【民法改正】第7回 委任、寄託、組合

【民法改正】第7回 委任、寄託、組合

 

社長:前回までに売買、賃貸借、請負と続いていたけど、他の契約類型については、なにか改正が検討されているのかな。
 
弁護士:そうですね、細かいところまで突っ込むのであれば、他の契約類型についても改正点があるのですが、主立ったものをピックアップするような形で解説ができればと思います。
 
社長:じゃあ、早速はじめてよ。
 
弁護士:では、まず「委任」について検討します。よくシステム開発契約等で「委任」なのか「請負」なのかで報酬請求について相違が生じると言われてきました。具体的には、業務が完成(終了)する前に中途解約となった場合、請負であれば完成していない以上、原則報酬請求不可、委任であれば業務遂行に応じた報酬請求可といった違いです。
 
社長:でも、前回解説してもらった通り、「請負」については、未完成であっても、場合によっては報酬請求可という判例解釈があったよね。
 
弁護士:その通りです。その意味では、「委任」と「請負」は非常に類似した関係になっていたのですが、委任の中途解約の場合について、いわゆる出来高報酬が請求できる場合の要件が整備されたのが、今回の改正のポイントとなります。
 
社長:具体的には?
 
弁護士:委任について、①事務処理を行う類型、②委任事務による成果を要求する類型に分類したうえで、①については履行割合(=事務処理の遂行状況)に応じた報酬が請求できること、②については委任事務処理の結果が可分であり、かつその可分の給付によって委任者が利益を受けている場合には報酬請求ができること、と整理されました。
 
社長:②については、ほとんど請負と同じ考え方だね。
 
弁護士:そうですね。ちなみに、現行法では、上記①の類型で「受任者に帰責性が無い場合」であれば、委任契約が終了した場合であっても報酬請求が可能とされていました。
 しかし、委任者が委任事務の遂行によって利益を得ている場合、受任者の帰責の有無にかかわらず報酬請求を認めるべきではないかという考え方が取られています。
 そこで、今回の改正では、「委任者の責めに帰することができない事由」または「委任が履行の中途で終了したとき」であれば、報酬請求可能と要件が改められました。
 
社長:ちょっと頭の整理が必要だけど、言わんとしていることは理解できたよ。
 
弁護士:あと、委任で目新しい改正と言えば、委任者は、受任者が被る損害について賠償さえすれば、委任契約を一方的に解除すること可能という考え方が推し進められたことでしょうか。
 
社長:契約からの離脱は認めるけど、ちゃんと相手へのフォローは行えということだね。
 
弁護士:委任はこれくらいにして、あと「寄託」についても触れておきます。
非常に学問的な話なのですが、現行民法では寄託契約は要物契約、つまり、目的物の授受が無い限り、寄託契約は成立しないという規定になっていました。しかし、例えば、倉庫やトランクルームに荷物を預ける場合など、目的物の授受と関係なく契約が結ばれていた実態があります。そこで、今回の民法改正では、「寄託」について、要物契約を要件としないという形に改められました。
 
社長:逆に、寄託契約が要物家契約だったというのが驚きだな。
 
弁護士:まぁ、世の中の実態と法律が乖離している典型例かもしれませんね。
あと、今回、寄託契約をどういった場合に解約(目的物の返還請求)できるのかという点について、かなり整備されました。大まかにまとめると次のような感じになります。

 

  目的物受取前 目的物受取後
  有償寄託 書面による
無償寄託
口約束の
無償寄託
返還時期の定め有り 返還時期の定め無し
寄託者
受託者 原則× 原則× 原則×

○=解除可 ×解除不可

 

社長:こうやって見ると、寄託者の都合によって解約可能ということがわかるね。
 
弁護士:そうですね。なお、当然のことながら、寄託者の一方的都合によって解約されることで受寄者に損害が生じた場合、その損害を寄託者が賠償するということになります。
 
社長:まぁ、ある意味当然の手当てだね。
 
弁護士:ちなみに、「寄託」については、消費寄託の位置づけや混合寄託なる概念が認められましたが、この辺りは細かいので、適用場面があったらその際に説明しますね。
 
社長:了解。
 
弁護士:最後に、「組合」について軽く触れておきます。
基本的には、従来までの解釈を改正法で明文化しています。念のため、組合と取引を行う場合の注意点として、
・組合の債権者は、各組合員の財産に対して権利行使ができないこと(組合の財産のみが対象)
・組合「員」の債権者は、組合の財産(持分権)に対して権利行使ができないこと
といったことがポイントです。
 
社長:要は、組合と組合員の財産は峻別されるということだね。
 
弁護士:その通りです。

 

 

 

 

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。