【民法改正】第3回 売買と危険移転、消費貸借

【民法改正】 第3回 売買と危険移転、消費賃借

 

社長:前回、売買契約における瑕疵担保責任について解説してもらったけど、売買については他にも改正が予定されているのかい。
 
弁護士:そうですね…。細かいことを申し上げれば、「買戻し」に関して改正が入る予定です。具体的には、現行法では買主が支払った代金と契約費用を返還すれば買い戻し可能と規定されていましたが、実務では返還金額が制限され過ぎているとしてほとんど利用されていませんでした。
 そこで、今回の改正では、原則は買主が支払った代金と契約費用の返還と定めつつ、例外として当事者間の合意があれば、買主が支払った代金と契約費用を超えてもよいと明記されることになりました。ただ、こういった取り決めは、現行法下でも「再売買の予約」という当事者間の合意(買戻し制度を意識的に排除する)で行われていましたので、まぁ、あまり大きな影響はないかもしれませんが…。
 
社長:法律上の原則例外が、実務では全く逆転してしまう典型例のような修正だなぁ。
 
弁護士:そうとも言えますね。あとは、改めて後日解説する予定の「危険負担」制度と関係するのですが(※改正法では、危険負担制度は廃止されることになっています)、売買契約における危険の移転時期について、改正されることになっています。
 
社長:危険負担って、よく契約書に、商品の滅失毀損について、納品や検収完了前は売主に、納品や検収完了後は買主が危険を負担すると書いてある条項のことかな。
 
弁護士:その通りです。実はあまり意識されていないのですが、法律上は、特定物売買の場合、納品や検収完了等に関係なく、契約を締結した段階で危険は買主に移転すると定められていました。このため、契約を締結したが商品引き渡し未了という場合において商品が滅失毀損した場合、買主が危険を負う、つまり買主は満額の代金支払い義務を負うというのが法律上の原則とされていました。
 
社長:滅失毀損しているのに代金全額の支払い義務があるの!?それは明らかに不合理だね。ところで、良く分からない言葉なんだけど「特定物」って何?
 
弁護士:特定物とは、具体的な取引に当たって当事者が物の個性に着目して取引を行った場合の対象物のことを意味します。あえて誤解を恐れずに申し上げるとすれば、不代替物とほぼ同義と考えてもらってよいかと思います。ただし、代替物であっても、「特にこれ!」と対象物を指名している場合には、特定物となり得ます。
 
社長:なるほど。要は、物理的に代替する物がなければ当然に特定物になるし、買主が対象物を唯一無二でこれ!と限定している場合も特定物になるという事だな。
 
弁護士:その通りです。話を戻しますと、特定物の場合、先述の通り、危険負担については民法の原則論は首をかしげたくなるような状態になっています。このため、不動産売買契約書など、ほぼすべての契約書では民法の原則論を修正し、納品時や検収完了時という特約を定めているのがむしろ通常となっていました。今回の改正では、この実務の常識を取り入れて、
 ①売買対象物が引き渡されたときに危険は移転する。
 ②買主が売買対象物の受領を拒絶している(受領遅滞)ときは、引渡し未了であっても、履行提供時に危険は移転する。
という形に改められることになりました。
 
社長:改正内容の方が常識に適うし、すっきりするね。
 
弁護士:そうですね。
 
社長:あ、そういえば話は変わるけど、実務の常識が反映されるということで、銀行からの借入についても改正があると聞いたんだが、どういうことかな。
 
弁護士:消費貸借契約に関する改正ですね。
 実は民法上は消費貸借契約は要物契約、つまりお金(=物)を引渡すことを契約の絶対条件にしていました。例えば、銀行借り入れの際、先に金銭消費貸借契約書を締結し、後日お金が貸付られる(引き渡される)というのが通常だと思うのですが、実は民法上の消費貸借として取り扱うことはできなかったのです。
 
社長:へぇ~そうだったんだ。
 
弁護士:もちろん、民法に定める消費貸借契約に該当しないだけで、上記のような銀行借り入れについては、諾成的消費貸借契約という形で法解釈として保護されてはいたのですが、あまりにも実務と乖離がありますよね。そこで、今回の改正では、お金(=物)の引渡し前であっても、書面で消費貸借契約を締結するのであれば真正面から民法上の保護を与えましょうということになりました。
 
社長:そうなんだ。こうやって聞いてみると、今回の改正は随分実務上の要請に合致させる形で改正されるんだね。
 
弁護士:そうですね。一部、非常に理屈っぽく、実務の要請とは異なる方向での改正部分もありますが、大まかには実務的な発想が取り入れられた改正になっていると思われます。ただ、今まで改正前の法律で慣れ親しんできた私のような弁護士にとっては、改正アレルギーがあるのも事実ですが…(苦笑)。
 
社長:まぁ、一緒に勉強しようや(笑)。

 

 

 

 

※上記記載事項は当職の個人的見解をまとめたものです。解釈の変更や裁判所の判断などにより適宜見解を変更する場合がありますのでご注意下さい。