分の手続き後は本案訴訟(通常の民事訴訟手続きのこと)を提起するはずですので、あまり大きな問題ではないかもしれません。
 
社長:消滅時効については色々変わると聞いていたけど、債権管理と言う観点からすると、むしろ楽になったと言っても良いかもしれないね。
 

(平成28年5月10日更新)

 

 


 

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。